1. トップ
  2. 看護記事
  3. 診療科から探す
  4. がん
  5. がんのリハビリテーション
  6. 術前のオリエンテーションの目的・実施内容

【連載】知っておきたい! がんのリハビリテーション

術前のオリエンテーションの目的・実施内容

  • 公開日: 2014/7/11

▼術前・術後の看護について、まとめて読むならコチラ
術前・術後の看護(検査・リハビリテーション・合併症予防など)


1. 術前のオリエンテーションの実施目的

 全身麻酔での手術を予定している患者さんを対象に、おもに療養経過や手術に関する情報を提供するオリエンテーションですが、その目的の一つは術後の合併症予防にあります。

 術後は疼痛によって腹式呼吸が抑制されるため、深呼吸が困難になり、末梢気道が閉塞、肺胞が虚脱して無気肺や肺炎を引き起こす可能性があります。その予防のために、術前に呼吸訓練や痰の出し方などを説明し、理解してもらうようにします。

 特に肺など呼吸器の手術、食道手術の患者さんはそのリスクが高いので、入院する前から予防的リハビリを行うことは重要です。

 また、手術を受ける患者さんは、多かれ少なかれ誰もが不安をもっています。きちんとした情報提供を行うことで、その不安を軽減することも、オリエンテーションの大切な目的です。

 一般的に、入院後に行われる術前オリエンテーションは手術室の看護師が行うことが多いようですが、当院では「手術前準備の会」として、呼吸器病棟の師長または看護師が入院前に外来で行っています。

2. 実施内容

1. 禁煙

 まずは禁煙です。喫煙による肺・気管支機能の低下により、術後に痰の量が増加することがあります。肺機能を維持し、痰の量を少なくするためにも、喫煙習慣のある人には必ず禁煙してもらいます。

 また、体力低下を防ぐために、日常生活を制限されていない限り、散歩や体操などの軽い運動を心がけます。これは手術にむけて体調を整えるだけでなく、術後の回復を早めることにもつながります。

2. 深呼吸

 全身麻酔によって硬くなっている肺や胸郭を動かすために、深い呼吸を行います。術後にいきなりはできないので、あらかじめ練習しておく必要があります。

3. 痰の出し方

 術後は痰が多くなりますが、疼痛があったり、身体に力が入らなかったりするため、排痰が困難になります。練習によって痰を出せるようにします。

4. 呼吸訓練器具の使い方

 呼吸筋を鍛えるために、呼吸訓練器具を使うので、患者さんにその購入方法や使い方をマスターしてもらいます。

5. うがいの方法

 術後の安静期間は、床上で過ごすことになります。口腔ケアや排痰のためのうがいも床上で行うことになるので、その方法を知ってもらいます。

 うがいの方法は次の通りです。

 1. ベッドが濡れないようにタオルなどを敷き、仰臥位で顔を横に向けます。
 2. 吸い飲みで水を少し口に含んで含嗽します。顔を上に向けるとむせてしまうことがあるので、横向きのままですすぐようにします。
 3. 十分にすすいだら、水を吐き出すための容器を頬にあてます。容器を頬に密着させたまま、静かに水を吐き出します。顔を横向きにしたままで口を開けると、自然に流れ出します。

実施に際しての2つのポイント

ポイント1

理解度を確認しながら、わかりやすく説明を
 患者さんが理解しやすいように、わかりやすい説明を心がけると同時に、理解度を確認しながら進めることが大切です。

 また、患者さんのなかには、告知されて間もないことから精神状態が不安定になっている人もいます。説明を理解できているのか、手術に臨める状態にあるのかを観察しながら説明しましょう。

 患者さんが高齢の場合、理解度の確認は特に重要となりますが、患者さんが家族と一緒であれば、患者さんとともに家族にも質問の有無を問い、理解状況を確めます。また、説明の途中でも「大丈夫ですか?」などと声をかけ、表情や動作から不安な様子が感じとれる場合には注意を払います。

ポイント2

患者さんの精神状態、生活環境などの情報はスタッフと共有する
 妙に落ち着きがなかったり、ほかの患者さんへの配慮を欠き、過剰に質問をしたりする場合、さらに呼吸訓練器具に触ろうともしなかったりする場合、それは不安の徴候とも考えられます。

 こうした徴候がみられたら、疾患や手術を受け入れられないでいる可能性もあるので、「眠れていますか?」「手術が決まってから不安を感じているのですか?」などと声をかけてみましょう。

 独居でサポートの得られない患者さんや不安をキャッチした患者さんについての情報は、医師や病棟スタッフに提供しておきます。

(『ナース専科マガジン2010年9月号』より改変利用)

次回は「がんのリハビリテーションの実際(呼吸訓練)」について解説します。

この記事を読んでいる人におすすめ

カテゴリの新着記事

術後悪心・嘔吐(PONV: Post-Operative Nausea and Vomiting)の対策を知りたい

Q 術後の悪心・嘔吐があると患者さんは苦痛そうですが、予防策はありますか? A 事前にリスクに応じた制吐剤の投与を行うことが推奨されています。  術後の悪心(嘔気)・嘔吐(以後PONV)は一般的に20-40%の割合で発症し、患者さんが術後に最も避けたい麻酔合併症の

2023/12/11

アクセスランキング

1位

心電図でみる心室期外収縮(PVC・VPC)の波形・特徴と

心室期外収縮(PVC・VPC)の心電図の特徴と主な症状・治療などについて解説します。 この記事では、解説の際PVCで統一いたします。 【関連記事】 * 心電図で使う略語・用語...

250751
2位

【血液ガス】血液ガス分析とは?基準値や読み方について

血液ガス分析とは?血液ガスの主な基準値 血液ガス分析とは、血中に溶けている気体(酸素や二酸化炭素など)の量を調べる検査です。主に、PaO2、SaO2、PaCO2、HCO3-、pH, ...

249974
3位

人工呼吸器の看護|設定・モード・アラーム対応まとめ

みんなが苦手な人工呼吸器 多くの人が苦手という人工呼吸器。苦手といっても、仕組みがよくわからない人もいれば、換気モードがわからないという人などさまざまではないでしょうか。ここでは、人工呼...

250017
4位

SIRS(全身性炎症反応症候群)とは?基準は?

*この記事は2016年7月4日に更新しました。 SIRS(全身性炎症反応症候群)について解説します。 SIRS(全身性炎症反応症候群)とは? SIRS(全身性炎症反応...

250839
5位

吸引(口腔・鼻腔)の看護|気管吸引の目的、手順・方法、コ

*2022年12月8日改訂 *2022年6月7日改訂 *2020年3月23日改訂 *2017年8月15日改訂 *2016年11月18日改訂 ▼関連記事 気管切開とは? 気管切開...

250001
6位

採血|コツ、手順・方法、採血後の注意点(内出血、しびれ等

採血とは  採血には、シリンジで血液を採取した後に分注する方法と、針を刺した状態で真空採血管を使用する方法の2種類があります。 採血の準備と手順(シリンジ・真空採血管) 採血時に準備...

250858
7位

サチュレーション(SpO2)とは? 基準値・意味は?低下

*2019年3月11日改訂 *2017年7月18日改訂 *2021年8月9日改訂 発熱、喘息、肺炎……etc.多くの患者さんが装着しているパルスオキシメータ。 その測定値である...

249818
8位

心電図の基礎知識、基準値(正常値)・異常値、主な異常波形

*2016年9月1日改訂 *2016年12月19日改訂 *2020年4月24日改訂 *2023年7月11日改訂 心電図の基礎知識 心電図とは  心臓には、自ら電気信...

250061
9位

第2回 全身麻酔の看護|使用する薬剤の種類、方法、副作用

【関連記事】 *硬膜外麻酔(エピ)の穿刺部位と手順【マンガでわかる看護技術】 *術後痛のアセスメントとは|術後急性期の痛みの特徴とケア *第3回 局所浸潤麻酔|使用する薬剤の種類、実施方...

295949
10位

Aライン確保の目的、手順、手技・観察のポイント

【関連記事】 * 輸液ライン(点滴ライン)作り方 9ステップ * 点滴と同じ腕(末梢から)の採血はOK? NG? * 【血圧異常】異常に高い血圧への対応 7ステップ Aライン...

249090