【連載】輸液ケアを極める!

【腎不全】輸液ケアの3つの見極めポイント

解説 岡元 和文

信州大学医学部救急集中治療医学講座 教授 信州大学医学部附属病院高度救命救急センター センター長

腎不全の輸液ケアについて、3つの見極めポイントを紹介します。


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腎機能を知るための5つのポイント

ポイント1 腎機能を評価する

▷BUN、Cr、糸球体ろ過量で、腎臓の機能をみる

 血中尿素窒素や血中・尿中のクレアチニンなどの検査を行うとともに、尿量を測定し、糸球体ろ過量を計算することで腎機能を判断します。

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ポイント2 血液データをチェックする

▷電解質K、Na、CaとpHをみる

 血清電解質は、主にカリウム、ナトリウム、カルシウムを調べます。

 血清カリウムは疾患の緊急度を判断する上で重要です。血清カリウムの基準値は4mEq/L前後(3.7~5.0)で、5.5mEq/Lを超えると高カリウム血症といいます。7mEq/Lを超えている場合は重篤で、人工透析が必要になることがあります。

 血液ガスデータでアシドーシスに傾いていないか、低酸素血症をきたしていないかも確認します。

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ポイント3 心電図をチェックする

▷高K血症の徴候の有無

 血清カリウムが6mEq/L以上の高値になると、心電図に特有の変化が現れます。

 T波がテントのように尖った形になる「テント状T」や、QRSの幅が広がる「ワイドQRS」、P波の消失などがみられるようになり、さらに進行すると心室細動へと移行します。

ポイント4 浮腫の程度をみる

▷全身、肺の複雑音の聴取、胸部X線をチェック

 全身の皮膚を観察し、可能であれば体重を測定して、浮腫の状態やその変化を把握します。また肺の音と胸部エックス線によって、肺水腫の状態を確認します。

ポイント5 尿量を確認する

▷正確に尿量を測定する

 輸液量は尿量に合わせて調整するので、正確な尿量測定が求められます。

 利尿期に入り、大量の尿が排泄されるようになったときは、輸液量が不足すると循環血液量の急激な低下を招き、また腎不全を引き起こしてしまうため、尿量は時間ごとに確認します。

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続いて「輸液ケアの3つの見極めポイント」について解説します。

輸液ケアの3つの見極めポイント

ポイント1 循環血液量を確保しつつ利尿薬を利用して除水する

 利尿薬はフロセミド(商品名:ラシックス®など)を使うのが一般的です。フロセミドは、水分とともにカリウムの排泄も促すので、高カリウム血症を伴っている腎不全の治療に適しています。

 高度の浮腫や肺水腫がある場合は、循環動態を見ながらある程度多めに水分を抜くことがありますが、基本的には急激な除水は循環血液量の減少を招くのでよくありません。

 維持輸液量については、「失われる予定分を入れる」という原則は変わりません。心不全の場合と同様、1日に不感蒸泄で失われる水分量程度が減っていくように調節します。尿がほとんど出ておらず、浮腫がある場合は、輸液量を控えめにして、不感蒸泄と便で失う量程度にとどめます。

ポイント2 利尿期の循環血液量不足に注意

利尿期に入ったら輸液量を増やす

 利尿期に入った場合は、1日に5000mL以上の尿が出ることがあるので、それに見合った量の輸液が必要になります。尿が一気に大量に排泄されるということは、血漿量が急激に減少していることを示します。

 このとき、血漿量を維持するために間質や細胞内からも水が移動しますが、そのスピードが追いつかないと、循環血液量が不足してショックを起こしてしまいます。そして、腎血流量の減少がさらに腎不全の状態を作り出します。

 このような現象を予防するためには、常に尿量に注意を払い、それに見合った輸液量を維持することが大切です。重症の腎不全の場合は、体内の水分量の調節機能が著しく低下しており、ちょっとした水分の過不足が病状を急激に変化させることがあるので、十分に注意しましょう。

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輸液製剤は生理食塩水が最適

 輸液製剤は、利尿薬で浮腫を改善しつつ、循環血液量を維持してショックを予防する必要があり、細胞外液補充液を使うのが基本です。特に利尿期などにショックを起こした場合は、ナトリウム濃度が低い維持輸液などではなく、必ず細胞外液補充液を使います。

 腎不全の場合は、輸液によって血清カリウム濃度を上げるようなことをしてはいけないので、カリウムを含まない生理食塩液が最も適した輸液製剤だといえます。

 ただし、高カリウム血症の患者さんには、必要ならばリンゲル液を使ってもよいでしょう。なぜなら、生理食塩液以外の細胞外液補充液のカリウム濃度は4mEq/Lで、高カリウム血症の患者さんの血清カリウム濃度よりは低く、これを投与しても血清カリウム濃度を上げることにはならないと考えられるからです。

 人工透析を行っている場合は、通常の維持輸液を使っても問題ありません。

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ポイント3 アシドーシスの改善には重炭酸ナトリウムを投与

重炭酸ナトリウムの投与で高カリウム血症の改善を

 アシドーシスの改善のためには、重炭酸ナトリウムを投与します。

 アシドーシスが改善されて血中の水素イオンが減れば、細胞外に押し出されていたカリウムイオンが細胞内に戻り、高カリウム血症が改善に向かう効果が期待できます。

カリウム濃度を下げるにはグルコース・インスリン治療を行う

 高カリウム血症に対しては、積極的な治療を行います。

 まず、カルシウム剤(グルコン酸カルシウム)20mLを5分ほどかけて静注。カルシウムイオンによって心筋の細胞膜の安定化を図り、カリウムによる影響を緩和します。即効性があり、数分で心電図に変化が現れますが、この治療では血中のカリウム濃度は変わりません。

 次に、カリウム濃度を下げる治療を行います。

 ブドウ糖と速効型インスリンを点滴によって投与するグルコース・インスリン療法は、ブドウ糖が細胞に取り込まれる際に、カリウムも一緒に取り込まれる作用を利用して、血中のカリウム濃度を下げるものです。この方法は、投与後30分程度で効果が現れるとされています。

 さらに、注腸または経口で陽イオン交換樹脂を投与し、腸管からカリウムを排泄させます。効果の発現までには少し時間がかかりますが、注腸による投与のほうがより速く効果が現れます。

 これらの治療を行っても血中のカリウムが7mEq/L以下に下がらない場合は、人工透析を考えます。

(『ナース専科マガジン』2012年4月号から改変利用)

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