【連載】疾患別 検査値の看護への活かし方

【溶血性尿毒症症候群(HUS)】検査値の看護への活かし方

解説 山田俊幸

自治医科大学臨床検査医学 自治医科大学附属病院 臨床検査部 教授

解説 谷島雅子

自治医科大学附属病院 救命救急センター 救急看護認定看護師

検査値が何を示しているのか、また検査データを踏まえてどのような看護を行えばいいのか、実際のデータをもとに読み解いてみましょう。今回は、「溶血性尿毒症症候群(HUS)」です。


事例

入院中の10歳の女の子、主訴・症状は以下のとおりでした。

腹痛

発熱

検査データ[入院時]

尿一般検査

  1. 蛋白:2+
  2. 糖:-
  3. 潜血:4+
  4. 沈渣(赤血球):多数/毎
  5. 沈渣(白血球):6-10/毎
  6. 沈渣(円柱):顆粒、ろう様の各円柱
  7. 沈渣(細菌):-

血液一般検査

  1. RBC(万/μl):330
  2. Hb(g/dl):9.5
  3. Ht(%):28.9
  4. MCV(fl):88
  5. 網赤血球(%):3.5
  6. WBC(/μl):16700
  7. 棹状核好中球(%):7.5
  8. 分葉核好中球(%):57
  9. 好酸球(%):6
  10. 好塩基球(%):0
  11. 単球(%):8.5
  12. リンパ球(%):21
  13. 破砕赤血球:+
  14. Plt(万/μl):4.1

生化学検査

  1. AST(U/l):124
  2. ALT(U/l):109
  3. LD(U/l):2356
  4. T-Bil(mg/dl):1.6
  5. TP(g/dl):4.8
  6. Alb(g/dl):2.7
  7. BUN(mg/dl):33
  8. Cr(mg/dl):1.83
  9. UA(mg/dl):7.4
  10. T-Cho(mg/dl):187
  11. Glu(mg/dl):125
  12. Na(mEq/l):132
  13. K(mEq/l):4.8
  14. Cl(mEq/l):95
  15. Ca(mg/dl):8.9
  16. CRP(mg/dl):10.8

便迅速検査

  1. ベロ毒素:+

検査値の読み方のポイント

尿検査で蛋白と潜血反応が陽性なので、糸球体腎炎を疑います。小児の場合は尿路感染症も疑われますが、尿路系の異常に反応する尿沈渣の値をみると、白血球はそれほど多くなく、細菌が検出されていないので、尿路感染であるとは言い切れません。

尿中に赤血球が多い場合は、尿の通り道の異常を、白血球が多い場合は尿路感染や結石を、円柱がみられる場合は腎炎を疑います。

一方、血液検査では、Hb(ヘモグロビン)が9.5g/dlと貧血状態を示しています。そこで、MCV(平均赤血球容積)とMCH(平均赤血球ヘモグロビン)とMCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)の値に注目します。

赤血球のサイズを示し貧血の性質を表すMCVは88 flでした。サイズとしては正常(正球性貧血)であるため、急性出血や溶血などの可能性が考えられます。ちなみに、MCVの値が小さければ(小球性貧血)、色素量を表すMCHCが低値になります。

網赤血球が増加しているのは、赤血球の生成が亢進していることを意味します。これは溶血性貧血でよくみられます。

また、WBC(白血球数)が16700/μlなので、発熱があることと合わせ、何らかの炎症があることがうかがえます。

破砕赤血球がみられることにも注目が必要です。破砕赤血球は、赤血球が何らかの物理的な力で引き裂かれ、溶血を起こしたときなどに発生します。

生化学検査では、AST、ALT、LD(乳酸脱水素酵素)の値が高値を示しています。特にLDは極度に上昇しています。これらの項目は肝障害でも高値となりますが、LDとASTのバランスがLDに偏っている場合(LD/AST>10)は、血球の破壊がより疑われます。

さらに、BUN(尿素窒素)やCr(クレアチニン)も高値で、CRP高値とWBC増加を考え合わせると感染症が疑われます。腎機能に障害が起こっていることがわかります。

なお、血管内溶血があるとヘモグロビンが尿に出ていくので、尿は強い褐色調を示します。この患者さんは赤血球も出ているので、尿潜血が陽性になるのは当たり前ですが、赤血球がさほど出なくても、ヘモグロビンが出ているときは尿潜血反応が強陽性になるため、それで気付くことができます。

診断のポイント

尿所見は腎糸球体の障害を示しており、BUN、Crからは腎不全状態といえます。まずは血液検査の結果とLDの著増から、溶血性貧血が疑われます。破砕赤血球がみられることから血管内溶血が起こっていることが裏付けられます。

また生化学検査では、AST、ALT、LDとともにBUN、Crが高値を示しており、急性腎不全を起こしていることがわかります。ASTやLDは急激な溶血の指標でもあります。

溶血性貧血、急性腎不全、血少板減少症といった症状は、溶血性尿毒症症候群(HUS)の特徴的な症状なので、患者さんはHUSであると考えられます。原因検索のため迅速便検査を行ったところ、病原性大腸菌O-157が産生するベロ毒素が検出されたので、大腸菌O-157感染によるHUSが確定診断となります。

診断・経過観察時に必要なその他の検査

HUSの原因を確定するために、菌体の培養検査を行いました。これにより、O-157が検出され、HUSの原因も確定しました。患者さんは焼鳥を食べており、これが感染源と思われました。

治療としては、抗菌薬の投与とともに、腎機能の改善を行います。そのため、尿検査のほか、 Hb、AST、LD、Crなどで経過をみていきます。

看護のポイント

便の取り扱いに注意

O-157は非常に感染力が強く、接触感染であるため、便の取り扱いには注意が必要です。頻回な下痢のケアや、繰り返し行われる便培養の際には、手袋、マスク、エプロン(ガウン)などを装着しスタンダードプリコーションを遵守します。

また、できれば患者さんを個室管理にし、ほかの患者さんとの接触を防ぎます。検査など移送が必要なときは、移送先への連絡を必ず行います。

呼吸・循環動態を把握する

症状が重篤化すると、サイトカインの影響で血管が拡張し血圧が低下するなど、循環動態が不安定になります。ショック症状にあることも考えられるので、バイタルサインやフィジカルアセスメントで呼吸・循環動態を把握し、十分な対応をしていきます。

輸液量をコントロールする

激しい下痢により腸液が体外に排泄され、脱水となり、電解質に異常が生じます。患者さんは小児で発熱もあることから、ぐったりとして口もきけない状態です。そのため、経口からの摂取はできず、早急に輸液による全身管理が必要になります。Naの補正を行い、水分量のIN/OUTのバランスをみながら輸液量をコントロールします。

水分管理が重要

ベロ毒素が尿細管などに毒素を排出している状態であるため、毒素が抜け切るまで水分管理が重要になります。検査データのほか、尿や便の性状の観察やフィジカルアセスメントを行い、経過をみていきます。また、持続濾過透析へ移行する時期を逃さないためにも、全身状態の観察が重要になります。

(『ナース専科マガジン』2013年8月号から改変引用)

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