【連載】基礎からまなぶ血液ガス

第5回 5つのステップで血液ガスを読んでみよう

解説 飯野 靖彦(いいの やすひこ)

日本医科大学名誉教授

血液ガス異常の基本形を理解したところで、血液ガスの読み方をイメージしてみましょう。

血液ガス異常は、混合性酸塩基平衡障害など複雑な病態を示すことも多いので、ここで紹介するように、一歩一歩系統的にアプローチしていくと理解しやすくなります。


▼血液ガスについてまとめて読むならコチラ
血液ガス分析とは?基準値や読み方について

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ステップ1 アシデミアかアルカレミアかを判断する!

 血液pHの基準値は7.40±0.05で、これを超える場合は

 1. アシデミア(酸性に傾いている状態) pH<7.45
 2. アルカレミア(アルカリ性に傾いている状態) pH\>7.45 

 と判断します。

ステップ2 pH変化の原因が、HCO3かPaCO2かを検討する!

 血液ガス異常の4つの基本形(呼吸性アシドーシス・呼吸性アルカローシス・代謝性アシドーシス・代謝性アルカローシス)に当てはめて、血液pHが変化した主要因を考えます。

 例えば、

 1. pH 7.32
 2. PaCO2 40Torr
 3. HCO3 14mEq/L

 の場合、PaCO2は正常で、HCO3(基準値24mEq/L)は大きく減少しているため、代謝性アシドーシスと判断できます。

ステップ3 アニオンギャップを計算する

アニオンギャップとは

 血液中には、陰イオン(アニオン)と陽イオン(カチオン)があります。

 両者は平衡状態にあるので、陽イオンの総数(おもにNa+とK+)と陰イオンの総数(おもにHCO3とCl+)は等しくなるはずですが、測定では検出されない陰イオンが存在するため、同数にはなりません。この差をアニオンギャップと言います。

アニオンギャップの計算式と基準値

 1. 計算式 Na+-(Cl++HCO3
※K+は影響を与えないので、計算には入れません
 2. 基準値 12±2mEq/L

アニオンギャップからわかること

 代謝性アシドーシスの病態が、アニオンギャップ正常・Cl増加タイプか、アニオンギャップ増加・Cl正常タイプかを鑑別できます。アニオンギャップの増加は、HCO3以外のさまざまな有機酸(ケトン体など)が蓄積していることを示します。

アニオンギャップ説明図アニオンギャップ説明図

ステップ4 代償作用の程度を見る!

 呼吸性と代謝性障害の合併(混合性障害)の有無を、代償性変化を計算して判断します。すぐに代償反応を開始する、呼吸による代償は次のように求めます。

呼吸による代償

 PaCO2の値が予測された数値から±5の範囲内になければ、混合性酸塩基平衡障害と判断します。

 一方、腎臓による代償作用は反応するまでに数日かかり、急性と慢性とでは代償の程度が異なるため、次の式を使います。

腎臓による代償作用

 HCO3の値が予測とは違った場合には、別の原因による酸塩基平衡障害があると考えられます。

ステップ5 得られた情報を総合して病態を分析する!

 得られた情報と既往歴、身体所見、他の検査所見などから、病態を把握した上で治療法やケアを決定します。血液ガスは、適切なケアを実践するために読むという本来の目的を忘れないようにしましょう。

得られた情報を総合して病態を分析するイメージイラスト

 次回は、「酸素化を評価する」を解説します。

(『ナース専科マガジン2012年10月号』より転載)

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