【連載】知っておきたい! がんのリハビリテーション

リンパ浮腫の看護|観察項目、ドレナージ、蜂窩織炎などについて

解説 栗原 美穂

国立がん研究センター東病院 看護部 がん性疼痛看護認定看護師

解説 源 典子

国立がん研究センター東病院 外来 乳がん看護認定看護師

解説 岡田 教子

国立がん研究センター東病院 看護部 摂食・嚥下障害看護認定看護師

編集 ナース専科編集部

月刊「ナース専科」編集部

手術によるリンパ管の切断やがんの圧迫によって発症するリンパ浮腫について解説します。


【目次】


▼浮腫についてまとめて読むならコチラ
【浮腫とは?】浮腫のメカニズムと治療・ケア

▼がん化学療法についてまとめて読むならコチラ
がん化学療法とは?副作用の出現時期や症状別の看護


リンパ浮腫とは?

 リンパ浮腫は、

 1. 手術によるリンパ管の切断
 2. 腫瘍の圧迫

 によってリンパ管が閉塞・遮断し、リンパ液の流れが阻害されて起こります。

 進行すると難治性となり、皮膚の角化やだるさ、疲労感といった症状を呈するため、日常生活や社会活動が著しく制限されることになります。

早期発見とケアによって、発症や重症化を防止することが重要です。

リンパ浮腫を合併するがん

 1. 上肢リンパ浮腫・・・乳がん
 2. 下肢リンパ浮腫・・・子宮がん、卵巣がん、膀胱がん、前立腺がん、直腸がん

 で発症がみられます。

術前・術後の観察ポイント

術前

 浮腫の徴候は、皮膚の観察と部位の周径によって確認できるので、術前に必ずリンパ浮腫の発症が予測される部位の計測を行います。また、肩関節周囲炎症の既往の有無、上肢の挙上の状態を評価します。

術後

 術後は患肢の計測を行い、術前数値と比較・評価してリンパ浮腫の有無を確認します。

 術後には一過性のむくみが確認される場合もありますが、郭清した範囲や使用していた抗がん剤の種類によってはそのままリンパ浮腫として継続する可能性が高くなるので、早期発見は重要です。

 退院時も同様に比較・評価します。

リンパ浮腫ケアの指導内容

 リンパ浮腫の予防には、スキンケアと日常生活行動における注意が必要です。「リンパ浮腫教室」などでの指導を紹介します。

リンパ浮腫の成り立ちを説明

 まず、なぜ身体がむくむのか、その原理を説明し、ドレナージの必要性を理解してもらいます。

 動脈によって運ばれた水分や栄養分は代謝活動後、老廃物として静脈、あるいはリンパ管に入ります。蛋白質や脂肪からなるリンパ液は、腋窩や鼠径部などのリンパ節を経由して鎖骨下から静脈に合流し、心臓に戻るわけですが、そのリンパ節やリンパ管が何らかの原因で障害されると、リンパ液が組織と組織の隙間に留まり、水分とともに浮腫をつくります。

 このとき、皮膚表面近くの新たな経路(毛細リンパ管)により、わずかながらもリンパ液は流れ続けます。軽くさする、なでるだけでもリンパ浮腫に効果があるのは、この皮膚直下にあるリンパ液の流れが改善されるからです。

日常生活の注意点

 日常生活のなかの些細なことが浮腫の原因になるので、注意点を守ることは重要です。特に外的刺激による皮膚の炎症(外傷・損傷)はリンパ浮腫の発生リスクになることがあります。

 具体的な説明で、患者さんがイメージしやすいように伝えます。

(1) 長時間の同一姿勢を避けます。長時間座る必要がある場合には、むくんでいる腕や足の下に座布団などを入れて、多少なりともその部位が高くなるように工夫します。
(2) 眠るときは、むくんでいる部位を心臓よりも高くします。あまり高すぎてもよくないので、バスタオルをたたんだ程度(5~10cmくらい)の高さが目安です。
(3) 浮腫のある人は、できるだけリンパ浮腫専用の弾性包帯や弾性圧迫衣(弾性スリーブまたは弾性ストッキング)を使用します。
(4) 身体を締め付ける衣服や装飾品はできるだけ避けること。下着は身体のサイズに合ったものを着用します。身体が部分的に圧迫されると、リンパ液の還流障害や、血流障害を起こすことがあります。
(5) むくんでいる部位を傷つけないように注意します。損傷した部位から細菌が侵入し、蜂窩織炎を起こすことがあります。傷をつけてしまったら、創部を流水で洗い、消毒液などで清潔に保つことが大切です。浮腫部位が炎症を起こしていたら、リンパドレナージや圧迫療法を中止して、医師の診察を受けます。肉体的・精神的な疲労、ストレスがかからないようにすることも大事です。

スキンケアの方法

 リンパ浮腫の皮膚は、皮膚の免疫機能の低下により易感染状態にあり、またバリア機能も低下しているので、スキンケアは重要です。

 基本的なケアは常に清潔に保ち、乾燥を防ぐことです。洗浄時には強くこすらず、石鹸などを十分に泡立てて洗った後、スキンクリームで保護します。指間は特に丁寧に洗います。

 皮膚の保湿にはビタミンE・A系クリームを、皮膚の角化には尿素系クリームを使うとよいでしょう。できればアルコール分の含まれていない物を使用します。

 炎症や水虫などの皮膚トラブルが起きた場合には、すぐに医師の診察を受けるよう指導します。

乳腺手術後のリハビリ体操

  • 腕の水平上げ・・・腕を水平に保って真横に開き、次に両手を身体の前で合わせる。
  • 腕の横上げ・・・手のひらを上に向け一直線に伸ばした腕を、肘を曲げずに横から上に上げる。
  • 横向き壁上がり・・・壁から少し離れた位置に立ち、患側の手のひらを真横につく。腕を伸ばしたまま指で壁をたぐるように腕を上げる。
  • 腕の後ろ上げ・・・患側の手首にタオルを巻き、肘を伸ばしたまま健側の手で後ろに上げる。
  • 腕の前上げ・・・手のひらを内側にし、肘を伸ばしたまま上げて5秒止める。
  • 腕伸ばし・・・両腕を頭の上の後ろで組み、患側の肘が耳につくように健側の手で引く。

徒手リンパドレナージ

 リンパドレナージは、浮腫部位に合わせたドレナージの方向と力加減が重要で、一般のマッサージとは異なるので注意します。

 リンパ液の流れを促すには、強い圧はかけずに手のひらを皮膚に密着させ、皮膚表面をずらすような感覚でゆっくりと行います。オイルやクリームなどは使いません。初めは手技を確認しながら実施するとよいでしょう。

 セルフドレナージの基本は、流れ込む先をまず開く必要があるので、最初にリンパ液が静脈と合流する鎖骨下から行い、次に腹部→健側の腋窩→患側の鼠径部とリンパ液が流れ込む道筋をつくり、最後にむくんでいる部位のドレナージをします。1回15~20分で1日2~3回ほど行います。

  • 肩回し・・・鎖骨を意識しながら、大きく後方に肩を回す。10回ほど行う。
  • 腹式呼吸・・・手のひらを腹部にあて、臍を中心に時計方向に優しくなでる。ゆっくりと腹部を膨らませる感じで息を吸い、吐き出す。5回ほど行う。
  • 右腋窩のドレナージ・・・健側の腋窩に手のひらをあて、円を描くように。20回ほど行う。
  • 胸のドレナージ・・・健側の腋窩から患側の腋窩へ胸を横切るように行う。健側の胸から始め、少しずつ(3カ所ぐらいに分けて)患側の胸へ移動する。
  • 背中のドレナージ・・・4と同じラインで背中側を横切るように行う。健側の背中から始め、少しずつ(3カ所ぐらいに分けて)患側の背中へ移動する。
  • 左鼠径部のドレナージ・・・患側の鼠径部に手のひらをあて、円を描くように。20回ほど行う。
  • 左鼠径部から左腋窩へのドレナージ・・・患側の鼠径部から始め、少しずつ(5〜6カ所ぐらいに分けて)患側の腋窩へ移動する。
  • 左肩のドレナージ・・・患側の肩の外側を、4の胸を横切る線に向かって行う。
  • 左上腕(二の腕)のドレナージ・・・上腕を前面と後面に分けて8の肩の外側に向かって行う。腋窩に近いほうから始め、肘のほうへ、2〜3カ所に分けて行う。左腋窩に向かってドレナージしてはいけない。
  • 左肘のドレナージ・・・肘の前面と後面を、円を描くように行う。
  • 左腕の肘から下へのドレナージ・・・手首に近いほうから肘に向かって、2〜3カ所に分けて行う。
  • 左手のドレナージ・・・手首、手の甲、指を上に向かって、指先で小さな円を描くように行う。
  • 最後に・・・これまでドレナージしてきた道筋を、右腋窩のドレナージまで逆にたどって戻る。腹式呼吸と肩回しを行う。

リンパ浮腫ケアの訓練・指導のポイント

禁止事項だけでなく代用案を提示する

 日常活動に関して禁止事項だけを指導されると、患者さんの意欲は低下します。そこで、禁止事項を挙げたら、その理由とともに代用案や対応策を提示します。

 例えば、むだ毛の処理についてです。いくら注意していても皮膚が傷つくことはあるので、傷ついたら消毒して細菌の侵入を防ぐという対応方法を伝えます。あるいは電気シェーバーのような比較的刺激の少ない方法を用いるなど、患者さんの意欲を削がないような指導が必要です。

相談窓口を明確にする

 気をつけてはいても、スキントラブルや困難なことは生じてきます。何かが起こったとき、患者さんや家族が自宅で困らないように、相談する窓口を明確にしておくことが安心につながります。

ドレナージは流す方向が大切

 リンパドレナージは、流す方向を間違えると症状を悪化させてしまいます。患者さんの患肢を確認して、間違った方向に行っていないかを確めながら指導します。

蜂窩織炎について

リンパ浮腫増悪の要因?!
 リンパ浮腫では、皮下組織に水分や蛋白質などが溜まり、循環が悪くなっています。そのため、わずかな細菌が侵入しただけでむくんでいる腕や足に一気に細菌感染し、皮下組織に化膿性炎症を起こします。この状態を蜂窩織炎といいます。

 1. 鍼や灸
 2. 深爪
 3. ささくれ
 4. 虫さされ
 5. むだ毛の処理
 6. ペットの引っかき傷
 7. 日焼け
 8. 注射

 などで起こすことがあるので注意が必要です。

【どんな症状?】

 浮腫部位に赤い斑点や広範囲の発赤、38℃以上の高熱、浮腫部位の痛み、浮腫の悪化など

【対処方法は?】

 リンパドレナージ・圧迫療法の中止、患肢を冷やし安静にする、医師の診察を受ける

(『ナース専科マガジン2010年9月号』より改変利用)

ページトップへ