【連載】安全・確実に実施する!与薬のポイント

第11回 基本を押さえる!がん疼痛の薬物療法

監修 眞下 節

市立豊中病院 総長兼病院長 

疼痛のある患者さんには、我慢させないためのペインコントロールが積極的に行われています。ここでは痛みのケアを行ううえで必要な、薬物療法の基礎知識を解説します。


【目次】


がん疼痛における薬物療法の5原則とは?

WHO(世界保健機関)は、がん疼痛治療の目標を「痛みに妨げられない夜間の睡眠時間の確保」「安静時の痛みの消失」「体動時の痛みの消失」と設定し、そのための疼痛緩和治療法として、「がん疼痛における薬物療法の5原則」と「WHO方式3段階除痛ラダー」を定めています。

がん疼痛緩和の中心となる薬物療法について定めた「がん疼痛における薬物療法の5原則」は次のようになっています。

  1. by mouth(経口で)
  2. by the clock(時間ごとに)
  3. by the ladder(段階的に)
  4. for the individual(個別的に)
  5. attention to detail(こまやかな配慮を)

このうち、3の「段階的に」では、WHOが設定した3段階の除痛ラダーに従い、痛みの強さに伴って段階的に除痛をしていきます。

痛みの段階に応じて処方するWHO 方式3段階除痛ラダー

「WHO方式3段階除痛ラダー」は、痛みを3段階に分け、その段階に応じて使用する鎮痛薬と使用法を具体的に示したものです。

  1. 第1段階 軽度の痛み。非オピオイド鎮痛薬を使用し、必要に応じて鎮痛補助薬を併用。
  2. 第2段階 痛みは軽度から中等度で、第1段階で使用した非オピオイド鎮痛薬でも疼痛が残存する場合、コデイン、オキシコドンなどの弱オピオイド鎮痛薬を使用。必要に応じて非オピオイド鎮痛薬、鎮痛補助薬を併用。
  3. 第3段階 中等度から高度の痛み。弱オピオイド鎮痛薬ではコントロールできない場合、オキシコドンのほかにモルヒネやフェンタニルなどの強オピオイド鎮痛薬を使用。必要に応じて非オピオイド鎮痛薬、鎮痛補助薬を併用。

この3段階除痛ラダーは施設ごとに多少改変しているケースもあるようですが、日本でも広く一般的に実施されています。

がん性疼痛に使われる鎮痛薬の剤形

鎮痛薬の剤形には、錠剤、散剤、顆粒、液体、貼付剤、注射薬、坐薬などがあります。剤形の選択は、主に鎮痛薬の投与経路によって決定されます。

現在、がん疼痛に対して使用する鎮痛薬はオピオイドが中心で、基本的に経口薬が選択されます。

経口薬には、錠剤、散剤、顆粒、液体、カプセルなどがあります。非侵襲的であり、患者さんが自ら服用できることで自立にもつながります。経口薬を選択する場合には、患者さんの嚥下状態、消化管の状態など、経口服用できる状態かどうかがポイントです。

錠剤

扱いやすく一般的ですが、量が多くなると飲みにくくなります。特にカプセルは、一度に多量を飲むことは困難です。その場合には、できるだけ小さな形状のものや、少量で済む薬剤を選択します。

液剤

液状のものは速効性のあるものがあります。

散剤

散剤は水に溶かし、水剤としても使用することができます。その場合、ほとんどの鎮痛薬は苦味が強いため、シロップなどを加えることもあります。

貼付剤

貼付剤は、モルヒネ不耐性がみられる場合の代替薬としても有効です。経口投与が困難な場合にも使用でき、モルヒネと比較し、悪心などの副作用が少ないこと、3日ごとの交換という簡便さなどが特徴です。

使用上の注意点は、熱が加わると薬剤の放出量が増加するので、40℃以上の発熱時には貼付しません。入浴時にも注意が必要で、皮膚刺激を避けるために、できるだけ貼付する場所を変えます。

注射薬

注射薬は、経口投与が不可能な場合、経口では疼痛コントロールが困難な場合などに選択されます。注射薬は速効性がある半面、副作用の出現も早くなります。ルート刺入部からの薬液漏れなどの危険性もあるので、十分な観察が必要です。

がん疼痛のレスキュードーズとは?

がん疼痛の場合、突発的に痛みが増強することがあり、いつも一定の痛みが持続している、または徐々に増していくとは限りません。このような突然増強した痛みに対応するために、鎮痛薬を投与することをレスキューといい、その際に臨時に追加投与される鎮痛薬がレスキュードーズです。

突発性の痛みの緩和を目的にしているので、効果出現に時間を要しては、長時間患者さんに苦痛を与えることになり、レスキューの意味がありません。

そのため、レスキュードーズには速効性製剤を使用します。モルヒネ、オキシコドンに加え、速効性のフェンタニルが認可され、現在はこれら3つが基本です。

また、レスキューの効果を高めるためには、投与のタイミングも重要です。患者さんが痛みを感じ始めたとき、痛くなりそうな感覚があるとき、痛みを伴う動作をみせたときに投与します。

レスキュードーズ投与後の対応

レスキュードーズは、痛みが治まったにもかかわらず投与を続けていると、過量投与となり傾眠傾向や呼吸抑制などの副作用が発生する可能性があります。基本的には、定期服用している基本処方は通常の痛みへの対応とし、激しい痛みにはレスキュードーズで対応すると考えます。

しかし、頓服薬とは異なり、レスキュードーズは基本処方への追加投与とするため、投与した場合には基本処方を見直す必要があります。その際、追加量の目安となるのが、レスキューで投与した用量です。通常は1日(24時間)の間に使用した合計用量を、翌日の基本処方に加えます。

レスキューを行った際、投与した薬剤の効果出現時間を過ぎても鎮痛効果が得られないときには、繰り返してレスキュードーズを投与します。ただし、このとき過量投与にならないように、患者さんの状態を十分に観察しながら投与することが大切です。

(『ナース専科マガジン』2013年12月増刊号「一冊まるごと薬のトリセツ」から改変利用)

次回は「ジェネリック医薬品」について解説します。

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