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【連載】輸液ケアを極める!

【不感蒸泄・尿・便】 人が1日に喪失する電解質と水の量

解説 岡元 和文

信州大学医学部救急集中治療医学講座 教授 信州大学医学部附属病院高度救命救急センター センター長

監修 岡元 和文

信州大学医学部救急集中治療医学講座 教授 信州大学医学部附属病院高度救命救急センター センター長

適切な輸液ケアを行う上での基礎となる、1日にどれだけの水分と電解質の喪失量について解説します。


【目次】


1日の水分喪失量は?

体内の水分や電解質は、尿と不感蒸泄と便によって常に失われており、失われるものが補充されなければ、生命を維持することはできません。
そのため、体から何がどのくらい失われるのか、正常の状態を知っておくことは重要です。

まずは、水の出納について整理してみましょう。

成人の場合、尿によって失われる水分は1mL/kg/時ほどです(以下、kgは体重あたりを表します)。

不感蒸泄としては、皮膚と呼気から15mL/kg/日の水が喪失されます。
不感蒸泄量は気温などに影響を受けて増減しますが、その分は許容範囲ととらえて問題ありません。

さらに、便からは2mL/kg/日くらいの水が失われると考えられます。

体重50kgの人で計算すると、

  1. 尿から1200mL/日
  2. 不感蒸泄から750mL/日
  3. 便から100mL/日

合計するとおよそ2000mL/日の水が失われることになります。

体重で割ると40mL/kg/日となり、これが成人の1日の水分喪失量の目安になります。

1日の電解質の喪失量は?

では、電解質は何がどのくらい失われるのでしょうか。

  1. ナトリウム(Na)は2mEq/kg/日
  2. カリウム(K)は1mEq/kg/日
  3. クロール(Cl)は2mEq/kg/日

が失われるといわれています(図)。

1日の水・電解質の喪失量(成人)

図 1日の水・電解質の喪失量(成人)

ちなみにNa喪失量は60~150mEq/kg/日などとする文献もありますし、電解質はこれら以外にもさまざまなものがあります。

こうした覚えにくい数値に混乱するよりも、最も重要なものを簡単な数字で確実に覚えることのほうが、輸液ケアの基本をつかむ上では重要です。

大量の水分出納を行う小児は脱水になりやすい

小児は新陳代謝が激しいため、細胞は水や栄養素などをたくさん必要とし、老廃物も多く出ます。
従って、体内の水分量も尿量も多いのが特徴です。

尿は、1週~2歳なら3mL/kg/時ほどが排泄されます。

体重あたりの尿量は成人の3倍にも達します。

不感蒸泄量は25~30mL/kg/日ほどで、成人の2倍近くになります。

不感蒸泄量が成人より多いのは、激しい新陳代謝によって発生する多くの熱を冷却する必要があり、加えて、単位体重あたりの体表面積も大きいからです。

便に含まれる水分については明確な文献はありませんが、成人と同じ程度の2mL/kg/日と考えて差し支えありません。

従って、1歳で体重10kgの子どもの1日の水分喪失量は、720+250+20≒1000mLになります。

まずは、この基本を覚えておくことが大切です。

その上で、疾患ごとにどの電解質あるいは水分に異常が起きやすいのかを知れば、輸液ケアでのアセスメントのポイントがよくわかるようになるでしょう。

不感蒸泄量とは

不感蒸泄は、皮膚や呼吸における水分蒸発が主であり、目に見えないもので直接計測することはできません。
しかし、計算式によっておよその不感蒸泄量を推定できます。

成人では15mL/kg/日の水分が不感蒸泄として失われています。

例えば、Aさんの体重が75kgであれば、不感蒸泄量は、

15mL×75kg=1125mL/日となります。

発熱がある場合の不感蒸泄量

発熱がある場合は、体温が1℃上昇するごとに15%程度増加します。

Aさんの平熱を36.3℃として、38.3℃だった場合、発熱による不感蒸泄量を追加します。

計算式は1125mL×15%×(38.3℃-36.3℃)=337.5mL/日となり、

Aさんは不感蒸泄量として、1125mL+337.5mL=1462.5mLの水分を失います。

室温による不感蒸泄量の変化

室温が30℃以上の場合、1℃上がるごとに15~20%ほど増加します。

ちなみに、発汗は不感蒸泄ではありませんが、項目としては不感蒸泄に含めてよいでしょう。

発汗と不感蒸泄による合計水分喪失量は、発汗の程度と室温に応じて推測します。

目安としては、

  1. 軽度(発熱38℃以上で軽度の発汗があり、室温28~32℃の場合):1000~1500mL/日
  2. 中等度(中等度の発汗の反復または連続で、室温32℃以上の場合):1000~3000mL/日
  3. 高度(高度の発汗で、室温が著しく高い場合):3000mL/日以上

となります。

(『ナース専科マガジン』2012年4月号より転載)

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