【連載】輸液ケアを極める!

【肝硬変】症状と4つの観察ポイント、輸液ケアの見極めポイント

解説 岡元 和文

信州大学医学部救急集中治療医学講座 教授 信州大学医学部附属病院高度救命救急センター センター長

肝硬変の症状と4つの観察ポイントについて解説します。


【目次】


知っておきたい!肝硬変の主な症状

  1. 全身の浮腫
  2. 腹水
  3. 低ナトリウム血症
  4. ビリルビンの血中増加による黄疸
  5. 血中のアンモニア貯留

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肝硬変患者さんの4つの観察ポイント

ポイント1 肝機能を評価する

病状把握のための肝機能検査(AST、ALTなど)、血中のビリルビン、アルブミン、アンモニアを確認します。

ポイント2 全身状態を観察する

浮腫や腹水の状態、体重や尿量の変化、肝性昏睡の疑いがあれば意識障害や神経症状の有無と程度、その他前進症状を観察します。

ポイント3 電解質バランスをみる

浮腫や腹水により水分が血管外に漏出しているため、血中の電解質バランスが崩れていないかをみます。なかでもカリウムとナトリウムは、利尿剤使用後にもチェックが必要です。

ポイント4 血糖値と腎機能をみる

肝硬変では低血糖になる危険性があるので、血糖値をチェックします。また腎不全の危険性を考慮して、腎機能についても十分な注意が必要です。

輸液ケアの4つの見極めポイント

ポイント1 余分な水分を排泄

浮腫の改善に利尿薬を使用しますが、肝硬変の場合は抗アルドステロン薬を使うのが一般的です。

これは、肝硬変によってアルドステロンの分泌が亢進し、それが浮腫を増強させる一因になっているためです。 抗アルドステロン薬はナトリウムと水分の排泄を促す一方で、カリウムを保持します。

ただし、肝硬変ではアルドステロンの分泌亢進によってカリウムが排泄され、低カリウム血症を起こしていることが多いので、一見、抗アルドステロン薬を使っても問題はないように思えますが、逆に高度な高カリウム血症になることがあります。

この場合のK値の上昇の仕方は突然で、定期的な検査で数値が上がってきたと思ったら、一気に高値まで急上昇するケースが少なくありません。

従って、抗アルドステロン薬の効果が現れて尿が出てくるようになったら、血清カリウム値に十分に注意しましょう。

浮腫の一因にもなっている低アルブミン血症に対しては、Albを投与します。

投与スピードが速すぎると、膠質浸透圧が急に上がって血漿量が増加して、心不全などを引き起こす可能性があるため、ゆっくりと投与します。

ポイント2 尿量を観察

輸液製剤は、循環血液量を維持するため、細胞外液補充液の使用を基本として、ほかに分枝(鎖)アミノ酸を含むアミノ酸輸液を使うことがあります。

分枝(鎖)アミノ酸とは、必須アミノ酸の中のバリン、ロイシン、イソロイシンのことで、分子の鎖に枝分かれした部分があるため、この名前が付いています。

肝硬変で肝性昏睡がある患者さんにこれらのアミノ酸を投与すると、意識状態の改善が期待できるといわれています。

輸液量は、尿があまり出ていない場合は控えめにし、不感蒸泄で失う量程度を基本に投与します。

利尿薬の効果で尿が出るようになったら、急激な血漿量の減少を防ぐために、十分な量の輸液が必要になります。 尿量を経時的に測定し、その量に応じて輸液量を調整していきます。

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ポイント3 不足している栄養素を補給

肝硬変では、易疲労感、電解質バランスの異常や全身の浮腫、腹水などの影響により、食欲不振に陥って十分な栄養が摂取できないことがあります。

そのため、輸液によって必要な栄養素を投与することは大切です。

中でもブドウ糖の投与は欠かせません。

本来、肝臓にはグリコーゲンの形でブドウ糖が一定量備蓄されていて、ストレスや空腹時などには、肝臓から血中にブドウ糖が放出されるようになっています。

ところが肝硬変になるとブドウ糖の備蓄がほとんどできなくなるので、食欲不振や昏睡などで食事が摂取できないと、急激に低血糖状態になってしまいます。 ショック時には循環血液量の補充が最優先ですが、ショックがなければ、最初からブドウ糖の投与を考慮する必要があります。

ポイント4 蛋白質の投与量に注意

急性期を脱して状態が落ち着いてきても食事が十分に摂れない場合は、蛋白質や脂質も投与していきます。

エネルギー量25~30kcal/kg/日の摂取を基本に、輸液の内容を調整していきます。

蛋白質は、0.6g/kg/日程度を目安にし、必要であれば1.5g/kg/日程度まで増量して投与します。

ただし、腎不全を伴っている場合や、昏睡またはその傾向がある場合は、肝機能が低下してもともとアンモニアが蓄積されている可能性があります。

この状態で蛋白質を多く投与すると、蛋白質を分解する際にアンモニアが生じてしまい、より蓄積されて人工透析が必要になったり、昏睡が悪化してしまう危険性があります。

控えめに投与するなど投与量の調整が必要です。

脂肪は、1日の摂取エネルギーの30%程度になる量を、脂肪乳剤で投与します。

(『ナース専科マガジン』2012年4月号から改変利用)

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