【連載】安全・確実に実施する!与薬のポイント

第13回 漢方薬の今さら聞けないQ&A

解説 西村 甲

鈴鹿医療科学大学 鍼灸学部 教授

近年、保険適用の漢方薬が増え、患者さんのなかでも漢方薬を常用している人はめずらしくなくなってきました。そうなると気になるのが副作用や飲み合わせ。そんな漢方薬についての素朴なギモンに答えます。


Q 現在どれくらいの漢方薬が保険適用で処方されているの?

A 1976年に保険薬として収載されて、現在は147種類のエキス剤と1種類の軟膏(紫雲膏)が保険適用となっています。

エキス剤は、煎じ薬を乾燥させて顆粒にし、賦形剤を入れて保存できるようにしてあるものです。また、生薬の形でも保険適用のものがあるので、煎じ薬もある程度保険でカバーすることができます。

Q 漢方薬にはどんな剤型があるの?

A 漢方薬の剤形は、主に散剤、湯剤、丸剤、エキス剤に大別できます。基本的に漢方薬は煎じ薬で、昔から生薬を細かく刻み、挽いて粉薬にしていました。これが散剤で、「当帰芍薬散」などのように末尾に散という文字がついています。

湯剤は煎じ薬のことで、「葛根湯」などのように末尾に湯がつきます。現在よく用いられているエキス剤は、この煎じ薬を乾燥させたものです。

丸剤は散剤を蜂蜜などで練り固めたものをいい、「八味地黄丸」などのように丸がつきます。湯剤以外の漢方薬を煎じ薬として用いる場合には、例えば「当帰芍薬散」なら「当帰芍薬散料」、「八味地黄丸」なら「八味地黄丸料」と表現されます。

Q 病院等で処方されるエキス剤とは、どんなもの?

A 漢方薬の湯剤、つまり煎じ薬をフリーズドライにしたものです。

成分は湯剤とほぼ同じなのに、煎じる必要がなく、お湯で溶いてもそのままでも飲める利点があります。メーカーによっては錠剤やカプセル剤もあります。

また、湯剤や散剤が産地や天候などによって成分にばらつきが生じやすいのに比べ、品質が比較的均一化されている点も大きな特徴です。

ただし、湯剤のようにオーダーメイドの処方ができないため、必要な生薬成分が含まれていないときには、複数のエキス剤を組み合わせて服用することもあります。

Q 漢方薬の基本的な服用方法は?

A 1日3回、食前(食事の30分前)もしくは食間(食後2時間)の服用が基本です

これは空腹時の服用のほうが吸収がよいと考えられるためです。もっとも、食後でも食物と混じることによって成分の吸収が遅くなるだけで、薬効が阻害されることはありません。

患者さんのなかには胃腸が弱く、空腹時の服用は胃に障るという人がいるかもしれませんので、その場合には食後の服用を勧めます。

たとえ薬を飲み忘れた場合でも、西洋薬の場合はある程度時間を空けるか、もしくは1回服用をやめることが多いのですが、漢方薬では食前の服用を忘れたら、食直後に服用しても問題ありません。決まった時間に服用することよりも、毎日服用することのほうが大切です

Q 漢方薬にも副作用があるの?

A 漢方薬にも多くないとはいえ副作用はあります

特に注意したい生薬が甘草、大黄、附子です。甘草は、多くの漢方薬に含まれ、味噌や醤油の原料などとしても使われるなど、食品にも添加されているため、長期間の服用によって過剰投与となり、浮腫、血圧上昇、低カリウム血症などを引き起こすことがあります。

アルドステロン症の患者さんやミオパシー、低カリウム血症のある患者さんには禁忌となります。

大黄は、瀉下剤(下剤)の代表的な生薬で、下痢、腹痛、骨盤内うっ血などの副作用があります。子宮収縮作用、骨盤内臓器の充血作用があるため、妊婦への使用には注意が必要です。

附子は、鎮痛、温補、強心作用がありますが、酔い、のぼせ、しびれ感、冷汗、悪寒、胃痛、チアノーゼ、喘鳴などさまざまな中毒症状があります。副作用には、運動麻痺、下痢、知覚麻痺などがあります。

妊娠中の服用に関しては、胎児の奇形への関与が最も大きな問題として挙げられます。しかし、これに関してはデータがないため、リスクの有無、確率について確かなことはいえません。

したがって、心配な人の場合は服用を中止します。胎児の身体が出来上がってきた段階で服用の再開を検討してもよいでしょう。なお、授乳中では、特に大黄含有製剤についての注意が必要です。

次のページでも、引き続き「漢方薬のギモン」について解説していきます。

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