【連載】宇田川 廣美の「ちょっと社会を見渡してみました」

健康づくりのための“快眠のススメ”

執筆 宇田川 廣美

フリーライター 

睡眠障害によって生じる経済的損失は3.5兆円

春眠暁を覚えず……などと言いますが、この季節はうつらうつらしがちです。でも、その眠気が不眠症や睡眠時無呼吸症候群などによるものであっては大変。重大な事故につながりかねません。

2003年2月26日、JR山陽新幹線が緊急停止する事故が起こりました。なんと新幹線は、乗客を乗せたまま時速270㎞で26㎞走行したそうです。原因は運転士の居眠り。後に睡眠時無呼吸症候群(SAS)による居眠りであることがわかりました。

その後も、SASが関係しているとされる事故のニュースは後を絶ちません。なかでも群馬県の関越自動車道で起きた高速ツアーバスの事故は皆さんの記憶に新しいでしょう。

中等度以上のSAS患者の場合、交通事故を起こす頻度はSASでない人の7倍高くなるという報告があります。また、国民の21.4%が不眠症を抱え、睡眠時無呼吸症候群をはじめとした睡眠障害によって生じる経済的損失は3.5兆円になるとの試算が出ています。

こうした背景から国は、事故の防止と体と心の環境づくりを目指し、「健康づくりのための睡眠指針」を出しています。先月、その2014年度版の指針(※1)が発表されました。

良眠のポイントは“光!?”

同指針では「睡眠12箇条」として、良眠のための心掛け(下表)を挙げています。

表 健康づくりのための睡眠指針2014~睡眠12箇条~

  1. 良い睡眠で、体も心も健康に
  2. 適度な運動、しっかり朝食、眠りと目覚めのメリハリを
  3. 良い睡眠は、生活習慣病の予防につながります
  4. 睡眠による休息感は、心の健康に重要です
  5. 年齢や季節に応じて、昼間の眠気で困らない程度の睡眠を
  6. 良い睡眠のためには、健康づくりも重要です
  7. 若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ
  8. 勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を
  9. 熟年世代は朝晩メリハリ、昼間に適度な運動でよい睡眠
  10. 眠くなってから寝床に入り、起きる時間は遅らせない
  11. いつもと違う睡眠には、要注意
  12. 眠れない、その苦しみを抱えずに、専門家に相談を

ここで私が注目したのが、「6.良い睡眠のためには、環境づくりも重要です」という部分です。解説に「強い光には目をさます作用があるため、就寝前の寝室の照明が明るすぎたり、特にこれが白っぽい色味であったりすると、睡眠の質が低下します」とあります。

また、明るすぎない照明と、壁面と床面のコントラストを低く抑えることで心身にやさしく、居心地のよい住環境を作る「アクティブケア」® という考えがあります(※2)。さらに、獨協医科大学の辰元宗人医師によると、「偏頭痛患者さんは視覚感受性が高く、白色LEDを不快に感じ、コントラストの強い模様も頭痛発作の誘因になる」ということです。

獨協医科大学病院では、新看護師寮の建築に際してこの考えに基づいたフロアを偏頭痛に悩む看護師用に設けたところ、他の看護師からも「温かい感じがして落ち着く」との感想が出ているそうです。

照明を買い替える時に電球色のものにしてみたり、やさしい色合いのタペストリーやカーテンを掛けてみたりして、床と壁のコントラストを調整してみてはどうでしょう。わずかな工夫で、さらにくつろげる空間になるかもしれません。


※1 健康づくりのための睡眠指針改定に関する検討会報告書
※2 日経ヘルス&プルミエ 「頭痛に効く」看護師寮をのぞいてみた

ページトップへ