【連載】安全・確実に実施する!与薬のポイント

第2回 投与方法と薬物血中濃度の関係

解説 近藤留美子

北里大学病院 薬剤部課長 薬剤師

解説 荒井有美

北里大学病院 医療の質・安全推進室 医療安全管理者 看護師・薬剤師

薬が体内でどのように作用し、どのように変化するのか、その基本を知ることで、患者さんの状態観察や服薬支援を効果的に行うことができます。まずは、薬の基礎知識のおさらいから始めましょう。


薬の効果を左右する「3つの領域」

「血中濃度」とは、ある成分が血液中に含まれる量を示すもの。薬物の血中濃度の推移をみることは、薬効の発現・経過を予測するためにも重要です。

薬物はある一定の濃度に達して、初めて薬効が出現します。それが「有効域」です。血中濃度は「無効域」「有効域」「中毒域」という3つの領域に分けられます(下図)。薬効が発現するのは「有効域」で、その域まで達しないのが「無効域」、有効域以上に濃度が高過ぎて、有害事象が起こりやすいのが「中毒域」です。

薬の効果を左右する「3つの領域」、グラフ

血中濃度の推移で重要となるのが「有効域」で、「治療域」とも呼ばれ、薬ごとに決まっています。

静脈注射では、投与直後に最高血中濃度になります。有効域の幅が広く、最高血中濃度が中毒域に達していなければ問題はありません。

しかし、有効域が狭く、しかも常用量でも急速静注すると、最高血中濃度が有効域を超え中毒域に入ってしまうような薬では、有害事象が生じる可能性が高くなってしまいます(下図)。

薬の効果を左右する「3つの領域」、グラフ②

有効域の幅が狭い場合は、投与速度をゆっくり(投与時間2分間)、あるいは極めてゆっくり(投与時間5分間)静脈内に注射することで、同じ用量でも最高血中濃度の上昇が穏やかになり、中毒域には入りにくくなります。点滴静注であれば、さらに安全に有効域を維持する時間も長くなります。

薬の効果を左右する「3つの領域」、グラフ③

血中濃度と投与方法・用量の関係性を考えよう

このように血中濃度の推移と考え合わせると、どのような投与方法が適切であるかイメージできるようになります。最高血中濃度に到達する時間は、下表のようになります。

血中濃度と投与方法・用量の関係性

また、血中濃度の有効域を念頭におけば、薬の量についてもその妥当性をチェックすることができます。

例えば、薬の投与量が少ないと思われるケースで増量を考えた場合、最高血中濃度をチェックし、どの程度の増量であれば有効域内で推移できるかをみていきます。

基本的に薬用量を2倍にすると投与直後の最高血中濃度も約2倍になります。投与量を2倍にするということは血中濃度がとても高くなるため、安易な増量は危険です。

POINT

例えば、医師から静脈注射の増量の口頭指示が出された際、もし「3アンプル追加」と聞き取ったとしても、「半アンプルの聞き間違いかもしれない」と気づくことができます。なぜなら、注射薬は基本的に1アンプルが通常量です。3アンプル追加したら間違いなく中毒域に入ってしまうものが多くあります。

このように、用量と血中濃度の推移についての基本的な知識があれば、与薬ミスを未然に防ぐこともできるようになるでしょう。

(『ナース専科マガジン』2013年12月増刊号「一冊まるごと薬のトリセツ」から改変利用)

次回は「患者さんへの薬の説明ポイント」について解説します。

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