【連載】検査値の読み方

【検査値】時系列で読んでみよう!

解説 村上 純子

埼玉協同病院 臨床検査部 部長

急性期や急変時は患者さんの状態が刻々と変化しています。
患者さんの状態が、回復に向かっているのか、悪化しているのか、検査データから把握できます。

今回は事例を使って、「経過を追う検査データの読み方」を解説します。


事例

  1. Aさん 39歳 女性
  2. 主訴:背部まで放散する腹痛
  3. 現病歴:1月29日 咳・鼻汁などの症状があり、近医を受診。 風邪と診断され、抗生剤、NSAIDs、鎮咳薬などの処方を受けた。 2月21日午前2時頃から突然、背部まで放散する腹痛を生じたため、午前4時頃救急外来を受診した。 血液検査で肝機能検査に異常を認めた。 前日の夕食は普通に摂取しており、下痢、嘔吐はみられなかった。
  4. 身体所見:胸部所見は異常なし。腹部所見は平坦・軟、蠕動音の亢進を認めた。
  5. バイタルサイン:血圧 115/82mmHg 脈拍 106回/分 体温 36.8度
  6. 経過:腹部エコー検査と腹部CT検査を実施したが、強い腹痛の原因と考えられる画像所見は確認されなかった。 午前9時に再度血液検査を実施したところ、肝機能検査はさらに悪化していたが、腹痛はやや落ち着いてきたいた。 3日前の処方薬により薬剤性肝障害を疑い、風邪薬の服薬を中止した。

検査データ

2月1日午前4時

検査データ/2月1日午前4時

2月1日午前9時

検査データ/2月1日午前9時

2月3日

検査データ/2月3日

検査データの分析 3ステップ

ステップ1

まずはこのデータに注目【AST ALT LD ALP】

2月1日午前4時の検査データでは、AST、ALT、LD、ALPが高値を示しています。

  1. AST、ALT:代表的な逸脱酵素で、細胞の壊死や障害によって、数値が上昇します。ALTは肝臓に特異性が高いので、この2つの酵素がそろって高値を示す場合、肝細胞の変性・破壊の指標ととらえます。
  2. LD:逸脱酵素の1つで、肝細胞にも多く存在します。肝細胞が障害を受けた場合、血中に移行し数値が上昇します。
  3. ALP:肝臓や小腸、骨、胎盤などに分布し、障害が加わると、血中に移行し数値が上昇します。

ステップ1からわかること

AST、ALT、LD、ALPの異常値から、肝細胞の障害が疑われます。

さらに5時間後の午前9時の検査データでは、ますます高値になっていることから、短時間で、急激に肝障害が悪化していることがわかります。

ステップ2

検査データに変化が見られたか【AST ALT LD ALP γ‐GT】

2月3日に実施された検査データをみると、逸脱酵素であるAST ALT LDは、大幅に低下しています。

しかし、ここで「低下=改善」と判断するのは早計です。

なぜならば、まれに「もう壊死する細胞がないくらい、正常細胞がなくなってしまって、回復不可能」という状態の場合があるからです。

つまり、逸脱酵素が低下しているからといって、回復に向かっているとは限らないのです。

肝障害が回復傾向なのか、回復不可能なのかを探るために、他の検査値も見てみましょう。

ステップ3

次に注目するデータ【血清ビリルビン アルブミン アンモニア プロトロンビン時間】

胆管・胆道系の異常の有無を確認するため、血清ビリルビン値に注目します。

次に、肝臓の合成能が低下していないかを確認するために、アルブミン値とプロトロンビン時間(凝固因子)をチェックします。

凝固因子をチェックすることを意外に思うかもしれませんが、凝固因子は肝臓で合成されるたんぱく質で、肝臓の合成能が低下すると、すぐに異常値を示す検査項目なので、必ずチェックしましょう。

最後に、肝臓の解毒機能が低下していないことを確認するために、アンモニア値をチェックします。

ステップ2、3からわかること

胆管・胆道系、合成能・解毒機能に問題がないため、AST、ALT、LDの低下は肝障害から回復していると判断できます。

この事例の結果

Aさんは薬剤性肝炎と診断され、風邪のために処方された薬剤を中止することで、快方に向かいました。

(『ナース専科マガジン』2014年10月号から改変利用)

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