【連載】輸液製剤がわかる! なぜ、その輸液製剤が使われるのか?

輸液管理で見逃しちゃいけないポイントは?

協力 飯野 靖彦(いいの やすひこ)

日本医科大学名誉教授

輸液の投与中、看護師はどこに気を付けて観察をすればよいのでしょうか。具体的なポイントを挙げて、見極めが必要な項目や注意点などについて解説していきます。


【目次】

ここをみる! IN/OUTのバランスと身体所見

輸液管理で大切なことは、補給されている量が適切で、体液量が一定に保たれているかを評価することです。それには、体内に入る量・摂取量(INPUT)と体外に排出される量・排泄量(OUTPUT)のバランスをみることが大切です。

過剰な量を輸液すると電解質バランスを崩したり、心臓や腎臓への負荷が大きくなります。逆に少ない場合には、脱水症状を引き起こすこともあります。

IN/OUTの確認にはバランスシートを用いて、食事と輸液などの摂取量をINに、尿や便、発汗、不感蒸泄などをOUTの項目に記入してみていきます。

バランスシートの計算式
(輸液量+経口摂取量+代謝水)-(尿量+便+不感蒸泄+排泄液量)

さらに、シートの数字だけでなく、バイタルサインや身体所見、検査値データにも注目します。輸液の効果は、心拍数、血液や尿の検査データ、体重で評価できます。

輸液により循環血液量が増えてくると、心臓に返ってくる血液量も増え、心臓の拍動は少なくて済むようになります(心拍数の低下)。また、濃くて少量だった尿も、徐々に量が増え、色も薄くなり、比重も低下します。

腎臓への血流も増えて尿がつくられるようになるので、高値を示していたTP、Hct、Albの値が下がります。さらに腎臓から尿が出てくることで、BUNやCrの値も下がってきます

一方、最もわかりやすい評価として、体重の変化があります。毎日、同じ時間に、同じ衣類で体重を測定し、その変化をみていきます。例えば、輸液により3日間で体重が6kg増えたとします。それでもむくみがないのであれば、それだけの水分が失われていたということがわかります。

過剰投与と脱水のサインを見逃さない!

輸液管理で最も注意したいのが、心不全の危険性がある過剰投与と脱水です。そこで、心不全の危険性がある過剰投与と脱水に特に注意します。以下のようなサインがあれば、過剰投与や脱水を疑います。

  1. 心不全のサイン → 血圧低下、脈拍数の増加、体重増加、起座呼吸、30度以上の座位での頸静脈怒張、末梢浮腫など。
  2. 体液量の過剰 → 上記のほか、浮腫(全身)、胸水や腹水などもみられる。
  3. 脱水のサイン → 口渇(口腔粘膜の乾燥)、皮膚ツルゴール反応の低下、ハンカチーフサイン、急激な体重減少、尿量減少など。腎機能が正常であれば、尿中のNa値やCl値が40mEq/L以上になれば脱水は改善されたと判断できる。

呼吸状態にも注目する

輸液量を増やすことで、異常呼吸が起こる場合もあります。これは、必要以上の輸液量が血管内に入ると、循環血液量が増して心臓の動きが悪くなり、それとともに肺の毛細血管がうっ血してガス交換が有効に行われなくなるためです。

まずは、バイタルサイン(呼吸数、血圧、脈拍、SpO2など)とフィジカルアセスメント(呼吸苦・顔色の変化・頻脈・不整脈・気分不快の有無、体位、聴診による副雑音の有無、頸静脈怒張の有無)を実施し、輸液による影響かどうかを判断します。

呼吸異常では低酸素血症に陥っている可能性があるため、ABCD評価を行い、早急に医師に報告して対処します。

穿入部と輸液ラインはココを観察

点滴穿入部や輸液ラインの状態を確認することも大切です。特に、高張性ブドウ糖液や強アルカリ製剤による血管痛、静脈炎、抗がん剤の漏出、アルコールやドレッシング材による皮膚のかぶれなどには注意が必要です。

  1. 刺入部周囲に発赤や腫脹、疼痛、熱感はないか
  2. ドレッシング材やテープは剥がれていないか
  3. 滴下速度は指示通りか
  4. 輸液残量は適切か
  5. ルート内への血液逆流や空気の混入はないか(特に薬剤混合時)
  6. 体動などによって輸液ラインの閉塞や屈曲、接続部の緩みはないか(特に薬剤混合時)
  7. 輸液ラインの吸着や収着によって薬剤の作用が妨げられていないか(ミリスロール®やヒューマリンなどの投与時)

ココをおさえる!
輸液管理で大切なのは、補液によって体液バランスが適切に保たれたかどうかを評価すること。バイタルサインや身体所見、検査値データから過剰症状・欠乏症状のサインを見極めよう。

体液量が多い新生児・小児への輸液の注意点

体重に占める体液の割合は新生児で80%、1歳児で65%と成人に比べて多く、新生児では細胞内液が35%、細胞外液が45%を占めています。

さらにNa代謝率や尿濃縮能、希釈能などが十分に発達していないため、1日に必要な水分と塩分が多く、水負荷で浮腫を起こしやすい、腎臓での水分の再吸収が不十分なため脱水になりやすいといった特徴があります。

さらに水分代謝が成人の3倍と早く、短時間でも水分摂取ができないとその影響が出やすくなります。

ケアのPOINT

  1. 小児に輸液を行うときは、状態を観察しながら投与量を細かくチェックすることが重要。
  2. 1日の投与量の目安は150~200 mL/kg/日、軽度~中等度の脱水では経口補液剤を併用。
  3. 特に、乳児は細胞外液の1/2に相当する100mL/kgが1日の水分摂取量にあたるため、脱水は深刻。
  4. ショック時などでの急速大量投与では、高血糖による浸透圧利尿や腎性腎不全への移行を考慮して、糖質もKも含まない生理食塩水を使用する。

体液量が少ない高齢者の輸液ケアはどうする?

高齢者の場合、細胞内液の比率が低下して体重に占める体液の割合が55%に減少し、不感蒸泄量も成人の2/3~1/2に低下します(下図)。

年齢による体液量の変化説明図

年齢による体液量の変化

水・電解質異常をきたしやすく、細胞内の脱水になりやすいのが大きな特徴です。さらに、心機能や腎機能をはじめ、さまざまな機能低下を呈しているので、水・電解質、酸に対しての許容量が低下する一方、症状の出現が明白でないため、重篤な症状に陥りやすく、一度状態が悪化すると回復が難しい傾向があります。

高齢者への輸液療法はこうした身体的特徴のほか、個人差が大きい、多臓器障害を起こしやすい、糖質・脂質の代謝能力や免疫凝固機能が低下していることを念頭に置いて慎重に実施します。

ケアのPOINT

  1. 特に、腎疾患患者や透析患者など腎機能が障害されている場合は、糖代謝の問題や水分制限などで、一般的な投与量とは違ってくるので十分な注意が必要。
  2. 高血糖や脂質異常症を起こしやすく、大量投与では心不全や肺水腫などに陥りやすくなる。

ココをおさえる!
体液量の割合が成人に比べ高い小児も、低い高齢者も、輸液の許容範囲が狭いところが共通。こまめな処方チェックと観察で、より慎重な輸液管理が必要。

(『ナース専科マガジン』2013年10月号から改変引用)

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