【連載】疾患別 検査値の看護への活かし方

【血球貪食症候群】検査値の看護への活かし方

解説 谷島雅子

自治医科大学附属病院 救命救急センター 救急看護認定看護師

解説 山田俊幸

自治医科大学臨床検査医学 自治医科大学附属病院 臨床検査部 教授

検査値が何を示しているのか、また検査データを踏まえてどのような看護を行えばいいのか、実際のデータをもとに読み解いてみましょう。今回は、「血球貪食症候群」です。


事例

入院中の患者さん(男性、49歳)、主訴・症状は以下のとおりでした。

下痢

発熱

重度倦怠感

検査データ[入院時]

尿一般検査

  1. 比重:1.015
  2. pH:5.5
  3. 蛋白:±
  4. 糖:-
  5. ウロビリノゲン:±
  6. ビリルビン:+
  7. ケトン体:-
  8. 潜血:+
  9. 沈渣(赤血球):6-7/毎
  10. 沈渣(白血球):2-3/毎
  11. 沈渣(硝子円柱):9-10/毎
  12. 沈渣(細菌):-

血液一般検査

  1. RBC(万/μl):370
  2. Hb(g/dl):10.8
  3. Ht(%):32
  4. MCV(fl):87
  5. WBC(/μl):1500
  6. 棹状核好中球(%):25
  7. 分葉核好中球(%):70
  8. 好酸球(%):1
  9. 好塩基球(%):0
  10. 単球(%):1
  11. リンパ球(%):3
  12. Plt(万/μl):1.1

凝固検査

  1. APTT(秒):34
  2. PT(秒):11.3
  3. AT-Ⅲ(%):62.8
  4. FIB(mg/dl):642
  5. FDP(μg/ml):5.8

生化学検査

  1. ALP(U/l):525
  2. AST(U/l):140
  3. ALT(U/l):71
  4. LD(U/l):574
  5. γ-GT(U/l):31
  6. CK(U/l):1346
  7. Ch-E(U/l):230
  8. T-Bil(mg/dl):1.5
  9. D-Bil(mg/dl):0.3
  10. TP(g/dl):4.7
  11. Alb(g/dl):2.3
  12. BUN(mg/dl):100
  13. Cr(mg/dl):3.49
  14. UA(mg/dl):9
  15. T-Cho(mg/dl):80
  16. TG(mg/dl):253
  17. Amy(U/l):41
  18. Na(mEq/l):120
  19. K(mEq/l):3.0
  20. Cl(mEq/l):79
  21. Ca(mg/dl):7.4
  22. Fe(μg/dl):46
  23. UIBC(μg/dl):178
  24. フェリチン(ng/ml):720

免疫血清検査

  1. CRP(mg/dl):20.8

検査値の読み方のポイント

まず注目されるのは、炎症マーカーであるCRPの値で、20.8mg/dlとかなり高値を示しています。炎症が激しいことがわかり、感染が疑われます。

生化学検査では、BUN(尿素窒素)やCr(クレアチニン)の値が高くなっており、腎機能障害があると考えられます。

また、LD(乳酸脱水素酵素)とAST、CK(クレアチンキナーゼ)が高いことから、筋傷害も疑われます。この中で、LDは5つの異なるアイソザイムを持っており、それぞれに存在する臓器が異なるため、原因鑑別に役立ちます。アイソザイム検査を行った結果、筋傷害と溶血がミックスした症状を呈しているという評価が出ました。

一方、血液検査の結果では、WBC(白血球数)が1500/μl、Plt(血小板数)が1.1万/μlとかなり低く、Hb(ヘモグロビン濃度)も10.8g/dlと低値で、3系統が減少する汎血球減少状態となっていることがわかります。

診断のポイント

発熱、下痢という症状と、CRPの上昇、WBCの低下(敗血症の疑いがあります。

そのため、血液培養をしたところ、フソバクテリウムという細菌が検出され、敗血症であることがわかりました。先の腎機能障害も敗血症に由来するものと考えられます。

敗血症であることを考慮すると、患者さんに現れている汎血球減少状態は、3系統が破壊されているために起こっていることが推測されます。

主治医は、細菌感染症による血球貪食症候群を疑いました。この事例では、CRPに注目できるかどうかが一つのカギです。

基本的に炎症をリアルタイムに反映するのはWBCで、炎症を鑑別する大きな指標ですが、白血球が貪食されると当然WBCは低下します。WBCが低下しているからといって、炎症を疑わない根拠にはならないということを覚えておく必要があります。

敗血症の診断項目

診断・経過観察時に必要なその他の検査

確定診断のために骨髄検査を実施しました。その結果、多くのマクロファージが存在しており、それが血球を貪食しているという所見が出たことから、血球貪食症候群であることが裏付けられました。

血球貪食症候群の原因には感染症があり、ウイルス感染症に伴うことが多いのですが、この患者さんは、敗血症に由来する血球貪食症候群であるということになります。

この疾患は、症状が改善しないと、肝障害やDICを合併することがあるため、原因疾患に対する治療を第一に、血液検査により、WBC、Plt、Hbの値をみていくことが必要です。

看護のポイント

抗生物質を確実に投与

敗血症の原因を追求し、早期に抗生物質の投与が必要です。看護師は、確実に投与できるようにすることが大切です。

呼吸・循環動態を把握する

症状が重篤化すると、サイトカインの影響で血管が拡張し血圧が低下するなど、循環動態が不安定になります。ショック症状にあることも考えられるので、バイタルサインやフィジカルアセスメントで呼吸・循環動態を把握し、十分な対応をしていきます。

尿量の管理を含めた全身管理を行う

症状によっては、持続的血液濾過透析が実施されます。急速な進行では腎不全になることもあるので、尿量の管理を含めた全身管理が必要になります。BUNやCrなど腎障害にかかわるデータにも注目し、異常の早期発見に努めます。

感染管理を行う

下痢、発熱、倦怠感などの身体症状があることから、感染管理を十分に行うことも大切なポイントです。

(『ナース専科マガジン』2013年8月号から改変引用)

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