【連載】看護に役立つ生理学

第9回 カリウム異常はなぜ起こる?

執筆 梵天ゆとり(ぼんてん・ゆとり)

医師、日本医学放射線学会会員

今回のテーマは「カリウム」です。電解質検査においてはナトリウムに次いでおなじみの項目であり、臨床で高/低カリウム血症という病態に遭遇することも珍しくありません。

多くの場合は狂ってしまったカリウム値を是正する方向で治療がなされますが、まずは「どのような原因で起こるのか」を整理し、さらに「なぜカリウム異常が問題となるのか」についても考えていきましょう。


【目次】


カリウムは摂取量や排泄量の変化に左右される

基本的には、カリウムが蓄積する病態では高カリウムに、喪失する病態では低カリウムになると考えて構いません。
したがって、摂取量や排泄量が変化すれば、それに応じて血清カリウム値も上下することになります。

ところが、ことカリウムに関してはもう一つ、忘れてはならない要素があります。
それは「細胞内のカリウムの存在」です。これが何らかの理由で細胞外に漏れてくれば、外界とのやりとりがなくとも血清カリウム値は上昇します。
一例を挙げれば、悪性腫瘍の化学療法後に、「腫瘍融解症候群」と呼ばれる現象が起こることがあります。
これは腫瘍細胞が急激に破壊されることによって種々の病変が起きるものですが、その所見の一つとして、カリウムが腫瘍からこぼれ出ることによって生じる高カリウム血症があります。

一方、細胞外液のカリウムが細胞内に移行すれば、値は低下します。このような観点に注意しながら、カリウム異常の原因を整理してみることが大切です。

リウム異常の原因を整理、説明イラスト

(1)外界との出入り

カリウムは経口摂取され、その大部分は腎から排泄されますが、一部は消化管から便中にも排泄されます。
このinとoutのバランスが崩れれば、血清カリウム異常となって表れます。

inの異常

経口摂取量が過剰となった場合、腎機能(特に尿量)が保たれていれば、高カリウムが問題となることはまれです。
しかし、不適切な輸液でカリウムを補給し過ぎたり、保存血を多量に輸血した場合などには、高カリウム血症が引き起こされます。

反対に摂取不足の場合、腎からの排泄調節はある程度働くものの、比較的容易に低カリウムをきたし得ます。
とはいえ、特に食物のカリウム含有量を気にせずとも、通常の食事を摂っていれば、低カリウムをきたすほどの摂取不足になることは滅多にありません。

outの異常

腎からのカリウム排泄に最も大きな影響を及ぼすのは、単純なようですが「尿量」です。
したがって、腎障害などで尿量が減少すればカリウムは蓄積し、反対に利尿薬の投与下などではカリウムを喪失するのが原則です。

尿量についでカリウム排泄の調節に寄与するのがアルドステロンというホルモンで、これが病的に亢進した場合はカリウム排泄が促され、低下した場合にはカリウムが蓄積されます。
また、カリウム排泄の一部は消化管からもなされるため、下痢や嘔吐などによる喪失があれば、低カリウムの原因となり得ます。

次ページでも引き続きカリウムの基礎知識、カリウム異常はなぜ起こるのかを解説します。

【電解質異常のまとめ記事】
電解質とは?身体のしくみと電解質異常

(2)細胞内外の出入り

細胞の破壊

種々の原因で細胞が壊れて、中のカリウムが細胞外にこぼれ出してしまえば、もちろん高カリウムとなります。

ここで忘れてはならないのが、採血後の溶血によるものです。患者さんに大きな変化がないにもかかわらず血清カリウムが突然高値を示した場合には、この可能性を考慮しなければなりません。

これに対し、体内で実際に細胞破壊が起こるケースとしては、血液疾患や不適合輸血による溶血、外傷・熱傷による細胞破壊、前述の腫瘍融解症候群など、さまざまな原因が考えられます。

カリウムの移動

細胞破壊が起こらなくとも、カリウムが細胞内外を移動することがあります。

例えば酸血症(いわゆるアシドーシス)の場合、細胞外に過剰となった水素イオンが細胞内に流れ込むのと引き換えに、カリウムが細胞外に出てくるため、原則として高カリウムとなります。

アルカローシスのときは逆に低カリウムをきたします。

つまり、アシドーシス・アルカローシスの存在下で得られたカリウム値を、額面どおり受け取って是正しようとすると、酸塩基異常が改善された頃には過剰な治療となってしまう恐れがあるわけです。

このほかにもカリウムの移動を規定する因子として、インスリンが挙げられます。
インスリンは、細胞内にブドウ糖とカリウムを一緒に運び込む作用を有しています。
このため、糖尿病でインスリンが低下した場合などでは、細胞内への移動が不充分となり、また細胞障害もあって高カリウム血症となることがあります。

高カリウム血症の患者さんに対して「グルコース・インスリン療法」が行われるのも、同様の原理によっています。

ここからは、カリウムの基礎知識についてです。最初に、カリウムの異常ではどんなことが起こるのかを解説します。

カリウムの基礎知識

カリウムは、そのほとんどが陽イオン(K+)の形で体内に120g程度存在し、私たちは経口摂取によって1日約2gを補い、同じ量を腎(9割)および消化管(1割)から排泄します。

体内のカリウムの実に98%は細胞内に存在しており、血清検査によって知ることができるのは残りの2%、つまり細胞外における様子に過ぎません。

濃度も細胞外で3~5mmol/Lなのに対し細胞内では100mmol/L~150mmol/Lと、大きな開きがあります。

したがって、厳密に言えば血清検査の濃度は体内カリウム総量を表しているとは限らないわけですが、通常はおおむね相関するものと考え、臨床情報として活用されます。
いずれにせよ、検査値を正しく読み解くためには、背景にある莫大な細胞内カリウムの存在を強く意識することが重要です。

カリウム異常で起こること

カリウムの生体における機能はさまざまですが、主要なものの一つとして、神経や筋の電気的活動に大きく寄与しているという点があります。
これは、カリウム異常の際に脱力感・痺れ・痙攣など、神経・筋関連の自覚症状が多く見られることからも理解できます。

しかし、臨床的に最も重要な影響をこうむるのは、同じ筋でも「心筋」のほうです。心筋細胞の内外でカリウム濃度のバランスが崩れると、心筋の収縮が正しく行われず、不整脈を引き起こすリスクが高まります。

特に高カリウム血症では致死的不整脈のリスクが高く、低カリウム血症であってもジギタリス中毒を起こしやすくなるなどの弊害があります。
その徴候は心電図によく反映され、高/低カリウム血症のそれぞれに対して特徴的な変化が見られます。カリウム異常を放置せずに是正する最大の目的は、この不整脈を予防することにあります。

カリウムの補充を考える

さて、すでにカリウム異常が生じてしまっている場合には、これを是正しなければなりませんが、ここでは経口摂取ができない人に対して、輸液によってカリウム摂取を維持する局面を考えることにします。

前述のように、総カリウム120gに対して1日2gの出入りがあるということは、だいたい2%、つまり、細胞外液中に含まれる量と同じくらいのカリウムが入れ替わっている計算になります。

これに見合う量を輸液製剤で補う方法を検討してみましょう。

リンゲル液で行う場合

臨床で頻繁に用いられる輸液製剤の一つに、「リンゲル液」というものがあります。

これは一言で言えば「細胞外液に類似した組成」の製剤で、出血時や術後など、速やかに細胞外液を補いたいときに重宝します。
もちろんカリウム濃度についても、細胞外液に近い値(4mEq/L)に調製されています。細胞外液は体重の約20%を占めていますから、60kgの人なら12L(血漿3L・組織間液9L)くらいになります。

1日のカリウム摂取量をリンゲル液のみで補うには、この細胞外液と同じだけの量を与える必要があります。
すなわち、500mLボトルで言えば20本以上のリンゲル液を飲まないといけなくなってしまいます。
実際、リンゲル液(500mL)に含まれるカリウムは1本あたり約0.08gに過ぎません。

もちろん注射で与える場合には、腎から失われる分だけを補えば良いので、これより少なくて済むかもしれません。
しかしいずれにせよ、リンゲル液に含まれるカリウムは、あくまで細胞外液に似せるために加えられたものであって、1日の必要量を補充するには程遠いことが理解できるでしょう。

補充の必要がある場合には、カリウム製剤を別途追加しなければなりません。

3号維持液で行う場合

一方、いわゆる3号維持液ではどうでしょうか?
製品にもよりますが、3号液の多くはリンゲル液の5倍くらいの濃度のカリウムを含んでおり、500mLボトル1本で0.4g程度補給できます。

これならば標準的な1日4本(2000mL)の輸液でカリウムの必要量を補うことができます。
つまり3号液は、標準的なカリウムの必要量まで考慮した上で、維持液として扱いやすいように調製されたものであることがわかります。

このように、輸液製剤は目的によってさまざまな組成のものがあります。
機会があれば是非、病棟にある各種の輸液製剤について、カリウム濃度を比較してみてください。それぞれの製剤の用途を理解するための有力な手掛かりになるはずです。

輸液製剤の種類とNa、K含有量

輸液製剤の種類ごとにカリウムの濃度は違っています。表を見ながら比較してみてください。
輸液製剤は、実際には糖やCa、Mgなど他の成分の配合度が製品ごとに細かく異なっていますが、ここではカリウムの濃度を比較することが目的なので、割愛しています。
* レジスターマークは省略しています。

(「ナース専科」マガジン2010年9月号から転載)

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