【連載】高齢者ケアの「困った!」を解決!

【高齢患者とのコミュニケーション】ケア&対応の6つのワザ

解説 田中和子

筑波メディカルセンター病院 看護師長 老人看護専門看護師


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看護師のコミュニケーションとマナー


ワザ1 話のつじつまが合わなくても追求しない

 認知症患者さんの話のつじつまが合わない場合でも、「~でつらいの」と言ったのであれば、「つらいのですね」と患者さんが発した言葉の最後を繰り返し、気持ちが伝わった、わかったということをメッセージとして伝えるようにします。

 また、内容はわからなくても、患者さんが不安そうな表情で何か言っているのであれば、「大丈夫ですよ」と繰り返すと、「ふーん、大丈夫なの」と、表情が明るくなることがあります。これは正確にすべてはわからなくても、伝わったことに関して、「そのことは伝わりましたよ」ということを伝える方法です。

ワザ2 難聴で聞こえにくい人には、目線を合わせて丁寧にゆっくりと話す

 難聴の場合、特に高音域が聞こえにくいので、低い声で一語一語、丁寧にゆっくりと話します。また、長い文章や回りくどい言い方は避け、簡潔にわかりやすい言葉で話すよう心掛けます。気を付けていても、つい専門用語を使っていることがあるので注意しましょう。


 認知機能によっては、伝える情報も、先々のことまで考えて説明したり、一度にたくさんのことを伝えるのはよくありません。早くから説明するのは、看護師自身の安心のためといえます。患者さんの理解力や反応を見ながら、伝える量を考えましょう。

 患者さんに話しかけるときは、目線を同じ高さにします。例えば、臥床している患者さんに看護師が立ったまま上から話しかけるのは、相手にとって脅威であり、威圧感を覚えます。あまり顔を近づけすぎない程度にかがむなどして、患者さんの耳元で話すようにします。看護師がマスクをしている場合はなるべく外します。

 ゆっくりと話すことは、看護師も落ち着かせる効果があります。患者さんの肩や背中、腕に手を添えながら、「ちょっとよろしいですか」と改まった雰囲気をつくると、患者さんの意識がより集中されやすくなります。

ワザ3 聞こえやすい環境、見やすい環境かどうかを確認する

 機能的に聞こえにくいだけでなく、集中できない環境によって説明している内容が理解できないこともあります。例えば看護師と会話していて、ベッドサイドのテレビ画面をチラチラ見ているようであれば、話に集中することが難しくなります。

 その場合は、テレビを消してもらうなど、まずは聞く環境をつくりましょう。人通りが多く、にぎやかな場所も話に集中しにくい環境です。特に補聴器を使用している場合は、周囲の雑音も拾ってしまうので、静かな環境が必要です。

 聴力の低下を補うために、絵や図、文字などを見せて説明するといった工夫も大事ですが、肝心の視力が低下していては、伝えたいことが伝わりません。高齢者のほとんどは老眼なので、文字や絵などを見せて説明するときは、室内の明るさにも十分注意が必要です。

ワザ4 失語のある患者さんには、コミュニケーションレベルに合わせた対応を

 脳血管障害の後遺症による失語症に、絵のコミュニケーションツールを用いたり、気管切開で発語できない患者さんとのコミュニケーションには、文字盤を使用します。

文字のコミュニケーションツール例
図 文字のコミュニケーションツール例

絵のコミュニケーションツール例
図 絵のコミュニケーションツール例

 その際、コミュニケーションの方法がスタッフによって違うのは、患者さんにとってとてもストレスになります。STに協力してもらいながら、統一した方法を決めておきましょう。

 ただし、常に文字盤や絵を介してのコミュニケーションは、時に患者さんにイライラやもどかしさを感じさせることもあります。日常生活の中では、患者さんの様子を見て看護師が察することが大切です。

 例えば、食事の後にモゾモゾしていたら、「トイレに行きたい」サインかもしれません。患者さんの生活リズムを知り、さらに日ごろのカンファレンスで得られる他職種からの情報なども活かしましょう。

ワザ5 見当識障害のある患者さんに障害の度合いを試すような質問はしない

 見当識障害のある患者さんと会話する場合は、患者さんがどのように理解しているかを確認しながら、理解力に応じた話し方をすることが大切です。「ここは病院ですが」「~をしていますね」など、今の場所や状況をさりげなく入れながら話すとよいでしょう。「ここはどこ?」「今日は何月何日?」といった質問は、患者さんに脅威を感じさせます。

ワザ6 記憶障害が疑われる患者さんには記憶をつなぐ工夫をする

 何度も同じことを聞くのは、記憶に障害のある可能性があります。患者さんはその中で次々と説明されたり、検査が進んでいくことに不安を感じているはずです。こうした患者さんには、記憶をつなぐ工夫が大切です。

 ベッドサイドにノートを置いておき、そこに説明したことや、患者さんが理解できたことを書いておくとよいでしょう。整理した内容を患者さんに見せることで、思い出すきっかけになることもありますし、そのノートを受け持ちの看護師や他職種が見ることで情報共有もできます。

 病室という知らない環境の中に身をおくことは、環境適応能力が低下した高齢者にとって大変なストレスです。そのような状況下では、たとえ記憶障害がない患者さんでも、判断力や理解力が普段より落ちて当然といえます。

言葉かけのポイント

 1. 患者さんの目の高さと自分の視線を合わせて、患者さんの目を見ながら話す。難聴がある場合は、顔を近づけすぎない程度に患者さんの耳元で話す
 2. 「おじいちゃん」「おばあちゃん」ではなく、「○○さん」と患者さんの苗字あるいは名前で呼びかける。会話には敬語を使う
 3. 専門用語は避け、なるべくわかりやすい言葉で、具体的に話す。短い文章で一語一語ゆっくりと丁寧に、聞きとりやすい低めの声で話しかける
 4. 「これからお風呂に入りますが、よろしいですか?」と、ケアを行う前に何をするのか声をかけてから行うようにする
 5. 患者さんが発した言葉の最後を繰り返す、うなずく、相づちを打つなど、患者さんの話が伝わっている安心感をつくる
 6. 直接間違いを指摘したり、訂正することはせず、「○○かもしれませんよ」とさりげなく一緒に考える間をとる
 7. 話が聞き取れるような静かな環境や、安心して会話ができる環境を整える

(『ナース専科マガジン』2013年2月号から改変利用)

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