【連載】ケースで考えよう!看護倫理レッスン

【看護倫理・事例】第13回<問題編>抑制をすべきか悩んだケース

解説 児玉美由紀

北里大学病院 がん看護専門看護師

解説 高野春美

北里大学病院 8B病棟 係長

解説 青柳明子

北里大学病院 科長

日々の看護のなかに意外に多く潜んでいる倫理的問題。それらの解決のためには、まず、倫理的な違和感に気づくセンスが大切です。
今回は、患者さんの個人情報の保護と共有に関するケースをもとに、センスを磨く練習をしてみましょう。


今回の患者さん

  1. 古川正夫さん(仮名) 
  2. 60 歳代 
  3. 男性
  4. 進行がん、肺転移

古川さんは、右殿部から下肢にかけての疼痛があり、検査と療養を目的に入院しました。
その後、進行性の悪性腫瘍と肺転移が見つかり、古川さんと家族にはインフォームドコンセントが行われました。

病状は徐々に悪化して疼痛と浮腫が増強し、長時間の座位や長距離の歩行が困難になりました。

看護師は転倒を防止するため、ベッドから移動するときや、手の届かないものを取るときは、ナースコールを押してもらえるように、その必要性を説明する「ナースコールオリエンテーション」を繰り返し実施しました。

しかし、古川さんはナースコールを押さずに、夜間一人でトイレに行こうとして、部屋の前で転倒してしまいました。

以降も看護師は、ナースコールの必要性を繰り返し説明してお願いしましたが、古川さんが一人で歩行する姿が見られたため、本人の同意のもとに、触れることでナースコールが鳴る「センサーマット」をベッドの下に敷きました。

と同時に、ナースコールオリエンテーションを続けたところ、次第にベッドからの移動時にはナースコールを押してくれるようになりました。

その後、古川さんからセンサーマットを外してほしいと要望があったため、本人と話し合った結果、「移動時は必ずナースコールを押す」という条件で、センサーマットの使用を夜間だけに決めました。

ところがある日、チームの看護師の一人が、古川さんから「私にだけ手がかかってしまって本当にすみません。みんなに迷惑をかけて。こんな姿になっちゃって悔しいんです。自分でできることはまだ自分でやりたい」という言葉を聞きました。

そして、古川さんが以前、どんなに体がつらくても自分の足でトイレに通いたいと言っていたことや、古川さんの遠慮がちな性格を思い出し、たとえ安全のためとはいえ、センサーマットの使用やナースコールを無理強いしてしまっているのではないかと悩んでいます。

患者さんの悩み

古川さんは以前、「どんなに体がつらくても自分の足でトイレに通いたい」と看護師に伝えていました。
また、「自分でできることはまだ自分でやりたい」と話しており、動くたびにナースコールを押して看護師に付き添ってもらうことに、申し訳ないという気持ちと「こんな姿になっちゃって悔しい」という思いを抱いていることが伺えます。

遠慮がちな古川さんの性格では、センサーマットに触れるたびに看護師が飛んでくる状況に恐縮しているのかもしれません。

看護師の悩み

看護師は、二度と転倒を起こさないために安全を重視し、ナースコールや夜間のセンサーマットの使用をお願いしてきましたが、あらためて古川さんの言動や性格を考えると、古川さんが考える自分らしい生き方を妨げてしまっているのではないか、必要以上の抑制になってしまっているのではないか、どこまで抑制は実施すべきなのか、と悩んでいます。

(『ナース専科マガジン』2009年5月号から改変利用)

【解決編】
* <解決編>抑制をすべきか悩んだケース

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