【連載】アメリカの医療・看護レポート

第9回 アメリカの看護師『ショック!看護師の過剰時代突入』のはなし

執筆 佐藤まりこ

米国RN(Registered Nurse)

みなさんは、海外の看護師事情を覗いてみたいと思ったことはありませんか? 日本と海外の看護の違いに興味がある、海外で活躍する看護師をめざしたいという人は少なくないようです。そこで、自身の経験と調査をもとに、アメリカの医療や看護師に関するトピックをお伝えします!


長く続く日本の売り手市場、アメリカは……?

今回は、就職事情のおはなしです。

現在の日本は、長引く不況の影響で4大卒でも就職口が見つからず、学生の就職活動は非常に厳しい現状だといいます。そんな中、ほかの業界の求人数を圧倒し、就職率ほぼ100%なのが看護職です。

しかし、いつでもどこでも就職できる売り手市場は日本もアメリカも同じ、という訳ではないようです。

今回は、カリフォルニア州の看護師就職事情を紹介します。

引く手あまたは昔のはなし、新人看護師が直面する就職難

「履歴書を出せば、すぐに採用され永住権が付いてくる」。アメリカにもそんな時代がありました。それは、2008年以前のはなしで、とっくの昔に終わっています。

 

今、新人看護師、そしてブランクのある看護師が直面しているのが、4大卒でも就職できない深刻な就職難です。

特に、カリフォルニア州は好条件・厚待遇・高収入のため、アメリカ全土から看護師が集まります。看護師1名募集の枠に、600名以上の応募があるほど、看護師は飽和状態にあるのが現状です。

もちろん、高齢化社会に伴う看護師の需要拡大はアメリカも同じです。

2012年米国労働省労働統計局の調査によると、2010年から2020年までに看護師の需要は26%増大し、すべての職種の中でもっとも高い雇用成長を遂げると報告されました。それなのに依然として就職難が続く理由の一つには、景気不安から看護師が辞めず、ポジションが空かないことが挙げられます。

そして、もう一つの理由が即戦力志向です。

日本であれアメリカであれ、看護師には専門的な知識や経験、そしてスキルが要求されます。しかし、大きな違いは、アメリカでは、これらのスキルは経験を基盤にしたものではなく、看護師として当たり前に備わっている能力としてみなされる点かもしれません。つまり、 アメリカの看護職は、看護師免許があるだけで簡単に就職できる職種ではないのです。

こちらに、一般的なカリフォルニア州の看護師募集条件をまとめました。

  1. BSN(4年制大卒)
  2. 看護師免許
  3. BLS(1次救命処置)/ACLS(2次救命処置)/PALS(小児2次救命処置)の資格
  4. 過去5年以内に相当する科での2年以上の経験

新人看護師がどうやって就職前に経験が得られるの? と思いますよね。実は、新人看護師は、学校卒業後に無償のインターンシップやボランティアなどを活用し、ある程度経験を得るなど、さらなる高い知識や技術を学び、厳しい就職競争に備えています。

日本では、看護師不足が社会問題となっています。しかし、今後は医療費削減のためベッド数が削減されていく方向です。そして、アメリカのように看護師が専門業務のみを行い、一般業務を賃金の安いほかの業種に委託するようになれば、就職市場は逆転します。

「資格さえあれば就職できる時代」から、「看護師が余り、買い手市場の時代」はそう遠くない未来に来るかもしれません。

次回からは、アメリカの病院事情に注目し、トピックを紹介していきます。第10回は「看護の役割分担(1)」のはなしです。

ページトップへ