【連載】Newsのツボ

モンスターペイシェントへの7つの対応方法

解説 向後善之

ハートコンシェルジュ常務執行役員 臨床心理士

患者さんからの暴力・暴言を見かけたことがある人もいるのではないでしょうか。今回は、モンスターペイシェントについて解説します。


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看護師のコミュニケーションとマナー


モンスターペイシェントが生まれた背景

 モンスターペイシェントは、いわゆるモンスターペアレントの患者(および患者の家族)版です。しかも、保護者と比べると、患者という弱者の立場であるだけに、その対応・対策に悩む医療者は多いことでしょう。

 このような「モンスター○○」が現れた背景には、1990年代以降の社会情勢がかかわっていると思われます。競争激化や自由化、規制緩和などにより、これまで確実であると考えられてきたものが崩壊し、人々に「不安の時代」が訪れたのです。

 中でもより深刻だったのは、終身雇用制が揺らいだことでした。社会に放り出された人々は自己主張しなければ、自分の身が守れないと考えるようになりました。それが極端な方向に走ったとき、「モンスター」と言われる人々が生まれたのです。


 彼らの自己主張はとにかく、大声で萎縮させたり、相手をへこませたりして、勝つこと(表面上であったとしても)でした。しかし、ディベートなどに見る本来の自己主張は、自分の考えを述べる一方で、相手や周囲の意見との違いもきちんと容認するもの。当時テレビなどで、はき違えた自己主張が蔓延したことも、モンスター誕生の要因となっているかもしれません。

極端な自己愛から発生する訴えの特徴

 モンスターペイシェントに多くは時代変化の影響を受けやすかった30~40代の比較的若い世代です。特徴は、

 1. 自己愛(ナルシシズム)傾向が強い
 2. 自己顕示欲が強い
 3. 自分の欠点を指摘されることを嫌う
 4. 自分の主張は常に正しいと考える
 5. 物事を過大に受け取る

 パワーハラスメントの加害者と似ており、実際の主張の裏に別の目的が存在することもあります

 近年では、言葉やふるまいは丁寧であるものの、自らの弱さ(患者であること)を盾にしながら、長時間にわたり、じわじわと不満を訴えたり抗議するなどのケースも増えているようです。この場合は比較的年齢の高い人に多く見られます。

モンスターペイシェントの訴えの特徴

カテゴリーエラー

 最初に訴えていた内容から次第に論点がずれていく

 例えば、夜間診療が受けられなかったことに抗議しているうちに、「それでも看護師なのか」「看護師として何も感じないのか」など個人の人間性や人格を非難するようになる──など、抗議の方向性が次第に変わり、最終的に話題の中心がずれてしまうことです。

三角コミュニケーション

 例えば、「○○さんがこう言った」など、他人や周囲からの伝聞がよく出てきます。

長時間である

 通常であれば5分程度で済む内容を、20分も30分も、ひどいときには2時間も続けるようであれば、モンスターペイシェントといえるでしょう。

モンスターペイシェントへの基本的な7つの対応方法

1 きちんと「NO」と言う

 抗議の内容が体制やルールに反するときには、きちんと「NO」と言い、毅然とした態度を取ることが重要です。ただし、相手の存在に対してではなく、その言葉や行動に対して「NO」であることを明確にします。

2 例外を作らない

 「今回は特別」「私だから特別」など、対応したタイミングや人によって態度が変わることのないようにします。

3 話は聞いても同調しない

 訴えに耳は傾けますが、それに絡め取られないように要注意。その場合は、言葉の裏側に別のメッセージがないか、態度や姿勢に非言語的なメッセージはないか、観察しながら聞くと落ち着くことができます。

4 すぐに答えを出さない

 対応策などはすぐに提示せず、検討する旨を伝えます。上司や別部門の人にバトンタッチしてもよいでしょう。時間を与えることで、相手が冷静さを取り戻すことがあります。

5 落ち着いた態度を見せる

 1. 顔を上げる
 2. 呼吸はゆっくりを意識して相手に同調させない
 3. 足の裏など下半身にも意識を向ける

 などを心掛けることが有効です。

6 スタッフで共有する

 病棟などで誰かがモンスターペイシェントに対応した場合には、まず本人が「つらかった」「悲しかった」など胸中を吐き出せる場を設け、その感情を全員で共有した上で対策を考えます。

 また、対応にぶれが生じないよう徹底させることも大切です。そのためには、院内全体でのモンスターペイシェント対策のシステムと体制の整備が重要になります。

7 自分を守る

 看護師の皆さんは、患者さんに対し傾聴・共感し、寄り添うことは非常に大事なことだと考えていると思います。しかし、対モンスターペイシェントに限っては、一時的にそれを棚上げして接することも必要。それが看護師としての自らを守ることにもつながるのです。

 次ページでは、「モンスターペイシェントに関する看護師のコメント」を紹介します。

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