【連載】高齢者ケアの「困った!」を解決!

【摂食・嚥下障害】ケア&対応の6つのワザ

解説 外塚恵理子

筑波メディカルセンター病院 看護師長 摂食・嚥下障害看護認定看護師

ワザ1 日常ケアに機能訓練を取り入れる

口腔機能訓練を無理なく継続するためには、日常のケアの中にちょっとした機能訓練を取り入れていくとよいでしょう。

例えば、顔を拭くときに頬の筋肉をマッサージしたり、体位変換ごとに首の後ろや肩の部分をマッサージすることで、筋肉の拘縮を防ぐことができます。

また、口腔ケアの際に、歯ブラシの柄の部分で頬を内側から円を描くようにグルッと回しながら押すことも、間接訓練になります。看護師の指で口の中をマッサージしたり、耳下腺や顎下腺をマッサージすると唾液が分泌されるので、その唾液を飲み込むことも訓練になります。

さらに、話したり歌ったりすることも、発声や唇、舌の訓練になります。声を出して「パッ、パッ」と繰り返すと唇の、「タッ、タッ」と繰り返すと舌の運動になります。普段言葉の少ない高齢患者さんの場合、お気に入りの言葉が訓練の糸口になります。

例えば、「おはよう」という言葉が好きならば、スタッフ全員が「おはよう」と呼びかけるようにすると、患者さんがそれに何度も答えることになり、自然に訓練に結びつきます。

ワザ2 誤嚥予防のためにはまずは姿勢に注意する

嚥下障害のある患者さんは、誤嚥の可能性が高いので、食べる姿勢がとても大切です。

座位の場合は、足底を床に付け安定した姿勢を保持し、食事が視界に入るよう、やや前傾姿勢で食べます。ベッド上で食べる場合は、30度のリクライニング位で、頸部をやや前屈させると、咽頭と気道に角度がつき、誤嚥しにくくなります。

リクライニング位で患者さんが自分で食事をする場合は、食器の中が見えにくく、食物を口に運ぶまでの動線が長くなってしまいます。そのため、手で持ちやすく、食物を運びやすい食具(スプーン、箸など)を利用すると、スムーズに食事することができます。これは、片麻痺などのある患者さんの自力摂食訓練に際しても用いられます。

また、就寝中は口中に溜まる唾液が処理できないので、寝る姿勢にも注意が必要です。PTと相談しながら、誤嚥を防ぐ姿勢を検討します。

持ち手が工夫された食具の写真

持ち手が工夫された食具

ワザ3 口腔内の乾燥・脱水には計画的に水分摂取する

口腔内に乾燥がみられるときは、食事前に唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)をマッサージし、唾液の分泌を促すようにします。温めながら行うとより効果的です。これは、口腔ケア実施前も同様です。

口腔内の乾燥や摂食・嚥下障害による脱水の予防には、積極的な水分摂取が必要です。しかし、夜間の頻尿や失禁、あるいは介助する看護師などへの気兼ねなどで、自分で水分を制限してしまう人がいます。

患者さんの要求に合わせるだけでなく、計画を立てて、1日のスケジュールの中で水分摂取の機会を意識的に作るようにします。ベッド周辺などに吸い飲みやストロー付きコップを準備しておくなど、いつでも水分が取れるようにしておくことも有効です。

ワザ4 誤嚥性肺炎は口腔ケアと食形態の見直しで予防する

摂食・嚥下障害のある患者さんに対し、最も注意が必要なのが誤嚥性肺炎です。

その予防として有効なのが、口腔ケアです。食前、食後に行うことで誤嚥性肺炎を防ぐという調査結果も出ています。1日に1回はブラッシングを行い、舌苔は舌ブラシや歯ブラシで取ります。

口腔ケア用歯ブラシの種類(吸引器付きと、刺激の少ないスポンジ型)

口腔ケア用歯ブラシの種類(吸引器付きと、刺激の少ないスポンジ型)

そして、舌や頬、歯肉のマッサージなどの口腔機能訓練を行い、摂食・嚥下機能の回復を図ります。同時に、栄養状態を低下させないよう管理し、免疫力を高めることも大切です。

むせは誤嚥性肺炎の徴候の一つです。むせが起こる要因は、不安定な姿勢、口を閉じないままの嚥下、食形態の不適合、一口量の過多などが考えられるので、これらを改善します。

むせがひどい場合は、その時点で食事をやめ、必要時、食形態を変えるようにします。食塊がうまく作れない人にはゼリー状にしたりとろみをつけたものにし、口腔内が乾燥していて食塊の滑りが悪い人には、食物をお茶にくぐらせたり、交互嚥下といって食物と液体を交互に食べる方法を行います。

飲み込みやすいものと飲み込みにくいものも覚えておきましょう。また、食事前後で、肺の音を聴診し、気道に食物が残っていないか確認することを忘れないようにします。

飲み込みやすい食物

  1. 適度に粘り気があって冷たいもの(プリンやゼリー、ババロアなど)
  2. 液体と固体などが混ざっていない均一な状態のもの
  3. 甘いもの

飲み込みにくい食物

  1. 弾性の強いもの(餅など)
  2. 噛みにくいもの(コンニャクなど)
  3. 乾燥していて粘膜に付きやすいもの(パン・のりなど)

ワザ5 義歯は外して口腔ケアを行い、必ず義歯も洗浄する

義歯を装着している高齢患者さんは少なくありませんが、若い看護師の中には実際の義歯を見たことがない人もおり、取り扱いがよくわからないということがあります。

口腔ケアを行うときは、着脱可能な義歯は必ず外します。そして、口腔内だけでなく、義歯も流水でブラシを使って洗浄します。これは、義歯にもバイオフィルムが付着するからで、特に義歯の素材であるレンジ(吸水性のあるプラスチック)には、細菌が付きやすいからです。

義歯を洗浄する場合は、研磨剤の入っている歯磨剤は使わずに、義歯専用の洗浄剤で洗います。そして、寝るときにも義歯を外して洗浄し、専用の容器に水を入れて保管します。

義歯は衝撃に弱く、落とすと破損してしまいます。また、体の下敷きになって金属部分が変形してしまうこともあります。取り扱いには注意が必要です。

ワザ6 認知機能障害の場合は集中して食べられる環境づくりを

認知機能に障害があると、周囲に気が散って注意力が散漫になるので、ほかの人がいる場所では食事に集中できないことがあります。この場合は、カーテンを閉めたり、静かな場所に移動するなどして、食事ができるようにします。

また、失認や失行がある患者さんの場合は、食事に集中できるよう、余計な話しかけはしないようにします。

また、口の中に入れる量が判断できずに、食物をどんどん口の中に入れてしまう場合もあります。そのときは、あえて小さいスプーンを使用したり、一口大に切り分ける、小分けして少量ずつ食器に出す、などの工夫をしましょう。

また、窒息の危険があるので、食事中は必ず誰かが側について見守る必要があります。

(『ナース専科マガジン』2013年2月号から改変利用)

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