【連載】Newsのツボ

トリアージの歴史。救急搬送までに行われる4段階のトリアージ

解説 山本保博

東京臨海病院病院長/医学博士

災害医療で使用されているというイメージが強いトリアージ。
最近では、院内でも使用されることもあります。
今回は、どのような場面でトリアージが必要とされているのかを解説します。

(この記事はナース専科マガジン2012年6月号を改変利用したものです。)


ナポレオンの時代にフランス軍が始めたもの

皆さんご存じのとおり、トリアージとは、緊急性の高い患者さんを優先するための緊急度・重症度判定のこと。

ブドウの実やコーヒー豆などを選りすぐる「選別」という意味のフランス語「トリアージュ(triage)」を語源とするとされています。

ナポレオンの時代にフランス軍が始めたものといわれ、兵士として復帰できる人を優先的に治療して前線に送り出す──戦力維持のために、戦場で用いられた選別法でした。

阪神・淡路大震災を契機に標準化

それが日本の救命救急の現場に導入されるようになったのは、昭和40年代のこと。

いわゆる交通戦争によって交通事故が激増。

緊急度・重症度の判定が必要となり、事故現場でトリアージが行われるようになりました。

わが国で本格的にトリアージに注目が集まったのは、1995年の阪神・淡路大震災のときです。

これを契機にそれまでまちまちだったトリアージタグの様式が統一、標準化されました。

さらに、2005年の福知山線脱線事故でもその有用性を発揮し、災害医療の現場にトリアージが根付くことになりました。

一般病院への導入の背景

そして今や、トリアージは急病や一般外傷への対応時にも必要度が高まっています。

背景にあるのは、高齢傷病者の増加です。

これに伴い救急搬送件数も増え、救命救急センターや基幹病院が常に満床で新たな受け入れに備えられない現状があります。

核家族化や高齢者世帯の増加により、相談相手がいない不安や移動手段がないなどの理由による搬送要請も増えています。

これらに対応し、より緊急度の高い患者さんを優先的に治療するため、救急搬送の際にも導入されました。

4段階による緊急度の判定

消防庁は09年に消防法の改正を行い、各都道府県に対し、傷病者の搬送および受け入れについての基準策定と適切な搬送先選定のルール作りを義務付けました。

これにより、1~4の段階はすでに整備が進められており、1段階については、来年度から実施する方針で取り組みが進められています。

消防庁は救急搬送までの過程で、「4段階でトリアージ判定をする」としています。

1段階 家庭自己判断

一般市民自身が、自覚症状を中心とした情報をもとに119番通報、電話相談、もしくは自力で受診するか否かを判断する段階

2段階 電話相談

「♯7119」(一部地域で行われている電話による救急相談等)および地域の医療機関検索システム等の情報提供段階

3段階 119番通報

通信指令員が、消防指令センター内で通報者から提供される情報をもとに緊急度を判定する段階

4段階 現場搬送

救急救命士や救急隊員等が、傷病者を直接観察し緊急度を判定する段階

Nurse’s Comments

●家庭でのトリアージはなかなかうまく機能しないと思います。パンフレットなどを配布しても、医療者のような感覚で行うことは無理なのでは。家族の急変に動転して冷静な判断ができないのではないかと思います。(りっこ 秋田県)

●災害時や急変時などに素早い判断をするにはトリアージの知識が必要。一度訓練でトリアージをしましたが、まったく自信がありませんでした。勉強しなければと思います。(まことちゃん 神奈川県)

●もともと災害医療に興味があり、大学でも災害訓練について研究しました。看護師となった後は院内のトリアージ訓練に参加。災害時はもちろん、日頃の外来診療でも役立つと思います。(ルヵ 和歌山県)

●軽症なのにタクシー代わりに救急車を呼ぶ人が少なくないので、家庭でのトリアージもやむを得ないと思う。(リーフレタス 大阪府)

●医学的知識がない人が統一した形でトリアージするのは難しい。わかりやすい目安を提示すれば可能かもしれないが。(み 愛知県)

●各家庭にしっかり周知させるのは難しいと思います。でも、導入することで、救命率が上がったり、タクシー代わりの救急車利用が減ることは期待できると思います。消防の人もより素早くトリアージできるようになり、病院に来てからもスムーズに対応できるようになって、これまで以上に協力し合えるようになるといいと思います。(みっきー 岡山県)

●家庭でのトリアージが浸透すればわからないが、適切に判断できるのか。そのときの判断に一生後悔の念を持ち続ける人も出てくるのでは。また、救急搬送を強く希望する人には効果がないように思う。(ぶひ子 奈良県)

●正しいトリアージができるのであれば、家庭に取り入れることもよいと思う。むしろ正しく行うためにどのように普及していくかが課題ではないか。(mai 京都府)

●家庭でのトリアージはとてもよいことだと思う半面、中途半端な知識で誤った判断をしてしまい、取り返しの付かないことになってしまったことを考えると怖い。(うみ 岐阜県)

●一般家庭の人にトリアージの知識を持ってもらうには限界があるのではないでしょうか。誤った判断で大切な身内を失いかねない危険もあり、もし行うのではあれば、専門家による電話相談窓口の整備など、サポート体制を万全にすべき。(クリクリ坊主 群馬県)

●知識の普及にもなるので、家庭で行うこともよいのでは。(pm 愛知県)

●震災時、避難所で具合が悪くなった人がいて、救急車を要請すべきか、クリニックへ連れて行くべきか迷ってしまいました。トリアージの必要性を感じています。(咲希 宮城県)

●家庭でトリアージをしたとき、判別を誤ってしまった、急変した、対応できなかったというようなときの責任の所在ははっきりしているのでしょうか。一般の人に判別させるのは危険のように感じます。(たかゆか 東京都)

●救急救命士の資格を持っており、以前の勤め先が災害拠点病院だったので、何度も救急訓練をしました。でも、何度行ってもトリアージの診断基準は難しいなぁと思います。(トトロ 愛媛県)

●家庭であっても、きちんとした知識を持つことができるならよい方法だと思います。ただ、家族のこととなると感情も絡んでくるので、的確な判断ができるのか……。私自身も不安です。(なつ 島根県)

●本当に家庭でも判断できるようになれば、よいことだと思う。命にかかわることに国民が感心を持つことで、そのほかのこともレベルアップすればよい。(みるく 香川県)

●ハードとソフトが限られた状況の中、あるものを最大限に有効活用するには、トリアージは絶対に必要。(YO 埼玉県)

●家庭でのトリアージも大切ですが、交通手段がない、高齢世帯で判断できないなどの事情を持つ軽症者もいるので、そういう人が自力で受診できる社会資源の確立も検討すべきだと思います。でないと、救急車の不適切利用は減らないと思います。(yuka 兵庫県)

(『ナース専科マガジン』2012年6月号から改変利用)

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