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【連載】基礎からまなぶ血液ガス

第11回 PaO2の異常をみる

解説 南雲秀子

湘南厚木病院 看護師長/米国呼吸療法士(RRT) / 保健医療学修士(MHSc) 日本呼吸ケアネットワーク 理事

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血液ガス分析から得たい情報の一つである「酸素化」。

効率的なエネルギー代謝に欠かせない酸素がうまく体内に取り込まれているかどうかは、さまざまな疾患に影響を及ぼすため、きちんと評価できるようにすることが大切です。


PaO2が低い場合、低酸素症状に注意

PaO2が低くなると、それに伴いSaO2も低下します。

低酸素が疑われる場合、血液ガスを測定していればPaO2を、血液ガスデータがなければSpO2をみます。

一般的に病棟では「低酸素かな」と思ってもすぐに血液ガスを検査することはほとんどありません。

多くの場合、パルスオキシメーターによってSpO2を測定することになります。そのため、以下はSpO2として解説します。

1 患者さんの様子を観察する

SpO2の正常値は95~97%ですが、それが93%以下になると、顔色が悪い、調子が悪いなど患者さんの様子から、見た目でもその低下を推察することができます。

低酸素が疑われる数値が示されたら、まずは呼吸回数、脈拍数などのバイタルサイン、顔色や疼痛の有無などの一般状態を観察して、患者さんに低酸素状態の徴候があるかどうかを確認します。

SpO2値以外に明らかに低酸素状態を示すサインがあれば、低酸素状態にあるとして対応します。

低酸素状態になるのは、

  1. 酸素を取り込むための呼吸
  2. 酸素を運ぶ役割の血液
  3. 血液を循環させるポンプの役割をもつ心臓

このどれかに異常があると考えられます。

従って、低酸素の徴候はこの3つに現れます。

主な症状は、

  1. 頻呼吸
  2. 呼吸困難
  3. 脈拍・血圧上昇
  4. 不整脈
  5. 意識障害
  6. チアノーゼ

など。

また呼吸は、

  1. 呼吸回数が増加していないか
  2. 胸郭の動きは正常か
  3. 呼吸音に異常はないか

をアセスメントします。

低酸素状態の場合には、緊急を要することもあるので、すぐに医師やほかのスタッフを呼び、酸素療法や血液ガス分析を行うなどの先の処置に備えます。

2 データの信頼性を確認する

SpO2値が低くても、患者さんの顔色が良く、脈拍も速くなく、呼吸もゆっくりで、低酸素状態とは考えられにくいこともあります。

その場合は、出ているデータの信頼性に問題がないかを疑い、低く出ているSpO2値が正しいかどうかの評価をします。

パルスオキシメーターは正しく作動していますか?

パルスオキシメーターは、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの赤色光と赤外光の吸光度の違いを利用して、酸素飽和度を測定します。

従って、センサーを装着している部位の脈が感知できないと、その値の信頼性は低くなってしまいます。

特に、指先に装着する場合は、末梢血管の収縮、爪の変形・肥厚などがあると、正確なデータを得ることができず、誤差を生じることになります。

脈拍を感知しているかどうかの表示は、使用している器具の種類によって異なります。

簡易タイプでは、脈拍が同期しているか、脈拍同期を示すマークの点滅が弱くないかをみます。

波形が表示されるタイプでは、高低差のある波形がみられるかを確認します。

患者さんが体を動かしていませんか?

そのほか、SpO2に誤差が生じる要因として、患者さんの体動があります。脈波をきちんと感知していても、患者さんが動き回っていたり、指先を動かしていたりすると、数値が正しく出ないことがあります。

じっとしていられない人、けいれんや震えのある人、イライラしている人などは正確な値を得にくいので、必要があるときには、血液ガス分析を行います。

患者さんに貧血はありませんか?

また、ヘモグロビンの飽和度に依存しているパルスオキシメーターでは、患者さんのもともとのヘモグロビンがどのような値であるのかを知っておく必要があります。

貧血の患者さんは、O2を運搬するヘモグロビンの量が少ないため、あまり正確な値が得られません。

なかでも貧血が進んだ患者さんでは、常に高めのSpO2値を示します。

しかし実際は、ヘモグロビンの量が少ないため患者さんは常に息苦しく、呼吸回数が多く、脈拍も速いといった低酸素状態を示すことがあります。

この場合、酸素療法を行っても血液中に含まれるO2の値は改善しないため、自覚症状は変わらないことが多いでしょう。

根本的な治療は貧血を正すことです。

そこで患者さんのヘモグロビン値を把握しておくことが大切です。

SpO2以外に低酸素状態を示すサインがみられない場合は、患者さんの状況にもよりますが、慌てずにしばらく時間を置いてから再測定します。

再測定の場合には、血流があり脈波を拾えそうな部位を探してパルスオキシメーターを装着し、正確な数値を得ることができるようにします。

低酸素状態の患者さんの状態はこうなっている

1 肺胞低換気状態

何らかの原因で、吸ったり吐いたりする力が弱くなり、1分間に肺を出入りする空気の量が相対的に少なくなっている状態です。

この状態を呈すると体内に取り入れることのできるO2の量が少ないために、SpO2が低下します。

この場合、多くの患者さんはCO2の排泄も同時に障害され、PaCO2が高値になっています。

2 換気血流比の不均衡(V/Qミスマッチ)

肺胞毛細血管の血流量が多い部分の肺胞換気が不良になっています。

気管支れん縮(喘息発作)や肺炎、肺水腫、COPD、気管支拡張症などが原因です。

一部の肺胞が十分換気されない状態になり、そこを流れる静脈血が十分酸素化されないために、全体として動脈血の酸素分圧が低下します。

換気の悪い肺胞が肺の中のあちこちに点在しているイメージです。

3 シャントがある

静脈血が酸素化されないまま動脈血と混ざり合う現象をシャントといいます。

解剖学的原因(先天性のファロー四徴症など)と、病的原因(痰による気管の閉塞や、大葉性肺炎などで肺の一部の換気が全くされないため、その部分を通る肺毛細血管を流れる静脈血が酸素化されずにそのまま左心房に流れ込む状態)があります。

肺動脈と肺静脈の間の一部が、ガス交換できないままつながってしまうことで起こります。

4 ガス交換障害がある

肺胞と毛細血管の間には、肺胞毛細血管膜という膜があり、O2とCO2はその膜を通してガス交換されています。

この膜が何らかの原因で厚みが増すと、ガス交換に時間がかかるようになり、結果的に低酸素血症になります。

原因は、肺水腫で分泌物が溜まる、間質性肺炎で肺胞毛細血管膜(間質ともいう)に炎症が起こって厚くなる、ARDSやALIなど急性の炎症で肺胞毛細血管膜が厚くなる、などが考えられます。

【シャントには2種類ある】

  1. 解剖学的シャント

シャントは健康な人にも存在します。それが解剖学的シャントです。解剖学的シャントは、心拍出量の3%程度あり、SaO2の正常値が100%ではなく97%であるのはそのためです。3%のうち、心臓を栄養する冠動脈に1%、気管支や気管を栄養する気管支動脈に1%とされ、そのほかに血中に含まれる異常なヘモグロビンによる1%がおおよその量とされています。

  1. 病的シャント

気管支に何かが詰まったり、肺胞がつぶれたりして、酸素を受け取れない血液が混ざることを病的シャントといいます。 動脈に流れるシャントの比率をシャント率といいますが、このシャント率が50%になるとPaO2は改善しないといわれています。こういった状態になると、非常に強い低酸素症状を起こす可能性があることを念頭に置いておきましょう。

PaO2値が高い!

一般的に、PaO2値が高くても、特に問題とはなりません。

SaO2の最高値は100%で、そこからどんなに酸素を投与しても変化しないためです。

ただし、

  1. 慢性呼吸不全の患者さん
  2. PaCO2やHCO3が異常に高い人

は、高いPaO2は大きな問題となるので、みていくことが必要です。

通常、呼吸中枢は、PaCO2の上昇に伴い呼吸回数を増やして換気を促し、バランスを保ちます。

しかし、PaCO2が常に高い場合は、PaCO2値での呼吸コントロールができないため、PaO2値で呼吸をコントロールしています。

つまり、PaO2が低い──酸素が少ないから呼吸をする、という状態になっています。

従って、PaO2値が高くなると呼吸刺激が減少してしまい、最悪の場合には呼吸停止となってしまうのです。

  1. 慢性呼吸不全であるかどうか
  2. その人の通常のPaCO2やH3の値はどのくらいか

を確認する必要があります。

次ページは「PaO2が高い患者さんの状態」について解説します。