【連載】IN/OUTバランス わかるとこんなにイイコトが!

出血のメカニズムとケアのポイント

解説 澤野 宏隆

大阪府済生会千里病院 千里救命救急センター 救急部部長兼ICU室長

解説 半崎 隼人

大阪府済生会中津病院 集中ケア認定看護師

IN/OUTバランスが崩れると、さまざまな症候があらわれ、何らかの治療が必要になってきます。

IN/OUTバランスと関係の深い病態である出血への理解を深め、的確なケアに結びつけましょう。


出血でショックになるとき

出血でもっとも注意が必要なのは、ショックになる可能性がある大量出血です。

目に見える出血

頭皮外傷や、動脈損傷の場合などに大量出血の恐れがあります。この場合、何をさておきすぐに止血処置を行います。

目に見えない出血

胸腔内・腹腔内・後腹膜腹腔内などがあり、これらも大量出血を起こす恐れがあります。また、長管骨の骨折でもかなり出血する場合があり、大腿骨では、片足だけで約1L出血するとされています。

出血=ショックではありませんが、止血できなければ当然ショックになります。つまり、ショックにならないように、早期から出血への対処をしなければならないということです。

圧迫が可能な部位からの出血に対しては、まず圧迫止血を行います。胸腔内出血の場合、開胸して止血することも考えなければなりません。出血している臓器の出血源を止めるためには、結局、原因の検索が必須ですが、出血源の確定は、正直、難しいものです。

血圧が下がってからでは遅い

ショックが起きると血圧が下がりますが、そうなってからでは間に合いません。早期から変化する生体徴候を見逃してはなりません。

心拍数が上がって、末梢血管が締まり、血管抵抗が増大して、末梢が冷たくなってきます。さらに、冷や汗が出てきて、意識状態も低下します。その後で血圧が低下してきます。

血圧が下がるということは、もうショックは起きてしまっているので、緊急対応をしなければ生命の危機に直結します。ですから、このような身体の徴候を見たら、すぐに治療を開始しなければなりません。

出血時の治療

出血やショックで一番にすべきことは、出血源の止血処置です。その間にできることとして、通常は細胞外液を輸液します。輸液によって循環血液量が増加してもショックを離脱できない場合は、輸血も行います。

ただ、輸液や輸血はあくまでも対処療法であり、根本治療ではありません。たとえいったん輸液や輸血で落ち着いたとしても、原因の検索と治療を行わなければ、またショックになります。

消化管出血による吐血・下血は、救急外来でしばしば遭遇する病態です。

消化管出血による吐血

食道・胃・十二指腸の上部消化管を疑い、検査を始めます。

消化管出血による下血

便の性状が黒いタール便なら上部消化管からの出血で、赤い血液の混じった便なら下部消化管からの出血と推測できます。すぐに内視鏡検査を行い、原因を突き止めますが、ときとして血管造影検査が必要な場合もあります。

救命救急センターならではの困難

救命救急センターに搬送されてくる患者さんの多くは、自分で「ここをケガしています」と言える状態ではありません。また、多発外傷の場合、頭部、胸部、腹部、四肢の骨折など、いろいろな合わせ技になっていて、どの出血が最も重症か、どこから治療していけばいいのか、非常に難しいです。現場では、どうしても目立つ外出血に目がいきますが、実はもっと重大な出血が体内で起こっているということもよくあります。

出血のケアのポイント

【ショックの5P】

出血やショックのときに、よく知られているのが、ショックの諸症状を表す「ショックの5P(5徴候)」です。

  1. 蒼白(Pallor)
  2. 虚脱(Prostration)
  3. 冷汗(Perspiration)
  4. 脈拍不触(Pulselessness)
  5. 呼吸不全(Pulmonary insufficiency)

モニターチェックができない場合、患者さんに触ったときに、じとっとした冷汗を感じたら、ショックになる徴候なので、医師にすぐ報告する必要があります。

例えば、手術後、ドレーンから排液はないけど、お腹からじわじわ出ているのではないかと思うとき、目に見えない出血を判断するには、フィジカル・アセスメントかモニターしかありません。

脈が速くなってきて、「あれ、おかしいな」と思って触ってみるとじとっとして冷汗がある。やはりこれはおかしい、ただ、血圧はまだ落ちていない。こうして「ショックの5P」をみていくことが大切です。

【出血時の観察――フィジカル・アセスメント】

ショックの5Pに加えて、さまざまな観察ポイントがあります。出血の場合、ヘモグロビンも落ちているので、眼球結膜を見ます。真っ白になっていると、高度の出血と判断できます。

CRT(Capillaryrefilling time:毛細血管再充満時間)基準も使います。爪のピンクの部分を、ちょっと押さえたら白くなります。

手を離して2秒以内に戻る場合は、出血はなく循環バランスはある程度保たれている状態ですが、ピンク色に戻るまでに3秒以上かかる場合は、ショックのおそれがあります。

出血時の観察イメージイラスト

出血の患者さんには、このようなフィジカル・アセスメントを使って、危機予測しながら対応することが重要です。一見、普通に話していても、急に状態が悪くなる人もいるので、このようなリスク評価ができるかどうかは大切です。

もちろん、「なんかおかしい」という直感もありますが、その直感を観察して根拠をもとに報告できるかどうかが、次の看護につながるのだと思います。

【不必要な酸素消費量を与えるな】

出血時は、いかに止血をするかが最優先ですが、加えて、私が認定看護師の研修を受けたとき、強く言われたこととして、「不必要な酸素消費量を与えるな」ということがあります。

それは、人の体を動かせば、酸素消費量は増加するので、ICUや重症患者さんの不必要な酸素消費量を増やすべきではないという意味です。

つまり、ショックはもちろん、電解質のIN/OUTも理解した上で、やる・やらないを考えてケアをするということです。看護師の一挙一動が患者さんのリスクとなることがあるのです。

例えば、出血で衣服や体がかなり汚れている患者さんがいて、ご家族も来られるし、拭いたり、着替えをさせてあげたいということがありました。

しかし、動かせば酸素を使うし、出血リスクもあります。ならば、どうしたかというと、体を拭いたり着替えは後回しにして、ご家族が来られたときは布団をかけてとりあえず出血の汚れがわからないようにしました。

このように普段当然のようにやっていることも、「今それをやるべきか」を常に考えてケアすることが求められます。

(『ナース専科マガジン』2014年8月号から改変引用)

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