【連載】不安定な血糖値はこうしてコントロール!

【がん化学療法中】血糖コントロールの実践方法

解説 松田昌文

埼玉医科大学総合医療センター 内分泌・糖尿病内科 教授


ケアのポイント

  1. がんの影響、糖尿病の両面から高血糖になる
  2. 易感染状態を悪化させないためにもコントロールが必要
  3. ターミナル患者さんには苦痛軽減を優先
  4. ステロイドの作用を見極めたインスリン投与を行う

どんな異常が起こる?

がん患者さんは、糖尿病の基礎疾患がなくても高血糖状態の人が少なくありません。血糖を上げる要因としては、がんに対する精神的なストレスがん細胞による神経の圧迫や、浸潤によって起こる痛みなどがあります。

また、がんによる症状が出ていない人でも、がん細胞自体が放出するサイトカインがインスリン抵抗性を高めるため、血糖が上昇すると考えられます。

さらに、制吐薬や抗炎症薬としてがん化学療法の副作用を予防したり、がんを治療するためのステロイドも、血糖値上昇の大きな要因となります。

一方で、がん細胞は糖の消費が大きいので、白血病や大きながん細胞の場合は、低血糖の要因になることもあります。

どうやってコントロールする?

抗がん剤に対するコントロール

抗がん剤の中には、白血球を減少させる作用のあるものもあり、非常に細菌に感染しやすい状態となります。ここに、高血糖による免疫抑制が加わると、易感染のリスクはさらに高まります。

そのため、そのような抗がん剤を使用した化学療法では、できる限り血糖コントロールすることが重要です。しかし、ターミナルのがん患者さんに対し、低用量の抗がん剤が投与されている場合には、血糖の厳格なコントロールは不要といえるでしょう。血糖測定には痛みが伴うので、その回数は最小限にしたいものです。

ただし、がんの重症終末期では、急速な低血糖が起こることがあります。それは多臓器障害により膵臓が崩壊して、一度にインスリンが大量に放出するためと考えられます。その場合は、50%ブドウ糖液の輸液を行います。

糖尿病患者さんに抗がん剤による食欲不振がみられる場合、食事量が減っているのに、それまでの血糖コントロールを継続していると、血糖値が下がりすぎて低血糖の可能性が高くなります。

食事量が不安定な場合は、摂取した主食(炭水化物)に応じて、食直後に超速効型インスリンを投与します。ただし、中間型インスリンや持効型溶解インスリンの追加投与を行う場合は、インスリンを混注した輸液には注意が必要です。

中間型・持効型溶解インスリンの皮下注射と、点滴内インスリン混注を同時に行うと、低血糖を起こす危険が必ず増大します。

肝臓がんの場合は、食後に500〜600mg/dℓといった著しい高血糖になることがあります。肝臓がインスリンを取り込めなくなっているためで、多めのインスリン投与が必要です。

ステロイド使用中のコントロール

ステロイドの影響による高血糖の特徴は、開始後早期から発現し、食後の血糖値上昇が大きいことです。また、ステロイドの投与量は朝に多くなるため、特に昼食後の血糖値が最も高くなり、夕食後まで影響します。そのため、昼食後2時間は血糖値のチェックも必要です。

ステロイドによる高血糖には、おもにインスリン強化療法で対応します。基本的には1日3回、超速効型インスリンを食直前に注射し、追加分泌を補います。それに加え、1日1回(おもに朝)、持効型溶解インスリンを注射し、基礎分泌を補う場合もあります。糖尿病患者さんも、そうでない患者さんも同様です。

ただし、経口薬療法を行っている糖尿病患者さんは、経口薬を継続し、1日3回の超速効型インスリンを追加することもあります。

この場合、インスリン製剤の種類や投与量は、ステロイドの作用時間、種類、投与量によって決まってきます。例えば、プレドニン®という作用時間が6時間と短いステロイドに対して、作用時間が約24時間といったインスリン製剤を使うのはよくありません。

デカドロン®やリンデロン®など作用時間が2〜3日と長いタイプのステロイドに、作用時間の長いインスリン製剤を使います。

朝・昼・夕に超速効型インスリンを注射し、それにレベミル®(持効型溶解インスリン)や速効型インスリンを朝に加える方法もあります。

食事の間隔が長い人の場合、超速効型インスリンでは4時間しか効かないので、作用が切れたときに血糖値が跳ね上がります。ベースにレベミル®を投与しておくことで、それを防ぎます。

デカドロン®やリンデロン®といった作用時間の長いステロイドを使用した場合は、化学療法の翌日だけインスリンを倍増します。

プレドニン®が24mg以上投与されている場合も、インスリンの投与量は「3〜4単位→6〜8単位」といったように、通常の倍にします。血糖値の上がり方には限度があるので、インスリンの量も通常の倍ぐらいでとどめておきます。

一方、ステロイドの投与を止めたときには、インスリンも中止します。プレドニン®の投与が2〜3日だけなら、血糖値もそれに合わせて元の値に戻ります。

しかし、プレドニン®をゆっくりやめる、例えば20mg、15mg……と徐々に減らしていくような場合は、インスリンもそれに比例して減らすようにします。

ただし、いったんインスリンを増やしてから、減少していくのがポイントです。また、ステロイドの量を変更する場合は、同時にインスリンの量も調節する必要があります。

ケアの注意点 ステロイドによる影響を考慮したケアを

ステロイドの影響には個人差があります。投与直後に高血糖になる人もいれば、数週間後に高血糖をきたす人もいるので、定期的に血糖測定を行いながら、注意して観察していくことが大切です。

インスリン製剤の種類や作用時間を知っておくとともに、ステロイドの種類や作用時間についても知っておくとよいでしょう。

ステロイドを使用すると、血糖値は高めになりますが、意識がなくなるような高血糖になることはないので、患者さんには「少し血糖値が高めでも、尿から糖が出るので、水分さえしっかり摂っていれば大丈夫ですよ」などと伝え、患者さんがパニックにならないように支援してください。

ステロイドには食欲を高める作用や、体重増加の作用があるので、ステロイド服用中は、糖尿病での食事療法と同じように、高血糖を防ぐための食事指導も必要です。

また、糖尿病でない患者さんの場合、抗がん剤やステロイドだけでも心理的な負担が大きいのですが、それに加えインスリンまで打つことになると、かなりの不安が生じます。

ステロイドの減量に伴い、インスリンも減量できることや、ステロイドの治療が終われば、インスリンもやめることができることを患者さんに伝え、安心して治療に専念できるように支援します。

(『ナース専科マガジン』2014年9月号より改変引用)

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