【連載】代表的な電解質異常を学ぼう!

【低ナトリウム血症】原因・症状・治療ポイント

解説 内田 俊也

帝京大学医学部内科学講座 教授

低ナトリウム血症とは?

血清ナトリウム濃度が135mEq/l未満の場合を低ナトリウム血症と定義します。

低ナトリウム血症は、日常にみられる電解質異常の中で最も多いものの一つです。ナトリウムは血漿浸透圧の大部分を占めるため、血漿浸透圧=2×血清Na値で表されることが多いのですが、低ナトリウム血症=低浸透圧血症とは限りません。

低ナトリウム血症は、血漿浸透圧の高さによって病態が異なるため、鑑別が重要です。

①高浸透圧性低ナトリウム血症

マンニトールやグリセロールといった、細胞膜を通過しにくい高張液を輸液した場合に生じます

細胞外液のこれらの高張性物質のために細胞内外に浸透圧差が生じ、細胞内から細胞外へ水が移動して低ナトリウム血症になります。糖尿病の高度高血糖でも同様のことがみられます。

②正常浸透圧性低ナトリウム血症

顕著な高脂血症や血清中の異常蛋白が増加した場合に生じます。浸透圧は正常なため、「偽性低ナトリウム血症」と呼ばれます。

③低浸透圧性低ナトリウム血症

これが真の低ナトリウム血症です。

血清ナトリウム濃度は低いものの、必ずしもナトリウムが欠乏しているわけではなく、相対的に水が多い場合がほとんどです。

浸透圧が低いにもかかわらず、腎臓から自由水の排泄が適切に行われないために起こります

臨床では、頻脈、血圧低下、起立性低血圧、口腔粘膜の乾燥、皮膚ツルゴールの低下、頸静脈の虚脱、浮腫などに現れます。

さらに低浸透圧性低ナトリウム血症は、細胞外液量の増減によって、次の3つに分けられます。

A 細胞外液量の減少(=細胞外液の減少)

体内のナトリウムが欠乏している状態。
ナトリウムの喪失と細胞外液の低下、それに伴う抗利尿ホルモンの分泌増加、自由水の保持によって生じる。
ナトリウムの喪失ルートとして腎性と腎外性がある。

◆腎性喪失

利尿薬の使用や塩類喪失性腎炎、浸透圧利尿など。サイアザイド系利尿薬では、使用者の10~30%に低ナトリウム症が見られるという報告もある。
尿中Na>20mEq/l

◆腎外性喪失

嘔吐や下痢、ドレーンからの排液、熱傷、膵炎など。
尿中Na<20mEq/l

B 細胞外液量正常(=純粋な水過剰)

代表的な疾患は抗利尿ホルモン分泌異常症候群(SIADH)で、原因としては悪性腫瘍、脳疾患、肺疾患、薬剤の4つが多い。
SIADHの原因としては、骨髄炎や外傷、くも膜下出血、脳梗塞などの中枢神経系疾患や、肺炎や肺結核などの肺疾患などが挙げられる。外来でよく遭遇するのはこのタイプで、中でも薬剤性のものが多い。

C 細胞外液量の増加(=浮腫性疾患)

体内の総ナトリウム量の増加と、それ以上の水分量の保持によって生じる。

◆有効循環血漿量増加

進行した腎不全。
尿中Na>20mEq/l

◆有効循環血漿量減少

うっ血性心不全、ネフローゼ症候群、肝硬変など。
尿中Na<20mEq/l

低ナトリウム血症を呈する原因

I 偽性低ナトリウム血症

高脂血症、高蛋白血症、高血糖、マンニトールやグリセロール投与時

Ⅱ 真性低ナトリウム血症

1.体液量の減少を伴う場合

・ナトリウム摂取量の減少
・ナトリウム喪失量増加

A.腎性ナトリウム喪失

利尿薬、急性腎不全(利尿期)、慢性腎不全(多尿期)、浸透圧利尿、Na喪失性腎症、副腎不全(先天性副腎過形成、低アルドステロン症)、薬剤性尿細管障害

B.腎外性ナトリウム喪失

 a)消化管からの喪失(嘔吐、下痢、胃・腸瘻、胃・腸液吸引)
 b)皮膚からの喪失(発汗過多、膵嚢胞性線維症)
 c)third spaceへの移行(髄膜炎、急性膵炎、火傷)

2.体液量の変化を伴わない場合

急性水中毒、SIADH、利尿薬投与、グルココルチコイド欠乏症、甲状腺機能低下症、無症候性低ナトリウム血症

3.体液量の増大を伴う場合

腎不全、浮腫性疾患(うっ血性心不全、肝硬変、ネフローゼ症候群)、慢性閉塞性肺疾患

低ナトリウム血症の症状

低ナトリウム血症の代表的な症状に、ふらつきがあります。患者さんに立ち上がり時や歩行時に倒れそうになるなどの症状がみられたら、低ナトリウム血症が疑われます。また頭痛や悪心、腹痛などを訴える場合もあります。

さらに、中枢神経の興奮性の異常と低浸透圧による脳浮腫により、食欲低下倦怠感が生じることがあります。

血清ナトリウム値が125mEq/l以下の重篤な場合では、筋痙攣意識障害を起こすことがあります。

低ナトリウム血症の治療ポイント

治療は原因と重症度によって異なります。まずは、原因となる基礎疾患の除去を考えます。低ナトリウム血症は程度と成立の速度によって、同じ125mEq/lの低Na血症でも、慢性の場合は無症状のことが多く、急性の場合は痙攣や意識障害などの中枢神経症状を示すことがあります。

慢性の軽度から中等度の低ナトリウム血症の場合は、通常は水分制限が治療の中心となります。それが困難な場合は、経口ナトリウム補助剤の投与などで補正されます。

急性で重篤な場合は、治療として3%NaCl 50~100mlの輸液が行われます。この場合、急速な改善を図ると脳幹の障害をきたす場合があるので、血清ナトリウムの改善は1~2mEq/l/時間を超えないように緩やかに行う必要があります。

低ナトリウム血症の観察・看護のポイント

●発症の原因の代表的なものに、「高齢者である」ことが挙げられます。加齢によって腎臓でのNa保持力が低下し、体内からNaが喪失されやすくなります。入院後、塩分制限食に切り替えたことで、これまで気づかなかった電解質異常がみえてくることもあります。
●最近は薬剤の影響が増えているので、既往や服薬歴の確認が重要です。その理由として、降圧薬を服用する高血圧患者さんが多くなったことが挙げられます。降圧薬は余分なNaを体外に排出する働きがあります。
●点滴にNa濃度が低い点滴を選択するケースでは、Na濃度が低下して、低Na血症が起こることがあります。
●病棟では患者さんのふらつきによる転倒防止に十分な注意が必要です。低Na血症は軽度でも骨粗鬆症や骨折、心筋梗塞のリスクになります。
●体重の増減や尿量の変化は、循環量の変化のサインとして重要です。また、立位による血圧低下、脈拍上昇なども細胞外液量の減少の指標になります。

【臨床で見られる代表的な症例】
利尿薬の服用でNa喪失量が増えた。

(『ナース専科マガジン』2014年8月号から改変引用)

【電解質異常のまとめ記事】
電解質とは?身体のしくみと電解質異常

【関連記事】
* 第4回 【高ナトリウム血症】原因・症状・治療ポイント
* 第2回 ナトリウムの調整機序 3つのポイント
* 第1回 電解質と身体のしくみ

ページトップへ