【連載】心不全と呼吸不全のアセスメント

【呼吸困難の看護】心不全か呼吸不全なのか見極めるための6ステップ!

解説 山形 泰士

公益財団法人 日本心臓血圧研究振興会附属 榊原記念病院 CCU /呼吸療法認定士/NST専門療法士/集中ケア認定看護師

心不全でも呼吸不全でも現れる「息苦しい(=呼吸困難感)」という訴え。心不全か呼吸不全なのか見極めるための4ステップを紹介します。
*2017年2月16日 改訂


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息苦しさ=呼吸困難感は、呼吸不全や心不全のどちらでも出現する症状

 呼吸困難感がある患者さんは「息苦しい」「息がしにくい」「息が切れる」などと訴えることが多いでしょう。訴えがない場合、あるいは訴えられない場合も、安静にしている状態で「はぁはぁという荒い呼吸音が聴こえる」「肩で息をしている」などがみられたら、呼吸困難の状態であることがわかります。いつもより苦しそうな表情・つらい表情などを見分けて、痛いのか・苦しいのか、どのようにすれば楽になるかなどを尋ね、意思疎通を心がけます。

 呼吸不全はもちろん心不全の場合にもみられる症状で、酸素が足りないことを示しています。その原因としては、酸素が十分に取り込めていない、ガス交換がうまくいかない、酸素をうまく運べていないなどが考えられます。それらをもたらしているのが、心不全か、呼吸不全か、あるいはその他の疾患かで、現れ方や随伴症状に違いがあるので、それぞれの特徴を踏まえてアセスメントするようにします。

臨床ではステップを踏んでアセスメントしよう

 呼吸困難感が何からくるものなのかをアセスメントするには、患者さんの状態を的確に把握することが重要です。そのためには、段階的にみていくことが必要になります。

ステップ1 既往歴を確認する

 まずは、既往歴を確認します。現疾患だけでなく、これまでどのような疾患を発症したかもみるようにします。心臓疾患の術後、心筋梗塞や狭心症のほか、心不全の既往歴がある場合は、直ちに心不全を疑います。一方、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や気管支喘息の患者さんであれば、呼吸不全を疑います。

ステップ2 問診を行う

 発症の時期と経過、発症のきっかけ、症状と程度などを確認しながら、息苦しさの原因を推察します。

発症の時期と経過

■こんなふうに質問しよう
 「いつから息苦しくなりましたか」「突然(徐々に)息苦しくなりましたか」

・突然苦しくなった
→気胸、肺血栓塞栓症・肺梗塞、誤嚥、窒息、心筋梗塞などが考えられます。


・息苦しさが急に増した
→喘息発作、COPDの急性増悪(呼吸不全)などを疑います。心筋梗塞と気胸は胸痛を伴うことがあります。

・徐々に息苦しくなった
→慢性心不全、肺炎、貧血などが考えられます。

・夜間に息苦しくなる
→心不全(急性左心不全)が考えられます。

 COPDの急性増悪、喘息の場合は、早朝に呼吸困難を訴えることが多いようです。夜間に苦しくなるのは心不全で、咳や喘鳴を伴うこともあります。就寝後1~3時間後が多いといわれています。寝るときに横になると起こる発作性の呼吸困難(発作性夜間呼吸困難)では、横になることで肺に血液が留まりやすくなり、気管支がむくむことで咳が出ます。この場合、患者さんは横になるよりも座っているほうが楽だといいます。

持続時間と発症のきっかけ

■こんなふうに質問しよう
 「どういうときに(どのようにすると)苦しくなりますか」「今も息苦しさは続いていますか」

・息苦しさが続いていて悪化している
→緊張性気胸、COPDの急性増悪(呼吸不全)の可能性があります。

・苦しさは残っているがよくなっている
→軽度の喘息発作、過換気症候群などが考えられます。

・動くと(通常の労作で)息苦しさが生じる
→左心不全、労作性狭心症が疑われます。

 常に息苦しいのは呼吸不全で、動くと苦しいのは心不全です。発症初期には労作時のみに現れるため、安静が習慣となっている患者さんでは症状に気づかないことがあります。より軽い動きや安静時でも呼吸困難となる場合は重症です。

症状とその程度

■こんなふうに質問しよう
 「どのような息苦しさですか」「今までに経験したことのない苦しさですか」

・今まで経験したことのないような息苦しさ
→気管支喘息の急性増悪、COPDの急性増悪(呼吸不全)、緊張性気胸が考えられます。胸痛を伴っていれば、自然気胸、心筋梗塞などが考えられます(初発の場合)。

・常に息苦しい
→慢性的な呼吸器疾患の可能性があります。

・呼気が苦しい
→吐きづらさや呼気の延長はCOPDによる呼吸不全、呼気と吸気のどちらが苦しいかわからない場合は心不全の特徴です。

・痰が出る
→濃性の痰は肺炎や気管支炎、血痰は呼吸不全、ピンク色の泡沫状の痰は肺水腫による左心不全の特徴です。

 「呼気が苦しいのか、吸気が苦しいのか」という聞き方はわかりにくいので、「吸いづらいのか、吐きづらいのか」と聞くと、患者さんには通じやすくなります。

ステップ3 体位をみる

 息苦しさを訴えている場合、どのような体位をとっているかでも、呼吸不全か心不全かをおおよそ判断することができます。症状が激しくてうまく話せない、あるいは、自覚症状があまりないという患者さんを観察するときにも役立ちます。

 呼吸系の疾患の場合は側臥位が可能ですが、心不全では側臥位がつらくなるので、その違いで鑑別することができます。

苦しくて横になれない、横になるより起きているほうがよい→心不全が考えられます。
起座呼吸をしている→心不全が考えられます。
側臥位のほうが楽だ→無気肺、胸水貯留による呼吸不全が疑われます。
前屈のほうが楽だ→COPDによる呼吸不全が疑われます。

ステップ4 バイタルサイン

 バイタルサインを確認することは必要ですが、実は、心不全の場合も、呼吸不全の場合も、体温には影響が出ません。血圧は、呼吸苦があるときは上昇します。酸素が不足しているため、いずれもSpO2は下がり、脈が速くなります。しかし、これらの値のみで両者を鑑別することは難しいでしょう。

 ただし、脈拍の上昇は、酸素の運搬を代償する(心拍出量の増加)ための限界は120回程度だと考えられています。つまり、それ以上だと代償機能の異常、心疾患や代謝疾患の存在が予測できるようです。

 1回拍出量を予測するために、可能であれば脈圧測定を行います。脈圧が収縮期血圧×0.25以下の場合には,1回拍出量が低下している(つまり心不全)可能性があります。

ステップ5 聴診

 湿性ラ音(断続性ラ音)が聴かれる場合には、心不全が疑われます。

 一方、ゼーゼー、ヒューヒューという狭窄音の場合は喘息や上気道狭窄が考えられます。この場合、呼気で音がするのが喘息、吸気で音がするのが上気道狭窄です。左心不全が重症化し、心臓喘息の状態になると、心不全でも笛音が聴取されます。片側性の呼吸音の減弱は、無気肺、胸水、気胸が考えられます。

 聴診が苦手という看護師も少なくないと思いますが、呼吸器疾患では聴診が要となるので、ぜひ経験を重ねてほしいと思います。

副雑音
図 副雑音

ステップ6 各種検査へ

 アセスメントの後、確定診断のために、胸部X線検査、超音波検査、血液検査、動脈血液ガス検査などを行います。

こんなときは、すぐにドクターコールを!

 以下のような場合は緊急度が高いケースです。すぐにドクターコールをし、医師が駆け付けるまでの間に、バイタルサインを測定し(未測定の場合)、医師の指示の範囲内で、可能であれば酸素投与を行います。さらに、挿管の準備をするなどの対応も必要です。患者さんがCOPDであることがわかっている場合、酸素投与を行う際は、普段SpO2が基準になります。

 1. 意識レベルが落ちている
 2. 呼吸が異常に早い(30回/分以上)、もしくは遅い(10回/分以下)
 3. 努力呼吸(肩呼吸)をしている
 4. SpO2が90%以下
 5. ショック状態(血圧・脈拍低下)
 6. 気胸・上気道狭窄・窒息疑われるとき
 7. 心筋梗塞が疑われるとき

心疾患・呼吸器疾患以外に「息苦しさ」が表れるケース

 息苦しさには、呼吸器や循環器の疾患が原因でないこともあります。

 まず、精神的な不安や恐怖が原因であるケースがあります。この場合、呼吸の深さには変化がなく、呼吸速度が早くなります。「落ち着いてくださいね」「ゆっくりと息をしましょう」など声をかけて、深呼吸を促すと落ち着いてくることがほとんどです。身体的な原因による息苦しさは、呼吸が浅く早いので、その違いで見分けることができます。そのほか、せん妄になる前、急変の前触れ、高血糖時、精神的代謝性疾患の場合も、息苦しくなります。

 また、肺血栓塞栓症も見逃してはいけません。息苦しいと訴える患者さんに対し、肺血栓塞栓症を疑うことは少ないと思うのですが、疑ってみる必要があるでしょう。さらに、呼吸器疾患ではありますが、気胸も見逃しやすいので注意が必要です。

呼吸数は必ず数えよう!

 体温、血圧、脈拍という通常のバイタルサインについては、おおよそ毎日の測定が行われているはずです。では、呼吸数についてはどうでしょう。本来ならば、呼吸数も測るべきですが、あまり実践されていなのが実状のようです。

 呼吸数は、1分(60秒)間に約20回が標準で、1回あたりに換算すると3秒に1回になります。これを知っておくと、呼吸が早いのか遅いのかだけでも判断できます。また、1分間の測定が難しければ、15秒間測定をして4倍しても構いません。呼吸数が多い場合は、低酸素状態であることがわかります。少ない場合は、心不全が悪化していたり、脳神経系が悪化していることが考えられます。

 呼吸は緊急度を示す重要なサインです。そのサインを見逃すことのないよう、きちんと呼吸数を数え、観察するようにしましょう。

(『ナース専科マガジン』2014年11月号から転載)

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