【連載】不安定な血糖値はこうしてコントロール!

【感染症】血糖コントロールの実践方法

解説 松田昌文

埼玉医科大学総合医療センター 内分泌・糖尿病内科 教授


ケアのポイント

  1. 糖尿病の有無にかかわらず高血糖になる
  2. 糖尿病は易感染状態になる
  3. 強化インスリン療法によるコントロールを行う
  4. 持効型溶解インスリンの使い方がポイント
  5. スケールを使用する場合も血糖測定が重要になる
  6. 退院後のコントロールにも配慮する

どんな異常が起こる?

感染症になると、炎症性サイトカインやストレスホルモンが増加し、それによって血糖が上昇し高血糖状態になります。

炎症性サイトカインにはTNF-α(腫瘍壊死因子)があり、これは末梢でのインスリン抵抗性を増加させ、膵β細胞でのインスリンの分泌を低下させます。さらに炎症性サイトカインは、インスリン拮抗ホルモンの分泌を上昇させます。

また、ストレスホルモンであるコルチゾールは肝臓における糖新生を促進し、末梢でのインスリン抵抗性を増加させ、グルカゴンを上昇させます。

同じくカテコラミンは糖新生の増加やインスリン抵抗性の増加に加え、膵β細胞でのインスリンの分泌を低下させます。そのため、基礎疾患として糖尿病がなくても、感染症になると血糖値が高めの状態になることがあります。

高血糖では好中球機能低下により易感染状態になります。糖尿病患者さんの場合、免疫細胞の機能低下、脱水、血管障害、神経障害、栄養障害なども生じ、これらが複合的に関連し合い、感染症になりやすくなり、重症化のリスクも高まります。そして、感染症を起こすことで、さらに高血糖になるという悪循環に陥ります。

糖尿病患者さんがなりやすい感染症としては、一般的なウイルス感染や細菌感染のほか、尿路感染、肺炎、胆嚢炎、足病変などがあります。

どうやってコントロールする?

感染症で入院してきた患者さんに高血糖が認められたら、一般的にはインスリン強化療法で血糖コントロールを行います。

感染症の場合、さほど複雑なコントロールは求められませんが、持効型溶解インスリンの投与がポイントになります。

そのポイントをAさんの事例を参考に解説します。

Aさんの事例

Aさん(40歳、男性)は建築現場で足を怪我し、しばらく自分で消毒したり治療したりしていましたが、5日前から痛みと腫れがひどくなり、排膿もあったので外来を受診。抗菌薬と内服薬で治療を受けましたが、発熱と全身倦怠感のために入院することになりました。

入院時の血糖値は465mg/dlと高く、HbA1cは12%。入院後、血糖が高いので絶食となり、生理食塩水の点滴を受けました。

入院2日目には朝の血糖値は102mg/dl、尿ケトン体は陰性となりました。食べられるというので抗菌薬以外の点滴は中止となり、スライディングスケールでインスリン指示が出されました。ところが、高血糖と低血糖があり、血糖管理がうまくいきませんでした。

Aさんの血糖値(mg/dl)は以下の通りでした。

入院2日目

朝食前:101mg/dl、昼食前:240mg/dl、夕食前:330mg/dl、就寝前:183mg/dl、午前0時:79mg/dl

入院3日目

朝食前:99mg/dl、昼食前238mg/dl、夕食前:143mg/dl、就寝前:238mg/dl、午前0時:54mg/dl

医師からの指示

  1. 毎食前と就寝前に、血糖値によりレギュラーインスリン(速効型インスリン)を皮下注射    ~149mg/dl 0単位 150~199mg/dl 2単位 200~249mg/dl 3単位 250~299mg/dl 4単位 300~349mg/dl 6単位 350~399mg/dl 8単位 400~  mg/dl ドクターコール
  2. 低血糖時(69mg/dl以下)にはブドウ糖10gを服用させ、30分後に再検し、80mg/dl以上を確認

Aさんは糖尿病ではありませんが、肥満が顕著で、ベースにインスリン分泌の不足かインスリン抵抗性があったものと思われます。2日目のAさんの朝食前血糖値は149mg/dl以下なので、インスリン投与は行っていません。すると、昼食前血糖値が上がったためインスリンを投与。夕食前に様子をみて、就寝前に医師の指示通りインスリンを2単位投与しました。

夜間に低血糖を示し、翌朝は残っているインスリンの作用により低めでしたが、昼食前、夕食前には再度上昇。インスリンによるコントロールを続けることになりました。この事例で何が問題かというと、血糖値の上下が激しく安定しないことです。

その理由は、食事量を考慮していないスライディングスケールの使用です。確かに1日目は絶食でしたが、2日目以降は食事をしているので、スライディングスケールの変更が必要になるのです。しかし、この状況のままでも、就寝前のインスリン投与を見直すことで、ある程度血糖値を安定させることができます。

人間は、尿糖排泄と基礎代謝により朝になると血糖は下がるという作用があります。しかし、就寝前にインスリンを投与しているために、夜中だけでなく、その作用の影響が継続し、朝にも低血糖を起こしていると考えられます。ですから、就寝前のインスリン投与をやめることが必要です。

やめても、時間の経過とともに血糖値は下がり、朝には落ち着いていることが予測できます。この場合、各食事前、1日3回血糖測定を行い、インスリン投与をし、様子をみていくという対応になるでしょう。就寝前のインスリン投与がなくなれば、夜中0時の測定もしなくてすみ、Aさんに苦痛を与える必要もなくなります。

また、就寝前に血糖値測定を行い、その数値をみると、おそらく高血糖が気になってしまうでしょう。そのため、むしろ就寝前の測定をしないという選択肢が適当であると思われます。

以前は作用時間の長い持効型溶解インスリンがなかったので、就寝前や夜中の0時、3時にインスリンを注射していました。夜中に起こされる患者さんも、インスリンを注射する医師や看護師も大変でした。

しかし最近は、作用時間が長い持効型溶解インスリンが出ているので、それを朝に注射しておけば、夜中まで作用が持続します。持効型溶解インスリンを就寝前に投与するのは、今の時流から外れているといえるでしょう。

(『ナース専科マガジン』2014年9月号より改変引用)

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