【連載】検査値をケアに活かす!

【消化器がんの患者さん】 事例で見る検査値の活かし方

解説 小野寺 由美子

埼玉協同病院 副看護部長

監修 村上 純子

埼玉協同病院 臨床検査部 部長

検査値を患者さんの病態とどうつなげて考えればよいかわからない──。
そんな声に応えて、入院時からの経過と検査値の推移を見ながら、数値の示す意味や看護への活かし方を、4つの事例で検討します。


事例4

S状結腸がんと肝転移が明らかになった患者さん

Dさん(69歳、男性)は、秋ごろから排便後にも便が残っているような感じがあったものの、「痔があるためではないか」と思い、そのまま放置していました。

その後、次第に症状が強くなり、さらに全身倦怠感や動悸、息切れなども加わり、食欲不振もありました。

しかし、これも「年齢のせいではないか」と思って我慢していました。

ところが、そのうち尿の濃染や黄疸が出現したため、同じ年の12月に内科を受診。

その時点ですでに強い貧血と黄疸、胆道系酵素の著明な上昇がみられたことから、即日入院となりました。

入院後の諸検査で、S状結腸がんおよび肝転移と診断されました。

Dさん本人とご家族と話し合った結果、手術は行わずに、がんの肝転移による閉塞性黄疸と貧血を改善する症状緩和を行うことになりました。

翌年の2月に、黄疸と貧血症状が改善されたため、Dさんはいったん退院しましたが、その後、病状が悪化し5月に亡くなられました。

初診時の検査値

初診時の検査値

診断・治療のポイント!

  • Dさんは、入院時、Hbが8.5g/dLと低く、免疫学的潜血反応が+で下血が認められ、強い貧血を呈していました。また、尿検査ではビリルビンが3+、血液生化学検査においては総ビリルビンが10.9mg/dL、直接ビリルビンが7.7mg/dLと値が高くなっていることから、黄疸があることがわかります。
  • 大腸内視鏡で検査したところ、S状結腸がんと診断されました。さらに腹部CTでは、がんの肝臓への転移が確認されました。
  • Dさんは、手術は行わずに貧血と黄疸の改善ほか全身状態の管理を行うことになりました。貧血の改善については、輸血を行いました。Hbが8.5g/dL程度なら通常は鉄剤を投与しますが、Dさんの場合は、これまで原発巣からの出血が続いており、今後も改善は期待できません。全身状態が悪かったこともあり、輸血を行うことになりました。
  • また、肝転移による閉塞性黄疸があるために、尿検査でもビリルビンが3+を示しています。この数値であれば、尿もかなりの黄褐色になっていると思われます。しかし、黄疸が改善されてくれば、尿中ビリルビンが低下すると考えられます。
  • Dさんの場合は、転移がんが肝臓の出口を塞いで胆汁流出を妨げていたために、胆汁ドレナージを行い、黄疸の改善を図りました。その際に胆管を穿刺をしたことから、感染症にも注意が必要となるため、WBCやCRPの値も気を付けてみていくことが大切になります。

ココに注目! 看護のポイント

POINT(1) 黄疸による全身のかゆみには蒸しタオルが効果的

Dさんの場合、黄疸と貧血の改善が治療の中心です。黄疸や貧血には付随するつらい症状があるため、看護師は、それらを少しでも緩和できるような支援を行うことが大切です。

Dさんのように強い黄疸を呈している患者さんは、想像し難いかゆみに襲われます。

睡眠中に無意識に全身を掻きむしってしまい、掻いた皮膚が損傷してしまったり、さらに出血傾向もあることから、出血してしまうこともあります。

かゆみは個人差が大きいことから、対症療法の効果にも個人差があります。

抗ヒスタミン作用のあるクリームやメンタ湿布などを実施することもあります。しかし、皮膚損傷があると使いにくい場合があります。

また、クーリングも一時的な効果は高いのですが、中断するとかゆみが倍増する傾向があります。

そんな中、臨床的に効果があったのは蒸しタオルです。

バスタオルのような大判のタオルを入浴するお湯よりも高めの温度にして、できるだけ広範囲に患者さんの身体を覆います。

寝る直前に行うと特に効果的です。

また、胆汁ドレナージなどで減黄の処置を行えば、それに伴ってかゆみが軽減する場合も多いので、患者さんにはその見通しを伝えておくことも必要です。

POINT(2) 防ぎようのない貧血症状に注意する

Dさんのように、がんによる貧血の場合は、原発巣からの出血が原因で、がんが存在する限り出血は続きます。

病状の進行とともに貧血はさらに進み、がん性腹膜炎による腹水貯留も加速して、全身状態も悪化していくことが予測できます。

そのため、患者さんは、起き上がりや移動のときのふらつき、転倒のリスク、身の置き所がない苦痛が日々高まっていきます。

看護師はこのリスクを予測し、日常的な環境調整や移動の援助を先取りして実施し、患者さんの身体的・精神的消耗をできるだけ最小限にするケアが大切になります。

(『ナース専科マガジン』2012年8月号から転載)

検査値をケアに活かす!は今回で連載終了です。

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