【連載】高齢者ケアの「困った!」を解決!

加齢がコミュニケーションにもたらす「4つの悪影響」

解説 田中和子

筑波メディカルセンター病院 看護師長 老人看護専門看護師

治療をスムーズに進めるため、あるいは安全・安楽に支援するために、高齢者特有の症状や機能低下について解説します。今回は、「加齢がもたらす悪影響」です。


影響1 聴覚機能が低下する

→蝸牛内の基底膜の硬化/感覚細胞の減少・変性

聴力は、一般に40歳前後から高音域の聴取能力が徐々に低下し、70、80歳代ではさらにそれが顕著になります。低・中音域は高音域に比べて、緩やかに低下します。

難聴は大きく、伝音性難聴感音性難聴、両者が混在した混合性難聴に分けられます。

伝音性難聴

外耳、鼓膜周辺に炎症などの異常が生じるもので、内耳は正常なので大きな音であれば聞こえます。

感音性難聴

中耳、聴覚中枢にかけての機能低下が原因で、聴力の低下だけでなく言葉の識別が困難になります。高齢者の聴覚障害の中で最も多い老人性難聴は、感音性難聴に含まれます

老人性難聴は、加齢によって内耳の蝸牛という組織にある基底膜が硬化したり、聴覚中枢に音を伝達する感覚細胞が減少・変性することで聞こえにくくなります。

影響2 視覚機能が低下する

→水晶体の加齢変化/網膜照度の低下

老眼は視力中枢が変化し、水晶体が硬化して調整力が低下するために、近方視が困難になった状態です。老眼による視力低下は40歳代から起こり始め、徐々に進行します。

高齢者特有の疾患である白内障も、水晶体の混濁が原因で起こる視力障害です。霞視やまぶしさなどの症状がみられ、さらに水晶体の黄色化によって短波長の光が吸収されて、青色.緑色の色彩が暗く見づらくなります。

また、瞳孔反応の低下などによって、高齢者は成人に比べてより明るさが必要になります。これは光に対する暗順応や明順応が減退したためで、一説では60歳代で20歳代の2倍、80歳代では4倍の光源が必要だといわれています。

緑内障は眼圧の上昇によって視神経が損傷され、視野が欠損・狭窄して視力が低下する疾患で、40歳代以上の約5%が罹患するといわれています。高齢になるにつれ、発症率も上昇します。

影響3 認知機能が低下する

→記憶力の低下/注意力・判断力の低下

「加齢が認知機能へもたらす5つの悪影響」で解説したように、記憶には記銘・保持・想起という3つの機能があり、保持される時間により、感覚記憶、短期記憶、長期記憶と呼ばれます。

加齢に伴う変化としては、特に想起と感覚記憶の低下が挙げられます。そのため、人や物の名前が出てこなくなり、会話に「それ」や「あれ」などの代名詞が多くなります。もの忘れなども起こりやすく、日常生活が不自由になったり、人間関係の悪化につながることもあります。

また、新しい場面への適応能力や情報処理能力が低下するため、話すスピードや内容を理解する速度が遅くなります。さらに、注意力や集中力が低下することで、こみいった話や長い話を聞くことが煩わしく感じられます。

影響4 言語能力が低下する

→脳血管障害での失語/義歯未装着による構音障害

脳血管障害など疾患によって失語症になる可能性があります。また、歯の欠損や義歯・入れ歯が合わないこと(あるいは未装着)で、明確な発音ができなくなることがあります。

(『ナース専科マガジン』2013年2月号から改変利用)

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