【連載】Newsのツボ

「地域包括ケア」とは? 在宅医療・介護が強化される理由と看護師の役割

解説 佐藤美穂子

日本訪問看護振興財団常務理事

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今回は、「地域包括ケア」について解説します。


在宅医療・介護が強化される理由

理由1 高齢者の増加に伴う医療費の増大

在宅医療・介護の強化が求められるようになった背景の一つには、高齢者の増加に伴う医療費の増大があります。

2025年には第一次ベビーブームに生まれた世代が後期高齢者(75歳以上)になる2025年には、

  1. 75歳以上の人口が16.7%
  2. 65歳以上が28.7%

になると推計され、その一方では少子化によって労働人口が年々減少。

すでに医療費が支えきれなくなってきています。

理由2 ライフスタイルの多様化

また、人々のライフスタイルの多様化による家族介護力の低下独居高齢者の増加も、在宅サービスの充実が求められる大きな要因です。

在宅療養に重点を置いて地域整備を行い、療養者に応じた適材適所の医療・介護の提供を実現することは、これまで多くの人が望んでいた「地域での自律した療養生活」を叶えるもので、医療費の抑制にもつながるのです。

このような動きに伴い、2000年に施行された介護保険制度は、2006年、2009年に改正され、さらに2012年施行の改正にも「地域包括ケア」実現に向けての整備が盛り込まれています。

「地域包括ケア」とは?

地域での自律した療養生活の実現に向け、国が目指しているのが「地域包括ケア」です。

住まい、生活支援、保健(予防)、医療、介護が連携・協力し、地域住民のニーズに応じて提供する一体的なサービスのことで、06年の改正介護保険法により地域包括支援センターができ、その基盤づくりが行われました。

この地域包括ケアにおいて、特にキーマンとなる看護職は、訪問看護師と退院調整看護師、そして退院指導を行う病棟看護師といえるでしょう。

近年では、在院日数の短縮化、在宅での医療処置レベルの向上などの影響で、医療ニーズの高い在宅療養者が増えており、医療機関と地域の連携は欠かせないものになっています。

そのため、病棟から在宅まで、それぞれの看護師が、継続してどのように連携していくかが重要なポイントです。看護には医療機関と地域の橋渡しとしての役割が求められるようになっています。

これは診療報酬上にも現れています。

例えば「退院時共同指導料」は、患者本人・家族、医師、病棟看護師、訪問看護師などが参加して、療養生活指導、医療処置・服薬の確認、訪問看護の内容など、療養生活にかかわる指導を行った場合に医療機関が評価されます。

主に病棟で行う各種退院調整や介護支援連携指導、退院前訪問指導などに対しても、同様の加算が行われています。訪問看護ステーションでは、病棟に出向いて退院時共同指導を行うことを報酬上評価されています。

訪問看護師と病棟看護師、それぞれの役割

訪問看護師の場合

現在、訪問看護ステーションは全国に約5770カ所。(本記事は2011年に作成されたものです。)

1事業所あたり平均約4.5人(常勤換算)の訪問看護師がいます。

そのケアの内容は予防から看取りまで幅広く、生活の場での臨機応変な判断・対応が求められることが少なくありません。

訪問看護師には、より的確なアセスメント力とゼネラリストとしての能力が必要になってきています。

そのため、一人ひとりが積極的に学習の機会をつくり、学ぼうとする姿勢が重要になります。

ですから、これからはそれを後押しする体制づくりが課題。訪問看護認定看護師をリーダーにして地域での教育の場を設けるなど、何らかの取り組みを行う必要があります。

当財団としても、集合研修にはなかなか参加できない訪問看護師のために、3年前から「訪問看護e-ラーニング」を開講しており、今後も教育に力を入れていく方向です。

病棟看護師の場合

その一方で、病棟看護師には、活用できる社会資源の内容や、連携できる訪問看護ステーションの数など、これまで以上に地域に目を向けてほしいと思います。

その上で、入院時の早い段階からさまざまな社会資源が活用できることを伝えたり、病棟で行っていたケアをよりシンプルなやり方に変更してトレーニングを行うなど、患者さんや家族が自信をもって在宅療養に移行できるよう支援してもらいたいのです。

そのためにも、退院前訪問や退院日当日の支援など、訪問看護師をどんどん活用してほしいですね。

これからの在宅医療・介護を看護がどのように支えていくべきか──それは、病院、施設を問わず常にQOL向上イメージし、看護師が互いの業務や役割を理解し合って、地域でも安心して療養生活が送れるよう、患者さん・家族と共に協働していくことです。

そういう視点を持ち続けることが、少しずつでも在宅医療・介護の充実を前進させるのではないかと思います。

次ページでは、「在宅医療・介護に関する看護師のコメント」を紹介します。