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【連載】ここを見直そう! 排痰ケア

吸引の苦痛を最小限にする6つのコツ

解説 一條幹史

理学療法士

Obaasan bed

患者さんへの侵襲を軽減するためには、「肺理学療法」による排痰法を優先し、ルーチンで吸引を行うことは避けるべきです。
しかし、必要となった場合には、適用をきちんとアセスメントし、正しい方法で患者さんの苦痛を軽減しましょう。


【吸引のまとめ記事】
* 吸引の看護|気管吸引の目的、手順・方法、コツ

適切な方法で、吸引による侵襲を最小限に留める

「効果的な吸引のコツを教えて」という看護師の声は少なくなく、切実な問題だと思われます。吸引の前提として、侵襲性の低い吸引をめざすことは言うまでもありません。

要するに、不要な吸引をしない、実施する場合は適切な方法で行うという意識をもつことが大切です。

吸引の主な適応基準には、

  1. 患者さん自身が咳嗽などによる排痰が不可能
  2. 努力性呼吸が強い
  3. 聴診や触診によって主気管支に痰の貯留が認められる
  4. ガス交換障害がある
  5. 人工呼吸器使用のときに気道内圧の上昇や換気量の低下、フローボリューム曲線でのこぎり歯状の波形がみられる

などがあります。

苦痛を最小限にするコツ

コツ1:適切な方法で、侵襲を最小限に留める

カテーテルの挿入は、気管支の分岐部手前までが痰を吸引できる範囲(図)です。カテーテルを無理に伸ばそうとすると、分岐部を傷つける危険があります。

カテーテルの挿入範囲説明図

(図)カテーテルの挿入範囲

もっと奥に溜まっている痰については、まず体位ドレナージなどにより中枢気管支に移動させてから吸引にとりかかるようにもっていくべきです。

コツ2:7秒以上の吸引はNG

気道内に吸引カテーテルを挿入する時間は7秒以内が目安です。

しばしば一度に痰を取りきろうと焦り、7秒以上の吸引になっているケースが見受けられますが、患者さんに苦痛を与える原因になります。

吸引を必要とする患者さんは低酸素状態にある場合も多いので、長時間の吸引は合併症を招くことにもなります。

コツ3:なかなか挿入できないときは首の確度を調整

「吸引カテーテルをうまく挿入できない」という声も多いようですが、よくある原因として、首が屈曲しているとカテーテルがうまく挿入できないことがあげられます。

そのような場合は、患者さんの首を少し伸展させ、顎を上げた位置を保つことによって挿入しやすくなるはずです。

コツ4:感染リスクが高い経鼻吸引はできるかぎりしない

施設によっては鼻腔吸引をしているケースもあるようです。しかし、経鼻からの吸引は、上気道に存在する常在菌を下気道まで押し込み、感染を誘発する原因になりやすいのです。

また、鼻腔内からカテーテルを挿入することで患者さんに不快感を感じさせたり、粘膜を傷つけたり出血したりする原因にもなります。

そのため、経鼻吸引は、
(1)鼻腔から喉頭、咽頭にかけて分泌物がある場合
(2)1により気道閉塞が起こり得る場合
だけに留めましょう。

コツ5:拒否する患者さんへは無理に吸引をしない

認知症の患者さんにカテーテルを挿入する際に抵抗されて、吸引ができないというケースは多くあります。

その場合は無理に吸引しようとせずに、むしろ患者さんが動けるのならば、その範囲で動いてもらうようにするとよいでしょう。

身体を動かすこと(モビライゼーション)によって、呼吸状態の改善につながるためです。体動を活かして運動することで、咳嗽力を引き出せる可能性もあります。

コツ6:それでもうまくいかない場合は……

1人で吸引するのが困難な場合、他職種との連携によって問題が解決することがあります。

例えば、理学療法士が徒手的咳嗽介助をし、上気道に痰が上がってきたら看護師が痰を吸引するという共同作業です。2人で対応すると、患者さんに過度な身体負担を与えずに効果的な吸引が期待できます。

また、吸引後に重要なのは、痰の性状のアセスメントです。

咽頭に貯留しやすい黄色(あるいは緑色)で粘りのある膿性痰のような喀出しにくい痰であれば、さらに加湿を行ったり、薬物療法の必要性などを判断します。継続的にアセスメントを行うことで、ケアの効果と以後の方針を立てることができます。

(『ナース専科マガジン2014年6月号』より改変利用)