【連載】IN/OUTバランス わかるとこんなにイイコトが!

IN/OUTバランスがわかると【心不全】がわかる!

解説 半崎 隼人

大阪府済生会中津病院 集中ケア認定看護師

解説 澤野 宏隆

大阪府済生会千里病院 千里救命救急センター 救急部部長兼ICU室長

IN/OUTバランスに関係の深い疾患の診断や治療について、輸液の側面からみていきましょう。
疾患と輸液の関係を具体的にみることによって、IN/OUTバランスについてさらに理解を深めましょう。


▼心不全の看護について、まとめて読むならコチラ
心不全の看護|原因、種類、診断、治療


心不全の種類と病態

 心臓は、全身に血液を送り出して受け取るポンプの役割を担っています。全身に必要な血液を十分に送れなくなった状態を心不全といいます。

 左心室や右心室の働きが低下すると、さまざまな症状が表れ(下表)、最終的にはほとんど左右両方の心室の機能が低下し、両心不全となっていきます。

左心不全と右心不全説明表
表 左心不全と右心不全

 心不全になると、心筋の収縮力が低下し、心拍出量も減少するため、ポンプ機能が低下します。静脈血が心臓に戻れず、静脈内に留まることによって、静脈圧が上昇し、末梢の静水圧(静止した水中で働く圧力)も上昇します。静水圧が膠質浸透圧(水を血管内に保とうとする力)を超えると、血漿から間質へ水が移動し、間質液が増え、体液過剰となってしまいます。

循環と心不全のメカニズム説明図
図 循環と心不全のメカニズム

看護師が知っておきたい 心不全の診断と治療

 心不全の原因は上表の通りですが、治療やケアにあたっては、「何が原因で心不全となっているのか」をみていくことが重要となります。

[診断]

 心不全の診断は、基本的な症状観察や診察に加えて、胸部X線や血液検査、心電図検査、心エコーによって行われます。疾患によっては、心臓カテーテル検査を行います。

 循環動態を評価するためには、侵襲の少ないPiCCORカテーテルまたはスワンガンツカテーテル(肺動脈カテーテル)が必要です。また、血液ガス分析により、酸素化の状態やアシドーシス・アルカローシスのチェックを行います。

 あわせて、乳酸値も測定して、循環不全の徴候も確認します。さらに、心臓が悪い人は腎不全も合併しやすいので、腎機能や電解質のチェックも重要になってきます。

[治療]

 急性心筋梗塞の場合、緊急のカテーテル治療であるPCI(Percutaneous Coronary Intervention;経皮的冠動脈インターベンション)がよく行われます。PCIで治療が困難なら、冠動脈バイパス手術も検討します。

 もちろん、薬物療法として、利尿剤による水分調節、血管拡張薬による心臓負荷の軽減のほか、必要に応じて、酸素投与やNPPV(非侵襲的陽圧換気)などを用います。

心不全の看護のポイント

 心不全となった場合、早く治療すればするほど心臓は回復します。心不全の患者さんが「何によって心不全になっているのか」を考えながらケアしていくことが重要です。単純に、心臓の動きが悪い人が水を飲み過ぎても心不全になります。

 心不全の症状として、肺水腫で肺胞内に水があふれんばかりになっている場合、呼吸困難が起きます。これは、過剰な水によって酸素を取り入れる肺の面積が少なくなっているため起こります。

 しかし、上半身を起こせば、水は下に行き、肺上部の換気面積が広くなり、呼吸がラクになります。「こうするとラクですよ」と声をかけて、起座呼吸の体位を取ってあげれば、つらさが和らぎます。

イメージイラスト

 患者さんが一番つらいとき、指導によって得られた理解は、必ず後々の治療や管理の継続につながります。救急を脱し、治療が進み、内服コントロールや食事など、在宅に向けた生活指導が大切になるとき、この信頼関係がきっと役に立つはずです。

 また、心不全では、病態や原因によってさまざまな薬剤を使用します。これらのなかには、配合禁忌のものや電解質異常を引き起こす薬剤もあるので注意が必要です。心不全の病態、原因、さらに電解質の特徴なども理解したうえで、看護に当たることが求められます。

 例えば、急性期の心不全では、血管拡張と利尿を兼ねたカルペリチド(ハンプ®)の点滴をしばしば行います。この薬剤は、混合すると配合変化によりルートが詰まりやすくなることがあるため、シリンジポンプを使い、1時間あたり1mlくらいの微量で、生理食塩水やソリタ-T1を1時間あたり10mlキープで流したりします。

 心不全では抗凝固薬のヘパリンもよく使われますが、カルペリチドと混ざると結晶ができ、薬の効果がなくなってしまいます。このような薬剤の特性を知ったうえで、点滴のルートを確保していくことも大切です。

 心不全においても、電解質の補正はよく行われます。例えば、利尿剤を投与すると血清カリウム値が下がり、不整脈が増え、心臓に負荷を与えてしまいます。カリウム値を上げるための輸液が必要ですが、カリウムは生理食塩水で必ず希釈しましょう。カリウムを希釈せずに投与すると、細胞内外のカリウムの比率で決定される心臓の静止膜電位が小さくなってしまい、心停止に至る可能性があります。

心不全における輸液療法

 心不全では、相対的に体内の水分量が多いことから、OUTバランスになるような治療を行います。しかし、浮腫を合併しているときは血管内の循環血液量が減っている場合があり、輸液を必要とするケースは意外に多いといえます。循環血液量を保たなければ、臓器障害を来してショックになるため、たとえ心収縮不全があっても、輸液は必要です。

 基本的に、初めは細胞外液で開始し、必要であれば維持液に替えていきます。しかし、輸液が過剰になれば、肺うっ血や浮腫を増悪させるため、量の適切な判断や管理がポイントになります。

 また、循環不全の改善には、昇圧剤・強心剤も使います。心収縮や血圧を上げるか、輸液だけがいいのか、もしくはどちらも必要なのか、これらを評価しながら状態観察を行い、治療を行っていきます。

(『ナース専科マガジン』2014年8月号から改変引用)

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