【連載】高齢者ケアの「困った!」を解決!

【高齢者への服薬指導】加齢がもたらす「6つの悪影響」

解説 田中久美

筑波メディカルセンター病院 看護師長 老人看護専門看護師

治療をスムーズに進めるため、あるいは安全・安楽に支援するために、高齢者特有の症状や機能低下について解説します。今回は、「加齢がもたらす悪影響」です。


影響1 消化管の機能が低下する

→内服薬(能動輸送)の吸収率低下

消化液の分泌、消化管の運動量・血流量などは、低下・減弱します。これに伴い、十二指腸や小腸の消化管で吸収される内服薬──能動輸送(濃度の勾配に逆らって輸送される。エネルギーや結び付く担体が必要)される鉄剤やビタミン剤などは、吸収率が低下します。

しかし、薬物の多くは受動拡散(濃度の高いほうから低いほうへ移動する。エネルギーは不要)なので、影響は少ないとされています。

経皮剤や注射薬については、組織透過性と末梢血流の低下により、若年の患者さんに比べて吸収率が低下することもあります。

影響2 水分や血漿タンパクが減少する

→水溶性薬物の血中濃度上昇/薬効の上昇

体内水分量が減少するため、水溶性薬物の血中濃度は上昇しやすくなります。また、同時に血漿タンパク(アルブミン)が減少し、タンパク結合率の高い薬物は遊離型薬物(細胞内に移動して薬効を発現させる)が増加し、薬効が強く出やすくなります。

ジゴキシンなど昇圧薬やフェニトインなどの抗てんかん薬、ワルファリンカリウムなどの抗血栓薬がこれにあたります。

影響3 脂肪量が増加する

→脂溶性薬物の血中濃度低下/脂溶性薬物の半減期延長

体内脂肪量は加齢によって増加します。そのため、脂肪組織と結合する脂溶性薬物は、血中濃度が低下するものの、蓄積効果が上がり、半減期が長くなります。ジアゼパムなどの抗不安薬等があります。

影響4 肝臓の細胞数・血流量が減少する

→薬物代謝の低下

消化管で吸収された薬物は、肝臓で代謝されます。肝臓は、加齢によって肝細胞数が減少、肝血流量が低下、肝細胞内にある代謝酵素が減少するため、薬物代謝機能が低下します。

そのため、プロプラノロールなどの降圧薬やロキソプロフェンナトリウムなどの消炎・鎮痛薬は、肝臓での代謝率が高いことから、血中濃度が上昇し、半減期も長くなりがちです。

影響5 腎機能が低下する

→腎排泄型薬物の半減期延長

薬剤は、主に腎臓から排泄されます。そのため、腎血流量や糸球体濾過量といった腎機能が低下することで、ジゴキシンなどの昇圧薬やペニシリン系などの抗菌薬といった腎排泄型薬物の半減期が長くなります。

影響6 恒常性の維持機能が低下する

→薬物の効き目(薬力学)の上昇

加齢による恒常性の維持機能が低下するため、若年の患者さんに比べて、血中濃度は同じであっても、薬物の効き目(薬力学)が強く現れがちです。

特に、β刺激薬など血管拡張薬、β遮断薬などの降圧薬、抗コリン薬などの気管支拡張薬、ベンゾジアゼピン系薬などの中枢神経抑制薬への感受性亢進が知られています。

(『ナース専科マガジン』2013年2月号から改変利用)

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