【連載】疾患別 検査値の看護への活かし方

【急性膵炎】検査値の看護への活かし方

解説 山田俊幸

自治医科大学臨床検査医学 自治医科大学附属病院 臨床検査部 教授

解説 谷島雅子

自治医科大学附属病院 救命救急センター 救急看護認定看護師

検査値が何を示しているのか、また検査データを踏まえてどのような看護を行えばいいのか、実際のデータをもとに読み解いてみましょう。今回は、「急性膵炎」です。


事例

入院中の患者さん(男性、77歳)、主訴・症状は以下のとおりでした。

背部・腹部の激しい痛み

検査データ[入院時]

尿一般検査

  1. 尿アミラーゼ(U/l):2390

血液一般検査

  1. RBC(万/μl):452
  2. Hb(g/dl):15.4
  3. Ht(%):44.6
  4. WBC(/μl):13200
  5. 骨髄球(%):1.0
  6. 後骨髄球(%):2.0
  7. 棹状核好中球(%):60.0
  8. 分葉核好中球(%):30.0
  9. 好酸球(%):0
  10. 好塩基球(%):0
  11. 単球(%):4.0
  12. リンパ球(%):3.0
  13. Plt(万/μl):8.4
  14. 網赤血球(%):1.5

生化学検査

  1. ALP(U/l):483
  2. AST(U/l):108
  3. ALT(U/l):104
  4. LD(U/l):422
  5. γ-GT(U/l):224
  6. ChE(U/l):209
  7. T-Bil(mg/dl):6.08
  8. D-Bil(mg/dl):4.57
  9. TP(g/dl):5.4
  10. Alb(g/dl):3.0
  11. BUN(mg/dl):25.9
  12. Cr(mg/dl):1.92
  13. UA(mg/dl):6.5
  14. T-Cho(mg/dl):126
  15. TG(mg/dl):77
  16. Amy(U/l):641
  17. Na(mEq/l):135
  18. K(mEq/l):4.4
  19. Cl(mEq/l):101
  20. Ca(mg/dl):6.9
  21. Glu(mg/dl):122

免疫血清検査

  1. CRP(mg/dl):19.86

凝固検査

  1. PT(秒):20.6
  2. 活性(%):41
  3. INR:1.89
  4. APTT(秒):74.5
  5. FIB(mg/dl):462
  6. FDP(μg/ml):65.5
  7. D-ダイマー(μg/ml):23.5

動脈血液ガス分析

  1. pH:7.359
  2. PaCO2(Torr):26.5
  3. PaO22(Torr):75.7
  4. HCO3-(mEq/l):14.6
  5. B.E(mEq/l):-8.6

検査値の読み方のポイント

背部・腹部に激しい痛みを訴える場合、初めにしなければならないのが急性膵炎を否定することです。それには膵酵素(糖質分解酵素)のAmy(アミラーゼ)に注目します。この患者さんの場合、Amy値は641U/lと高値を示してします。

Amyは厳密にいえば、膵臓から分泌されるもの(膵型)と唾液腺から分泌されるもの(唾液腺型)の2種類があり、アイソザイムを調べることで膵臓由来かどうかを確認できます。

しかし、このケースのように腹部症状があれば、まず膵型Amyと考えてよいでしょう。

また、膵型Amyは尿中にも排泄されるので、尿検査で確認することができます。この患者さんの場合も尿アミラーゼが2390U/lと高くなっています。

このほか、同じく膵酵素のリパーゼ、トリプシン、エラスターゼなどの上昇がないかを同時に調べることでも診断できます。特に、脂質分解酵素のリパーゼは膵臓特異性が高く、その大半が膵臓で産生されるので、Amy値とともに上昇していれば膵炎と考えることができます。

診断のポイント

血中や尿中のアミラーゼが共に高く、腹部症状が認められるので、まずは急性膵炎と診断されます。

次に、急性膵炎の重症度をみていきます。確認する項目は、以下の4つです。

  1. 貧血の有無
  2. 血液ガス
  3. Ca濃度
  4. 凝固検査

1 貧血の有無

通常はHb(ヘモグロビン)でみますが、急性膵炎の重症度判定ではHt(ヘマトクリット)値をみます。このケースでは44.6%と基準値内ですが、脱水があるとHtは高めになるので、実際は貧血があるかもしれません。

2 血液ガス

急性膵炎はアシドーシスをきたすため、血液ガスをみます。pHの動きだけでみると7.359で異常はみられませんが、B.E(ベース・エクセス)が-8.6mEq/lとアシドーシスであり、HCO3-(重炭酸イオン)も14.6mEq/lと低いので、代謝性アシドーシスであることがわかります

なお、pHが正常値なのは、呼吸により代償された結果と考えられます。

代謝性アシドーシスの基本は、HCO3-<24mEq/l、血液pH<7.35。B.Eは-の数値で代謝性アシドーシスを、+なら代謝性アルカローシスを示す

3 Ca濃度

Ca濃度は重症度が高いほど低下します。この患者さんの場合、6.9mg/dlと低値です。ただし、Ca濃度は血清Alb(アルブミン)の影響を受けるので、常に一緒にみていく必要があります。

見方としては、Alb値が4g/dl以下の場合、「4」にどれくらい足りないかを計算し、それをCa濃度に加算します。

この症例なら、Alb値は3.0g/dlで1.0足らないので、Ca濃度6.9mg/dlに1.0をプラスして7.9mg/dlということになり、実は「それほど低い値ではない」ということになります。

4 凝固検査

凝固検査をみると、PT(プロトロンビン時間)が20.6秒とかなり延長しており、これは血液凝固能が非常に低下している状態を示します。FDP、D-ダイマーの高値は、DICに陥っていることを示します。

以上4つの検査値から、この患者さんは重症の急性膵炎だといえるでしょう。

また、検査値全体をみるとAST、ALT、ALP、γ-GTの数値も高くなっています。AST、ALTの高値は、障害が肝細胞に及んでいることを、ALP、γ-GTの高値は、膵障害によって胆汁のうっ滞が生じていることをそれぞれ示します。

BUN(尿酸窒素)、Cr(クレアチニン)の高値は、腎機能低下を示しています。

診断・経過観察時に必要なその他の検査

急性膵炎には予後が良好な軽症から、多臓器不全や敗血症などの合併症による死亡率が高い重症膵炎まで、さまざまな病態を呈します。

確定診断には厚生労働省の重症度判定基準を用い、原則として24時間以内に予後因子と造影CTで重症度を評価します。

看護のポイント

非麻薬性鎮痛薬で疼痛を緩和する

膵炎は活性化した膵酵素が周囲の組織を破壊している状態で、激しい痛みのほか、発熱や悪心・嘔吐を伴うことがあります。激痛は上腹部に1週間ほど持続するので、非麻薬性鎮痛薬で疼痛を緩和していきます。

全身の観察を十分行う

膵酵素による血管透過性が亢進すると、循環血漿量の減少による脱水、ショック症状、腎不全、呼吸不全など多臓器不全が起こります。

尿量と循環を保つために十分量の輸液が投与できるように対応し、バイタルサインやフィジカルアセスメントといった全身の観察を十分行います。

腎不全に速やかに対応できるように準備が必要

BUN、Crが上昇し、血液ガスのB.Eが低下して代謝性アシドーシスに傾いていることから、腎不全になりかかっていることがわかります。

症状が進行すれば、持続的血液濾過透析などが考慮されますので、速やかに対応できるように準備が必要です。

(『ナース専科マガジン』2013年8月号から改変引用)

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