【連載】疾患別 検査値の看護への活かし方

【出血性ショック】検査値の看護への活かし方

解説 谷島雅子

自治医科大学附属病院 救命救急センター 救急看護認定看護師

解説 山田俊幸

自治医科大学臨床検査医学 自治医科大学附属病院 臨床検査部 教授

検査値が何を示しているのか、また検査データを踏まえてどのような看護を行えばいいのか、実際のデータをもとに読み解いてみましょう。今回は、「出血性ショック」です。


事例

糖尿病で通院していた患者さん(男性52歳)が、意識障害のある状態で救急搬送されました。症状は以下のとおりです。

  1. ショック症状
  2. 吐血

検査データ[入院時]

血液一般検査

  1. RBC(万/μl):134
  2. Hb(g/dl):4.4(前回外来 11)
  3. Ht(%):13.2
  4. MCV(fl):100
  5. MCHC(pg):32.8
  6. WBC(/μl):5100
  7. 骨髄球(%):2.4
  8. 後骨髄球(%):1.4
  9. 棹状核好中球(%):13.8
  10. 分葉核好中球(%):68.4
  11. 好酸球(%):2.8
  12. 好塩基球(%):1.2
  13. 単球(%):4.2
  14. リンパ球(%):5.8
  15. Plt(万/μl):228
  16. 網赤血球(%):3.7
  17. 有核赤血球(/100WBC):1.6
  18. 赤血球形態:大小不同、多染性

生化学検査

  1. ALP(U/l):150
  2. AST(U/l):33
  3. ALT(U/l):21
  4. LD(U/l):276
  5. γ-GT(U/l):36
  6. CK(U/l):30
  7. T-Bil(mg/dl):1.05
  8. D-Bil(mg/dl):0.33
  9. TP(g/dl):5.7
  10. Alb(g/dl):2.0
  11. BUN(mg/dl):58
  12. Cr(mg/dl):1.04
  13. UA(mg/dl):6.8
  14. Glu(mg/dl):82
  15. Na(mEq/l):131
  16. K(mEq/l):4.7
  17. Cl(mEq/l):95
  18. Ca(mg/dl):8.3

免疫血清検査

  1. CRP(mg/dl):1.5

検査値の読み方のポイント

血液一般検査では、まずHb(ヘモグロビン)をみていきます。前回の外来時は11g/dlだったものが、4.4g/dlに下がっています。この急激な低下により、何らかの出血があることが考えられます。

Hb以外では、白血球分画をみる必要があります。好中球の前段階である骨髄球や後骨髄球、赤血球の前段階である有核赤血球(赤芽球)などは、本来骨髄に存在するもので、末梢血ではあまり検出されません。

しかしこの事例では、低くない数値を示しており、いわゆる白赤芽血症のような所見になっています。この所見は、悪性腫瘍の骨髄転移が代表的な原因ですが、急性出血で出現することもあり、急性出血を疑う要素として評価しました。

生化学検査では、まずAlb(アルブミン)が2.0g/dlと低下していることに注目します。出血により、おそらく血液の成分が漏出したのではないかと考えられます。

また、BUN(尿素窒素)が58mg/dlと異常高値で、Cr(クレアチニン)は1.04mg/dlとそれほど高くありません。本来、BUNとCrはいずれも腎機能をチェックするために用いられるのが第一となりますが、この事例のようにBUNとCrの値が解離している場合は、消化管出血が疑われます。

極度の脱水という場合もありますが、貧血(Hbの低下)があって、なおかつBUNが上昇しているとなれば、消化管出血を考えるのが通常です。吐血があったことも、それを裏付けています。

診断のポイント

患者さんはショック状態で搬送され、吐血もあることから、出血が原因の出血性ショックであると診断されます。

診断・経過観察時に必要なその他の検査

BUNとCrのデータと、軽微な異常を示すその他の生化学データだけでは、消化管出血を特定するには至らなかったため、緊急内視鏡検査を行いました。

この結果のほか、黒色便、潜血便がみられたこともあり、胃潰瘍による出血性ショックであることが確定されました。

看護のポイント

投与量が2リットルに達する前に輸血を開始する

ショック症状で、Hbが4.4g/dlと貧血がみられます。前回の検査値の数値を参考にしても、急性出血によって生じた低容量性ショック(循環血液量減少性ショック)と判断され、すぐに輸血が必要な状態です。

輸血が開始されるまでの間は細胞外液を補充し、なるべく早く輸血に切り替えることが重要となります。輸液ラインは、なるべく太い静脈留置針を用い、全開で急速に滴下させますが、大量輸液は凝固異常をきたすことがあるので、投与量が2リットルに達しないうちに輸血を開始することが望まれます。

常温での急速大量輸液は、患者さんを低体温にして出血を助長するので、輸液は40℃に温めておいたものを用いることで、予後改善を図ることができます。

救急搬入時の情報から、事前に患者さんの状態が予測できるのであれば、前もって温かい輸液や輸血の準備をしておくことが大切です。速やかに治療が開始できるよう備えておくことも、看護師の重要な役割になります。

ショック状態からの回復がみられない場合

消化器内科の専門医に相談して緊急内視鏡的止血処置が必要です。専門医が常駐しておらず自施設で対応ができない場合は、他施設への転送が考慮されます。

このようなときは、看護師はスムーズに治療が行われるよう環境を整え、患者さんや家族への説明に関する対応など精神的フォローを行うことが重要です。

(『ナース専科マガジン』2013年8月号から改変引用)

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