【連載】代表的な電解質異常を学ぼう!

低カリウム血症・高カリウム血症|原因・症状・治療・看護のポイント

解説 内田 俊也

帝京大学医学部内科学講座 教授

【目次】

カリウムの調整機序

血清カリウムの正常範囲

ポイント1 細胞内外でカリウム濃度差が大きい

カリウムは細胞内液の主要な陽イオンで、体内カリウム総量のうち98%が細胞内液に存在し、細胞外液に含まれる量はわずか2%です。

また、細胞内液のカリウム濃度は約100mEq/lと高いのに対し、血清カリウム値は3.5~5.0mEq/lと、細胞内外の濃度比が数十倍と大きいため、細胞内外のカリウム移動によって容易に血清カリウム値は変動します。

例えば、0.1pHの変化で血清カリウム値は0.6mEq/l動きます。この移動に影響を与える因子としては、以下4つなどがあります。

  1. 酸塩基平衡状態(pH)
  2. インスリン
  3. カテコールアミン
  4. 浸透圧

例えばpH値が変動したアシドーシスでは、過剰な水素イオンが細胞内に入り、カリウムは細胞外液に出ていくため、高カリウム血症を引き起こします。

一方、アルカローシスは低カリウム血症を引き起こします。また、インスリンは細胞外液から細胞内液へのカリウムの移行を促進し、カテコールアミンはβ受容体を介してカリウムの細胞内液への移行を促進します。

ポイント2 副甲状腺ホルモンの亢進減退で調節

私たちは1日に約40~80mEqのカリウムを経口摂取し、これがまず消化管で吸収されて細胞外液に入り、最終的には95%以上が尿中に排泄されます。従って、カリウム代謝の恒常性のほとんどは、尿中カリウム排泄の調節によって規定されています。

この調節は主に腎臓の皮質部集合管におけるカリウム分泌によって決定されます。

ここでのカリウムの分泌量を調節する因子には、

  1. カリウム摂取量
  2. アルドステロン
  3. 集合管の尿流速度
  4. Na到達量
  5. 非再吸収性陰イオンの存在

などがあります。

血清カリウム濃度異常の背景を捉えるには、低カリウム血症は摂取不足か腎性喪失、腎外性喪失かを考えればよく、高カリウム血症は腎機能低下時での摂取過多か、腎からの排泄低下を考えればよいことになります。

近年、カリウムの調節系に影響を与える薬剤が多く使用されるようになっています。特にレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)という血圧上昇にかかわるホルモン系に影響する薬剤は、持続性の血清カリウム異常をきたすので注意が必要です。

RAASのメカニズムと阻害する薬剤

RAASのメカニズムと阻害する薬剤

薬剤性のカリウム異常の原因薬剤

薬剤性のカリウム異常の原因薬剤

【関連記事】
* カリウム異常はなぜ起こる?
* カリウムはどうやって排泄されるのか?
* 「カリウム濃度異常」への輸液療法|インアウトバランスから見る!

低カリウム血症

低カリウム血症の原因

低カリウム血症は、血清カリウム値が3.5mEq/l未満と定義されています。多くの場合、血清カリウム値の正常範囲は3.5 ~ 5.0mEq/lと非常に狭く、そのためカリウムのわずかな減少でも重大な結果を招くことになります。

低カリウム血症の主な原因は、

  1. カリウムの摂取不足
  2. 体外へのカリウム喪失
  3. 細胞外から細胞内へのカリウムの移動

の大きく3つに分けられます。

①は食事などにより、適切なカリウムの経口摂取がされていない場合です。腎臓は尿中へのカリウム排泄をゼロにはできないために、カリウムの摂取不足が低カリウム血症の原因になることは少なくありません。

②は下痢や嘔吐、潰瘍性大腸炎などによる消化管からのカリウム喪失と、利尿薬やグリチルリチンなどの薬剤による影響もよく知られています。

③はインスリンの投与によるインスリン過剰、アルカローシス、低カリウム血性周期性四肢麻痺、バリウム中毒などがあります。

特に代謝性アルカローシスによって低カリウム血症が起こることは多いです。一方、低カリウム血症がありアシドーシスとなるのは、下痢か腎尿細管性アシドーシスに限られます。

低カリウム血症を呈する原因

低カリウム血症を呈する原因

低カリウム血症の症状(心電図の変化)

低カリウム血症の症状は、一般的に脱力感だるさ筋力低下知覚異常腸蠕動音の低下などがみられます。

しかし、これらは非特異的で漠然としたものなので、もっと特異的なものとして心電図を見ることをお勧めします。例えば低カリウム血症ではT波の平低化・陰性TやST低下、U波が出現することが特徴的です。

また、低カリウム血症も2.5mEq/l以下と高度になれば不整脈のほか、呼吸筋麻痺から低酸素血症を起こしたり、腸管運動麻痺から腸閉塞を起こす、さらには横紋筋融解による急性腎不全を発症するなど、致命的になることがあります。

低カリウム血症による心電図変化

低カリウム血症による心電図変化

低カリウム血症の治療ポイント

治療を始める前に必ず原因を明らかにして、原因が除去できる場合は、重篤な低カリウム血症でない限り原疾患の治療のみを行います。

原因の鑑別診断としては、まずは腎性喪失と腎外性喪失に分けます。

腎性喪失では尿中カリウム排泄は20mEq/日以上であり、腎外性喪失は20mEq/日以下になります。一般的に低カリウム血症があれば、カリウム欠乏があると考えられます。

低カリウム血症でも2mEq/lと高度な場合は、速やかに低カリウム血症を補正する必要があり、経静脈的にカリウム製剤を投与します。ただし、常に高カリウム血症を引き起こす危険があるために、カリウム製剤は必ず40mEq/l以下となるように希釈し、120mEq/日以下のスピードで点滴静注します。

一方、血清カリウム値が3mEq/lと軽度で緊急性がない場合は、食事療法やカリウム製剤を経口投与します。

低カリウム血症の観察・看護のポイント

・嘔吐や下痢が長期間続いている場合は、血清カリウム値や心電図、倦怠感や筋力低下の症状がないか観察します。特に不整脈と呼吸筋の筋力低下には注意が必要です。
・血清カリウム値のわずかな低下でも、重大な心合併症を生じる可能性があるので、血清カリウム値を注意深くみていきます。
・低カリウム血症の最もよくみられる危険因子に利尿薬の使用があるので、薬歴をしっかり聴取します。また甘草を含む漢方薬にはカリウム値を低下させる作用があるので、漢方薬服用の有無も確認が必要です。
・急性期が過ぎた患者さんへの食事療法については、カリウムが多く含まれた食物を挙げて指導します。※下記「カリウムを多く含む食物」参照

【臨床でみられる代表的な症例】
利尿薬を使用していた患者さんに嘔吐が続いた

高カリウム血症

高カリウム血症の原因

高カリウム血症は、血清カリウム値が5.0mEq/l以上と定義されることが多く、電解質異常の中で最も危険なものです。

高カリウム血症の症状として、骨格筋の筋力低下が生じることがありますが、それが弛緩性麻痺に進行したり、心拍数の減少や心拍出量の減少、心停止も起こりうるからです。

原因としては、

  1. 食品からのカリウムの過剰摂取
  2. 腎機能を妨害するような薬剤を服用している
  3. 急性腎障害や慢性腎臓病などによるカリウムの尿排泄の減少

などがあります。いずれも腎機能低下がベースにあります。なぜなら通常、腎機能が正常で十分なカリウム排泄ができれば、高カリウム血症を引き起こすことはないからです。

①は食品以外でも、保存血輸血やカリウム含有輸液、カリウム含有薬剤でみられます。

また、横紋筋融解や熱傷、血管内溶血、消化管出血などにより体内でカリウムが増加する場合もあります。また、腎機能低下があっても尿量が1日1000ml以上に保たれていれば、高カリウム血症となることは少なく、②を合併している可能性があります。

②の薬剤としては一部の降圧薬があり、これはカリウムを溜めこむ作用があるからです。また、最近は腎保護を目的としてアンジオテンシン変換酵素阻害薬や、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬が広く使用されるようになりましたが、それらにも血清カリウム値を上昇させる作用があります。

③のその他の原因としては、アジソン病(副腎皮質機能低下症)などのアルドステロン合成障害やアルドステロン反応性低下、などがあります。

高カリウム血症の症状(心電図の変化)

高カリウム血症の主な症状としては、いらいら感唇のしびれ腹痛下痢筋力低下知覚異常などがあります。

しかし、やはり低カリウム血症と同様に、非特異的であるために、血清カリウム値と心電図を注意深くみていくことをお勧めします。

特に心電図では、「テント状T波」と呼ばれる特徴的な波形を示します。血清カリウム値が7.0mEq/l以上になると、重度の不整脈を引き起こし、心停止になることもあるので非常に危険です。

高カリウム血症による心電図変化

高カリウム血症による心電図変化

高カリウム血症を呈する病態

高カリウム血症を呈する病態

高カリウム血症の治療ポイント

尿量減少による高カリウム血症が疑われる場合は、利尿作用の強いループ利尿薬で改善を図ります。

経口摂取によるカリウム過剰が原因の場合は、カリウムを多く含む飲食物を制限すると同時に、蓄積したカリウムを体外に出すために陽イオン交換樹脂を投与します。

アシドーシスやインスリン欠乏、ジギタリス中毒、横紋筋融解などの内因性のカリウム負荷では、細胞内へのカリウム移行を促すインスリン+グルコース療法を行います。

薬剤の原因が疑われる場合は、その薬剤の使用を中止します。急性の場合には、心毒性を防ぐためにグルコン酸カルシウム製剤を静注します。

低カリウム血症の観察・看護のポイント

・腎機能が低下している患者さんには、カリウムを多く含む飲食物(例えば牛肉や鶏肉、生野菜、根菜類、フルーツ、プルーンジュース、オレンジジュースなど)を制限するよう栄養指導などを行います。※下記「カリウムを多く含む食物」参照
・一般的に使われている維持駅には、カリウムが添加されています。腎機能の低下している患者さんには、カリウムを除いた維持液(製品名に4が付いた、いわゆる4号液)を使うようにしまうs。
・筋力低下のある患者さんには、転倒・転落の危険があるので、一人で行動せずに、動く場合は解除を呼ぶように伝えておきます。

【臨床で見られる代表的な症例】
腎機能低下のある患者さんにカリウムの添加された輸液を使っていた

カリウムを多く含む食物

分類 具体的な食品
Ⅰ肉類 ●牛肉 ●豚肉 ●ホタテ貝
Ⅱ野菜類 ●アスパラガス(生・缶詰) ●豆 ●ブロッコリー ●ニンジン ●マッシュルーム ●ホウレンソウ ●イモ
Ⅲ果物類 ●アンズ ●バナナ ●メロン ●イチジク ●モモ
Ⅳ飲料水類 ●プルーンジュース ●グレープフルーツジュース ●オレンジジュース ●トマトジュース ●パイナップルジュース

(『ナース専科マガジン』2014年8月号から改変引用)

【電解質異常のまとめ記事】
電解質とは?身体のしくみと電解質異常

【関連記事】
* カリウム異常はなぜ起こる?
* カリウムはどうやって排泄されるのか?
* 「カリウム濃度異常」への輸液療法|インアウトバランスから見る!

ページトップへ