【連載】看護に役立つ生理学

第7回 ナトリウムと水は切っても切れない関係

執筆 梵天ゆとり(ぼんてん・ゆとり)

医師、日本医学放射線学会会員

ナトリウムって難しい、と感じている人は多いのではないでしょうか。今回は、なぜナトリウムを難しいと感じてしまうのか、その原因を考えます。


ナトリウムは水と絡めて考える

まず、ナトリウムはどうして「難しい」と感じるのか、考えてみましょう。

ほかの電解質、例えばカリウムを考えると、「高カリウムならカリウム過剰」「低カリウムならカリウム不足」というふうに、とりあえずおおまかに捉えることができ、各々の原因を考えていけば、病態も治療法も理解できます。

ところがナトリウムになると、高ナトリウム血症ひとつをとっても、教科書を見れば「ナトリウムの過剰」以外に「水の欠乏」とか「ナトリウム欠乏を上回る水欠乏」とか、いろいろ難しい分類がなされています。

なぜナトリウムだけ、こんなにも話がややこしいのでしょうか? 

細胞外液量と浸透圧を見ながら調節

その原因は「ナトリウムは水と切り離して考えることが難しい」という点にあります。

例えば、臨床で用いられる利尿薬の多くは、腎からのナトリウム排泄を増加させることで利尿をつけます。これで尿量が増えるのは、排泄されたナトリウムが浸透圧物質として水を体外に引っ張ってくるからです。

この一例だけでもナトリウムと水の密接な関係が見て取れますが、さらに体の調節機構が話をややこしくしています。

下図を見てください。横軸に水の量、縦軸にナトリウム量をとると、細胞外液の状態はグラフ上の1点Pで表され、OPの傾きが大きいほどナトリウム濃度は高くなります。

調節機構が気にかけるべき要素は2つあり、ひとつは細胞外液量、もうひとつは浸透圧(≒ナトリウム濃度)です。

体はこの2つの目標(青線および赤線)にできるだけ近づくように、ナトリウムと水の両方を同時に調節する必要に迫られます。

水とナトリウムの関係説明図

水とナトリウムの関係

複雑な実際の調整方法

もちろん水・ナトリウムとも適切な状態に戻すことが理想で、そのゴールが「正常」で表した領域ですが、実際の調節方法は複雑で、「正常」に向かって一直線に戻ろうとしてくれるわけではありません。

むしろ、このグラフ上を青線に引かれたり赤線に引かれたりしながら、螺旋を描いて正常に落ち着こうとする、というイメージをもってください。

この調節機構のおかげで、健常者はある程度の摂取量変化や環境変化にさらされても「正常」域を外れることはありません。

しかし調節が追いつかない場合や、調節機構そのものに障害が発生すると、「正常」から外れた点にとどまることになります。

ではグラフ上のどのあたりに行き着くのか、あらゆるケースで予測するのは必ずしも容易ではありませんが、一般的には赤線の近傍に落ち着くことが多く、グラフの左上や右下に外れることは比較的まれです。

したがって、赤線から大きく離れていないという前提のもとでは、「ナトリウム量は細胞外液量を反映する」ということができます。

血清ナトリウム濃度は、ナトリウムと水の「比」を表している

私たちが「血清ナトリウム濃度」という検査所見によって知ることができるのは、ナトリウムの量でも水の量でもなく、両者の「比」に過ぎません。

実際の量が下図の緑の線上のどこにあったとしても、傾きが同じなので、すべて同じ濃度(この場合は低ナトリウム)を示すことになります。

その中には「両方とも少ない」「ナトリウムは少なく水は多い」「両方とも多い」といった、さまざまな状態が含まれており、もちろん治療法も異なります。

これらを判別するためには、病歴や理学所見、ほかの検査所見を合わせて判断する必要があるのです。

水とナトリウムの関係説明図②

水とナトリウムの関係

(ナース専科「マガジン」2010年8月号より転載)

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