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【連載】ケースで考えよう!看護倫理レッスン

【看護倫理・事例】第2回<解決編>体位変換したら「夜中に起こすな」と怒られたケース

解説 高野春美

北里大学病院 8B病棟 係長

解説 児玉美由紀

北里大学病院 がん看護専門看護師

解説 青柳明子

北里大学病院 科長

Doctorw think1

ジレンマの原因がどこにあるのか、それらが倫理的にどのような問題を含んでいるかを見極めるためには、それぞれの行為が倫理的に正しいかどうかを点検してみる必要があります。

その方法にはいろいろありますが、このコーナーでは、フライの倫理原則に基づきチェックする方法を紹介します。

第1回で紹介したケース体位変換したら「夜中に起こすから眠れない」と怒られてしまった・・・について、5つのポイントを確認しながら、解決策を考えてみましょう。


5つのポイントでチェック

ポイント1 あなたの看護行為は、患者さんの害になっていませんか?

田中さんの不満を買った夜中の体位変換ですが、では、もし看護師が田中さんに体位変換を行わなかったとしたら、どうなるでしょうか。おそらく、入院中に褥瘡をつくったり、排痰が思うように進まず、呼吸状態の悪化や合併症、回復の遅れがみられたかもしれません。

これらを防ぐことができたという点では、体位変換を実施した看護師の行動は、患者さんへの害を十分に避ける行動になっていたといえるでしょう。

体位変換を行わなかったときの害と体位変換を行ったときの害の両面からみて、看護師は体位変換を行うことを選択しました。しかし田中さんの睡眠を妨げることになり、体位変換は、患者さんに害を与える行為になっていたとも考えられます。

ポイント2 あなたは看護師としてきちんと役割を果たしていますか?

このケースでは、看護師はただ漠然と体位変換を行っていたわけではなく、ケアプランに基づき、決められたケアを決められた時間ごとに、懸命に実施していました。その結果、田中さんには褥瘡が発生せず、呼吸状態も改善しています。したがって、看護師としての役割をしっかり果たすことができていたといえるでしょう。

ただし、もう一歩踏み込んで考えるならば、呼吸困難が強く、体動も難しい入院当初に設定したケアプランを、回復がみられた時期になっても、そのまま実行することが果たしてよかったのかを再考する必要があったでしょう。田中さんにとっては、そろそろ再評価を行い、ケアプランの立て直しを図る時期であった可能性が高いといえます。

常に患者さんの状態に合わせた目標の設定を行い、評価を繰り返すことが看護師の責務ともいえますから、この視点において看護師は、自分の役割を果たしきれていたとはいえません。

ポイント3 患者さんに情報は正しく伝わっていますか?

確かに、このケースでは「体位変換の必要性」が、患者さんにしっかり伝えられていなかったかもしれません。入院当初の田中さんは、強い呼吸困難を示しており、とても看護師からの説明を聞けるような状態ではありませんでした。そこでおそらく、詳しい説明をされないまま、ケアプランが立てられ、実施されてきたことでしょう。

しかし、たとえ当初は会話ができない状態であっても、田中さんの熱が下がり、呼吸が楽になった入院4日目からは、看護師の説明を聞くことができたのではないでしょうか。そこで、この時期に及んでも説明がなされていないことは、患者さんに正しい情報を伝える努力がなされていなかったと判断できます。

ポイント4 患者さんは自分のことを自分で決められますか?

患者さんが自分で選択したり、行動を決定するためには、「ポイント3」で示したとおり、患者さんに十分な情報が伝えられていることが前提になります。

例えば、なぜ夜間に体位変換が必要なのか、あるいは体位変換以外に方法はあるのかないのか、体位交換に対して患者さんの希望を取り入れる余地はあるのか、などの情報が与えられていれば、患者さんの判断の材料になります。

しかしこのケースでは、田中さんに体位変換に関する目的や効果は伝えられていなかったようです。そこで田中さんは、ケアの選択をすることができず、「眠れない」という不満とともに、看護師のケアを否定し、言葉かけを拒絶することしかできなかったのでしょう。

ポイント5 あなたはどの患者さんに対しても、公平で平等でいますか?

看護師として、一人の患者さんだけにケアが集中してしまったり、一生懸命になってはいけません。医療者は、常にすべての患者さんに対し、公平で平等に接することが求められているためです。特に複数の患者さんの権利にかかわるようなケースでは、この5つめのポイントのチェックも欠かせません。

ただし今回のケースでは、田中さんは個室にいて、周囲の患者さんへの直接の影響はありませんでした。そこで、この項目は今回は省略します。

次ページは、「どう対応すればよかったのか」について解説します。