【連載】不安定な血糖値はこうしてコントロール!

「血糖」の働きとコントロールの必要性

解説 松田昌文

埼玉医科大学総合医療センター 内分泌・糖尿病内科 教授

身体を危険から守る働きをする「血糖

「血糖」とは、血液中のブドウ糖のことです。私たちは、主要なエネルギー源として、食事により炭水化物を体内に取り込みます。炭水化物はブドウ糖が何千個とつながったもので、身体に入ると消化器官の酵素で分解され、単糖類であるブドウ糖となって小腸から吸収されます。

そして、ブドウ糖は肝臓に送られ、一部は多糖類であるグリコーゲンとして肝臓に貯蔵され、残りの大部分は血液によって全身の細胞に供給されます。これが血糖です。

ブドウ糖を必要とする臓器は、おもに脳細胞や筋肉細胞、神経細胞などがありますが、中でも脳細胞はブドウ糖が唯一の栄養源です。ブドウ糖がなければ働くことができず、その必要量は1日に120g。もしこのブドウ糖が不足すれば、酸素不足同様、意識が保てなくなるなど、脳の作用そのものに影響を与えかねません。

私たちの身体はストレスがかかると血糖が上昇するようにできています。特に入院してくる患者さんの中には、脳卒中や心筋梗塞、外傷などのストレスにより、身体からカテコラミンが放出され、血糖値が上昇している人が多くなります。

これは、エネルギー源となるブドウ糖を多く体内に行き渡らせて、身体を危険(ストレス)から守るため生じるもの。身体のさまざまな機能を司る脳や神経を働かせ、筋肉を働かせる必要があるからなのです。

血糖の表記は「BS」から「BG」「PG」へ

血液中に含まれるブドウ糖(glucose)つまり血糖は「BG(blood glucose)」と表記されます。一方、血漿中に含まれるブドウ糖は「PG(plasma glucose)」とされます。

ブドウ糖を「sugar」、血糖を「BS(blood sugar)」と表記しているところもあるようですが、日本糖尿病学会用語集ではブドウ糖を「glucose」としており、統一する流れになっています。

検査室に測定を依頼した場合は、解糖阻止剤と抗凝固剤を添加した血液を遠心分離器にかける生化学検査によって行われるため、厳密には血漿中のブドウ糖値「PG」となるのですが、検査票には一般的に「Glu」として表記されていることが多いようです。

血糖コントロールが必要なのはこんなとき

正常とされる血糖値の基準値は、空腹時で70~109mg/dl食後2時間で140mg/dl未満とされています。

ちなみに、早朝空腹時血糖値が126mg/dl以上随時血糖値200mg/dl以上などの場合は、糖尿病型と診断されます。この基準値を目安に、血糖値が高い場合(高血糖)、低い場合(低血糖)で、正常値に戻すためのコントロールを行わなければなりません。

血糖値はおもにインスリンによってコントロールされます。血糖値が上昇すると、膵臓がそれを感知してランゲルハンス島のβ細胞からインスリンを分泌します。

このインスリンが、筋肉細胞や肝細胞、脳細胞、脂肪細胞が血糖を取り込むのを助ける働きをするため、やがて血糖値は下がります。このように、インスリンによって血糖は一定になるように制御されています。

糖の流れとインスリンの働き

糖の流れとインスリンの働き

高血糖の場合

おもな要因

  1. 糖尿病
  2. 手術侵襲によるストレス
  3. ステロイドなどの薬剤の使用
  4. 悪性腫瘍の影響
  5. 疼痛

また、何らかの原因で、インスリンが不足(インスリン分泌不足)した場合や、インスリンの働きが不十分で、細胞がブドウ糖を取り込みにくくなっている場合に起こります。

おもな症状・状態

血糖値が150~250mg/dl程度の高血糖であれば、ほとんど症状は出ません。しかしそれ以上の高血糖状態が続くと、喉が渇いたり、尿量が増加するなどの症状が出始めます。

喉の渇きは、血糖濃度を薄めようとする本能的防御作用から起こります。また尿量増加は、浸透圧作用によって生じるものです。

血管の外から内側へ水分を取り込むことで血管内のブドウ糖の濃度を下げようとし、同時に血管内の血液(水分)量が増加するので、増えた水分を尿として身体の外に排泄しようとする働き(浸透圧利尿)が起こるのです。

さらに問題になるのは脱水です。この浸透圧利尿によって、体内の水分がどんどん排出されてしまい、脱水になります。この状態が続くと、昏睡状態に陥ることもあり大変危険です。高齢者や薬剤の影響などで脱水傾向にある人には、特に注意が必要です。

低血糖の場合

おもな要因

  1. インスリンの過剰投与
  2. 食事量の減少
  3. 運動量の増加

そのほか血糖が下がり過ぎる場合としては、インスリノーマ(インスリン産生膵島細胞腫)の患者さんや、尿から糖が漏れている人もいますが、ほとんどはSU薬を服用している糖尿病患者さんです。

おもな症状・状態

血糖値が50~60mg/dl未満に低下した状態です。ただし、低血糖への対応が遅れると、昏睡や脳機能障害をきたすなど、非常に危険です。臨床では70mg/dl未満(妊婦は60mg/dl未満)を低血糖として対応します。

症状は、交感神経刺激症状と中枢神経症状に大別されます。最初に現れるのが動悸やふるえ、冷汗、頻脈などの交感神経刺激症状です。

さらに低血糖が進み、血糖値が50mg/dl未満になると、頭痛や眠気、イライラ、目のかすみなどの中枢神経症状が現れ、さらに進行すると錯乱や行動障害が、30mg/dl未満になると昏睡に至ります。

また、無自覚低血糖では、このような症状が出ずにいきなり意識障害が起こるため、非常に危険です。道路交通法が一部改正になり、現在では自動車運転免許の取得や所持が拒否・取り消し、あるいは停止になることがあります。

患者さんが無自覚低血糖であることを隠した場合には罰金が科せられ、医師は、患者さんの同意がなくても、任意で公安委員会に届けられることになっています。

高血糖時はPET-CTはNG

がんや脳血管障害、虚血性心疾患などの診断の際に行われるPET-CT検査は、高血糖の場合(200mg/dl以上)には行われません。

この検査は、ブドウ糖に似た成分の検査薬(FDG:fluorodeoxy glucose)を投与し、PETによって組織の糖代謝の様子を画像撮影し、CTの画像と融合させることで患部を診断します。

ですから、高血糖の状態では、患部以外の組織でも糖代謝がなされたように画像に現れてしまうことがあり、正確な結果が判読しにくくなってしまうためです。

(『ナース専科マガジン』2014年9月号より改変引用)

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