【連載】IN/OUTバランス わかるとこんなにイイコトが!

IN/OUTバランスがわかると【血液ガス】がわかる!

解説 半崎 隼人

大阪府済生会中津病院 集中ケア認定看護師

解説 澤野 宏隆

大阪府済生会千里病院 千里救命救急センター 救急部部長兼ICU室長

IN/OUTバランスに関係の深い疾患の診断や治療について、輸液の側面からみていきましょう。

疾患と輸液の関係を具体的にみることによって、IN/OUTバランスについてさらに理解を深めましょう。


アシドーシス・アルカローシス 判断の手順

手順1 pHをチェック

血液ガス検査は、血中のガス交換の状態や、体内の酸塩基平衡などを調べる検査です(表1)。

血液ガスの基本的な測定項目と参考値

表1 血液ガスの基本的な測定項目と参考値

通常、人体の恒常性により、血液のpHは7.40±0.05に保たれていますが、呼吸不全や腎不全などによって酸塩基平衡が崩れることがあります。血液ガス分析では、まずこのpHをチェックします。

pHが7.35以下と酸性に傾いていればアシデミア(酸血症)、7.45以上とアルカリ性に傾いていればアルカレミア(アルカリ血症)となります(表2)。

アシデミアとアルカレミア

表2 アシデミアとアルカレミア

手順2 アシドーシス、アルカローシスをチェック

次に、体液の酸塩基平衡を酸性にする状態(アシドーシス)、アルカリ性にする状態(アルカローシス)の存在をチェックします。

アシドーシスには、HCO3-が減少して起こる代謝性アシドーシスと、CO2が増加して起こる呼吸性アシドーシスがあります。

一方、アルカローシスにも、HCO3-が増加して起こる代謝性アルカローシスと、CO2が減少して起こる呼吸性アルカローシスがあります。

手順3 アニオンギャップ(AG)を計算

次に、アニオンギャップ(AG)を計算します。AGは、「測定された」陽イオンと「測定された」陰イオンとの差です。

AGの増大は、不揮発酸(乳酸、ケトン体、アルコールなど)の蓄積があるときに認められます。

AGが正常の場合、重炭酸イオンの喪失を考えます。

このように、まずpHの状態を判断し、続いて、HCO3-やPaCO2の値をみて、さらにアニオンギャップの増大をチェックし、アシドーシスやアルカローシスが呼吸性か代謝性か、あるいは両方なのかを考えていきます(表3)。

アシドーシスとアルカローシス

表3 アシドーシスとアルカローシス

ここで気をつけなければならないことは、pHの見かけ上の数値にだまされてはいけないということです。

例えば、代謝性アシドーシスの状態になると、人体はpHバランスを保とうとして、呼吸数を増加(頻呼吸)し、アルカローシスに傾こうとします。

そうすると、アシドーシスの状態は代償され、pHは7.4近くに戻り、酸塩基平衡が維持されてみえることがあります。この代償性変化(正常に戻そうとする働き)にも注意して血液ガスを読むことが必要です。

IN/OUTバランスの崩れがpHに影響を及ぼす

血液ガスをみるとき、二酸化炭素と酸素のバランスを確認します。電解質などもみて、病態を確認しながら、評価をしていきます。

乳酸も重要な指標になります。嫌気性代謝で最終的に上昇するのが乳酸値で、体内はアシドーシスになっています。

例えば、心不全はもともとINバランスに傾く病態ですが、重症になると肺うっ血が著明になるため、肺のガス交換の機能が低下します。肺が酸素を取り込めなくなると、末梢組織は酸素不足に陥り、嫌気性代謝が亢進し、乳酸値が上昇して、乳酸アシドーシスの状態になります。

このように、IN/OUTバランスが崩れることによって、肺機能や腎機能が低下し、PaCO2やHCO3-に影響が及び、pHも異常を来すことになります。

現場で学ぼう! 答えは1つではない!

水・電解質の主な調節ポイントは、腎臓と肺です。つまり、腎臓と肺の生理がわかっていれば、水・電解質異常が理解しやすくなります。

しかし現場では、教科書などで勉強したことと全然違うことに遭遇することがあるでしょう。アシドーシスの原因が1つだけなら簡単ですが、実際はそうはいきません。

代謝性アシドーシスに呼吸性アルカローシスを合併したり、混合性アシドーシスになったりと、複雑な病態が絡むこともあります。さまざまな原因を考えて、鑑別しなければ答えが出てきません。そのことがより、血液ガスを難しくしていると思います。

その結果、輸液療法1つをとっても、100人医師がいれば、100通りの輸液量の指示があるかもしれません。しかし、それは間違いというわけではありません。実際、教科書通りの輸液をしている医師もあまりいないと思います。

もちろん、基本は基本で知っておく必要はありますが、経験から考えたり、様子を見て修正したり、そういう試行錯誤は現場では常に行われていることですし、それこそが非常に重要なことでもあります。

看護師にしてみれば、「教科書と違う」「指示を出す医者によって内容が違う」ということで、混乱しやすい分野かと思いますが、「なぜ違うのか」「その指示の意味は何なのか」ということを考えるようにしてください。(澤野)

イメージイラスト

(『ナース専科マガジン』2014年8月号から改変引用)

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