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【連載】基礎からまなぶ血液ガス

動脈血液ガスと静脈血液ガスの違い

解説 飯野 靖彦(いいの やすひこ)

日本医科大学名誉教授

動脈血液ガスと静脈血液ガスの違いについて解説します。


【血液ガスまとめ記事】
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動脈血と静脈血の違い

血液ガスには、動脈血液ガスと静脈血液ガスがあり、一般的に検査で実施されるのは動脈血液ガス分析です(静脈血液ガスを測定する病院もあります。米国では外来検査で静脈血液ガスを測定します)。

動脈血液ガスと静脈血液ガスの違いはその成分にありますが、ここで、まず血液の循環についておさらいしておくことにしましょう。

肺でガス交換された酸素濃度の高い血液は、心臓から各組織に送られます。

そこで毛細血管から酸素が細胞へと取り込まれ、細胞からは代謝産物であるCO2が血液に放出されます。

酸素量が減少し、CO2が増加した血液は心臓へ戻り、再び肺に運ばれて肺胞でガス交換が行われます。

このときの心臓から各組織に送り出される血液が動脈、細胞レベルでのガス交換後に心臓へ戻るのが静脈です。

動脈血と静脈血の違い説明図

動脈血と静脈血の違い

続いては「動脈血と静脈血での基準値の差」「静脈血でも血液ガス分析はできる」について解説します。

動脈血と静脈血での基準値の差

動脈血と静脈血の大きな違いは、細胞レベルでのガス交換がされる前か後かということです。

動脈血は酸素を受け取った血液なので、酸素と結合した酸化ヘモグロビンが、静脈血は組織からCO2を運ぶ血液なので、還元ヘモグロビンが多く含まれています。

それに伴い、それぞれの血液に含まれるガスの成分も変わってきます。

静脈血での各ガスの基準値は、動脈血に比べると、pHではCO2が放出される分やや酸性に傾くので0.03~0.04低く、PCO2は7~8Torr高く、HCO3は2mEq/L程度高くなります。

動脈血と静脈血の対比

静脈血でも血液ガス分析はできる

静脈血は酸塩基平衡の評価(pH、HCO3、PaCO2)に代用でき、HCO3濃度に関しては動脈血とほとんど変わりありません。

ということは、HCO3減少が基本である代謝性アシドーシスが疑われるケースでは、静脈血でも十分に評価が可能だということです。

では、なぜ動脈血が使われるのでしょうか。

それは、酸素とCO2に関する情報が動脈血のほうが多く、ガス交換機能、血液を送り出す機能(呼吸器や心臓の機能)を評価できるため、静脈血液ガスより多様な疾患を把握できるからです。

低酸素血症を疑う場合には、動脈血液ガスでの分析が必須となります。

動脈血による血液ガス分析は患者さんにとって負担の大きい検査です。

ルーチンで行われることの多い静脈血採血からも酸塩基平衡に関する情報が得られることは、知っておくとよいでしょう。

(『ナース専科マガジン』2012年10月号から改変利用)

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