1. トップ
  2. 看護記事
  3. 医療・看護技術から探す
  4. ドレーン管理
  5. 腹腔ドレーン
  6. 腹腔ドレーンの目的と留置部位・排出メカニズム

【連載】ドレーンの排液のアセスメント

腹腔ドレーンの目的と留置部位・排出メカニズム

  • 公開日: 2015/12/12

主に腹腔内にある臓器の切除後に、死腔となって、液が貯留しやすい部位に留置されます。ドレーンは、患者さんの腹腔内がどうなっているのかという情報を得るためだけでなく、治療や貯留されているものを排液するためなどでも留置されています。そこで日々のアセスメントや観察が重要になってきます。


▼ドレーン(ドレナージ)について、まとめて読むならコチラ
ドレーンとは|ドレーンの種類と管理


腹腔ドレーンの目的

1.腹腔内の有害な液体を排出させる
2.感染源となりうる液体の貯留を防ぎ感染を防止する
3.排液から患者さんの状態を把握する

といった目的で行われます。

 どのような手術を行ったかによって、ドレーンの留置部位は変わります。感染や患者さんの苦痛を軽減するためにも、留置する本数はできるだけ1本に、留置期間は短くするようになってきています。

 腹膜炎の場合は、数本を留置することもあります。

【関連記事】
腹腔ドレーンの目的、種類、挿入部位

腹腔ドレーンの挿入部位

 術後に死腔ができる部位に液体が貯留しやすいため、その部位に留置します。

腹腔ドレーン挿入部説明イラスト
腹腔ドレーン挿入部

①右横隔膜下のドレナージ

 肝右葉と横隔膜の間に留置

②左横隔膜下のドレナージ

 脾臓と横隔膜の間に留置

③ウィンスロー孔のドレナージ

 網嚢(大網と小網によって形成される腹部の空間で、胃肝の背側にあたる空間)の腹膜腔への交通部に留置。この位置に留置することで、肝下面に留置したドレーンが変位しにくくなる利点がある

④モリソン窩のドレナージ

 右腎と壁側腹膜で形成されるくぼんだ部分をモリソン窩といいます。この部位に留置

⑤右傍結腸溝のドレナージ

 右の結腸の外側に留置

⑥左傍結腸溝のドレナージ

 左の結腸の外側に留置

⑦ダグラス窩のドレナージ

 直腸と子宮後面の間に留置。男性の場合は、直腸と膀胱の間に留置

腹腔はどうなっている?

 腹腔は、横隔膜から下、骨盤までの間をさします。

 腹腔内には、肝臓、腎臓、脾臓、大腸、小腸、胆嚢、胃、膀胱などの臓器が収まっています。腹腔は腹膜という薄い膜で覆われています。また、胸腔と違い、陰圧にはなっていません

腹腔ドレーンの排出メカニズム

 開放式ドレーンを用いる場合と、閉鎖式ドレーンを用いる場合があります。

 開放式ドレーンは、ドレーンの端を体外に出たところで切離し、排出された排液をガーゼや吸収性ドレッシング材に吸収させます。

 排液が少なく早期に抜去することができると予測される場合に用いられ、自然圧差や重力、オーバーフローを利用して排出させます。

 閉鎖式ドレーンは、ドレーンの先端を排液バッグなどに接続します。自然の圧差や重力で排出を行うものと、さらに持続吸引器に接続して陰圧を加えて排出を促すものがあります。

 排液バッグは挿入部よりも低い位置になるようにセットしますが、排液バッグが床に着かないように気を付けます。

 閉鎖式ドレーンのほうが感染しにくいというメリットがあることから、ほとんどの場合、閉鎖式ドレーンを選択します。

閉鎖式ドレーン用排液バッグ機能説明図
閉鎖式ドレーン用排液バッグ

【関連記事】
開放式ドレナージと閉鎖式ドレナージの注意点

理解度UPのカギ

1.排液バッグは挿入部よりも低い位置に
2.ほとんどの場合、閉鎖式ドレーンが用いられる

ドレーン挿入患者さんがいたら、コレをチェック!

手術部位と留置部位

*胃切除、脾臓切除、膵臓切除
左横隔膜下

*肝切除
右横隔膜下、ウィンスロー孔

*胃切除、肝切除、胆嚢切除術後も入ることがある
ウィンスロー孔、肝下面

*大腸の左側を切除
左結腸傍溝、ダグラス窩

*大腸の右側を切除
右結腸傍溝、ダグラス窩

*直腸切除
ダグラス窩

病室に行ったら、まずコレをチェック

チェック項目

全身のアセスメント

1.表情、顔色に変化はないか
2.口調や話している内容に異変はないか
3.バイタルサインに異常はないか

排液のアセスメント

1.量は1日あたり100mL以下か
2.排液の色に異常はないか
3.性状は「さらさら」か
4.臭いはしないか

【関連記事】
腹腔ドレーンのアセスメントのポイント【排液の量・色・合併症/刺入部】
腹腔ドレーンの排液の色のアセスメント

合併症のアセスメント

1.頻呼吸やSpO2の低下はみられないか
2.腹部膨満、腹痛・圧痛、腹膜刺激症状、腸蠕動音の減弱や消失はないか
3.冷汗はないか
4.チアノーゼはみられないか
5.尿量が低下していないか

刺入部・固定の観察

1.刺入部から浸出液が漏れていないか
2.テープがよれたり、剥がれたりしていないか
3.チューブが抜けていないか

【関連記事】
腹腔ドレーンを閉塞させないための注意点
腹腔ドレーンの刺入部の発赤への対応
ドレーン抜去が起こらないようにするには
消化器ドレーンのミルキングとは? 実施の手順と注意点

(『ナース専科マガジン』2013年4月号から改変利用)

腹腔ドレーンについてさらに学ぶならこちら
【連載】腹腔ドレーン管理のこんなことが知りたい! Q&A

この記事を読んでいる人におすすめ

カテゴリの新着記事

術後感染に関する看護計画|胃がん術後の患者さん

胃がん術後に創部感染を起こした患者さんへの看護計画  がんを切除後は残った胃と十二指腸を繋げるなどの再建法が実施されます。そして、術後はドレーンが留置され、皮膚は縫合されているため創部の感染リスクがあります。今回は術後に創部感染が生じた患者さんに対して看護計画を立案しました

2023/5/27

アクセスランキング

1位

心電図でみる心室期外収縮(PVC・VPC)の波形・特徴と

心室期外収縮(PVC・VPC)の心電図の特徴と主な症状・治療などについて解説します。 この記事では、解説の際PVCで統一いたします。 【関連記事】 * 心電図で使う略語・用語...

250751
2位

【血液ガス】血液ガス分析とは?基準値や読み方について

血液ガス分析とは?血液ガスの主な基準値 血液ガス分析とは、血中に溶けている気体(酸素や二酸化炭素など)の量を調べる検査です。主に、PaO2、SaO2、PaCO2、HCO3-、pH, ...

249974
3位

人工呼吸器の看護|設定・モード・アラーム対応まとめ

みんなが苦手な人工呼吸器 多くの人が苦手という人工呼吸器。苦手といっても、仕組みがよくわからない人もいれば、換気モードがわからないという人などさまざまではないでしょうか。ここでは、人工呼...

250017
4位

吸引(口腔・鼻腔)の看護|気管吸引の目的、手順・方法、コ

*2022年12月8日改訂 *2022年6月7日改訂 *2020年3月23日改訂 *2017年8月15日改訂 *2016年11月18日改訂 ▼関連記事 気管切開とは? 気管切開...

250001
5位

SIRS(全身性炎症反応症候群)とは?基準は?

*この記事は2016年7月4日に更新しました。 SIRS(全身性炎症反応症候群)について解説します。 SIRS(全身性炎症反応症候群)とは? SIRS(全身性炎症反応...

250839
6位

採血|コツ、手順・方法、採血後の注意点(内出血、しびれ等

採血とは  採血には、シリンジで血液を採取した後に分注する方法と、針を刺した状態で真空採血管を使用する方法の2種類があります。 採血の準備と手順(シリンジ・真空採血管) 採血時に準備...

250858
7位

心電図の基礎知識、基準値(正常値)・異常値、主な異常波形

*2016年9月1日改訂 *2016年12月19日改訂 *2020年4月24日改訂 *2023年7月11日改訂 心電図の基礎知識 心電図とは  心臓には、自ら電気信...

250061
8位

サチュレーション(SpO2)とは? 基準値・意味は?低下

*2019年3月11日改訂 *2017年7月18日改訂 *2021年8月9日改訂 発熱、喘息、肺炎……etc.多くの患者さんが装着しているパルスオキシメータ。 その測定値である...

249818
9位

第2回 全身麻酔の看護|使用する薬剤の種類、方法、副作用

【関連記事】 *硬膜外麻酔(エピ)の穿刺部位と手順【マンガでわかる看護技術】 *術後痛のアセスメントとは|術後急性期の痛みの特徴とケア *第3回 局所浸潤麻酔|使用する薬剤の種類、実施方...

295949
10位

Aライン確保の目的、手順、手技・観察のポイント

【関連記事】 * 輸液ライン(点滴ライン)作り方 9ステップ * 点滴と同じ腕(末梢から)の採血はOK? NG? * 【血圧異常】異常に高い血圧への対応 7ステップ Aライン...

249090