【連載】不安定な血糖値はこうしてコントロール!

【術前】血糖コントロールの実践方法

解説 松田昌文

埼玉医科大学総合医療センター 内分泌・糖尿病内科 教授

【目次】


▼術前・術後の看護について、まとめて読むならコチラ
術前・術後の看護(検査・リハビリテーション・合併症予防など)
▼関連記事
【糖尿病】血糖コントロールの指標と方法


ケアのポイント

 1. コントロール不良の場合はインスリンに切り替える
 2. 高血糖への対応
 3. インスリン強化療法によりコントロールする場合もある
 4. 最初に血糖値、HbA1c、治療内容を把握する

【「術後」についてはこちら】
* 【術後】血糖コントロールの実践方法

術前における血糖異常の原因

 1. 基礎疾患に糖尿病があり、血糖コントロールが不十分で高血糖状態にある
 2. 重症外傷によるストレス
 3. がんや感染症による影響

 血糖コントロールが不良なままで手術を行うと、創の治りが遅い上に感染症を合併するリスクが高くなってしまいます。

どうやってコントロールする?

コントロールが良好な糖尿病患者さんの場合

 現在行っている治療内容を手術前日まで継続します。ただし、SU薬やビグアナイド薬を服用している患者さんの場合は、手術の2日前から中止してインスリン注射に切り替えます

 SU薬(アマリール®)やビグアナイド薬(メトホルミン)は、長時間作用するため、絶食や手術侵襲によって、術後に乳酸アシドーシスを起こすリスクがあるからです。

コントロールが不良な糖尿病患者さんの場合

 基本的にインスリン注射に切り替えます。特にSU薬2mg/日以上の高用量を服用している場合は注意が必要です。

 血糖コントロールが不良な場合、手術は血糖値を安定させてから行うのがベストです。可能であれば術前に1週間程度の血糖管理入院を行い、インスリン強化療法で血糖を低下させます。140mg/dl未満(空腹時)がめやすですが、150mg/dl未満としているところもあるようです。HbA1cは7.5%以下となります。

 ただし、脳出血や外傷などで緊急度が高く手術が延期できない場合は、少なくとも200mg/dl未満までコントロールします。この場合、麻酔科医がインスリンを静脈に投与し、強制的に血糖値を下げます。静脈内のインスリンの半減期は5分程度であり、頻回に血糖値測定もするので、低血糖の心配はありません。

 1型糖尿病やステロイドを大量に使用している患者さんの場合には、シリンジポンプでインスリンを持続投与し、術前の血糖を90mg/dl程度にするなど、厳密なコントロールが必要です。

術前の血糖値のめやす

 1. 空腹時血糖値:140mg/dl未満
 2. 食後2時間血糖値:200mg/dl未満

具体的にはどんな方法で行う?

 手術前日のコントロールは、午前中の手術の場合、夕食は絶食にし、15時ぐらいから血糖測定を行いながら、インスリン流量をコントロールするのが望ましいでしょう。手術が午後なら、当日の8時ぐらいからのコントロールになります。

 術前に病棟でインスリン強化療法を行う場合は、基礎分泌のためのインスリンと追加分泌のためのインスリンをしっかり分けて考えることが大切です。

 基本的に、基礎分泌をカバーする持効型溶解インスリン(ランタス®など)を朝に、追加分泌分として超速効型インスリン(ノボラビット®など)を各食前に皮下注射します。ですから、絶食時には追加分泌分のインスリンは不要で、基礎分泌分の持効型溶解インスリンだけを投与します。その量は麻酔科の医師と相談して決めます。

 また、基礎分泌のカバーであれば、手術前日が丸1日の絶食なら、例えば午前6時、正午、午後6時夜中の12時の合計4回、速効型インスリンの皮下注射を行うことでも可能です。

ケアの注意点 事前の情報収集がポイント

 まずは入院時の血糖値、HbA1cを測定し、患者さんの耐糖能、血糖コントロールの状態を確認することが大切です。

 糖尿病治療中の患者さんであれば、食事療法や運動療法だけなのか、薬物治療を行っている場合はどのような経口薬を服用しているのか、インスリン治療の場合は製剤の種類や用法の種類は何かなど、あらかじめ情報を得ておく必要があります。現在は病棟薬剤師がいる施設も多いので、患者さんの服薬情報を共有・連携して、情報を得られるようにするとよいでしょう。

 糖尿病患者さんが手術適応になった場合、外科医と糖尿病専門医らがチームになって治療にあたることが少なくありません。この場合、看護師には連携のつなぎ役が求められるので、常に治療の過程と経過を把握しておくことが重要になります。

(『ナース専科マガジン』2014年9月号より改変引用)

ページトップへ