【連載】ケースで考えよう!看護倫理レッスン

【看護倫理・事例】第15回<問題編>恐怖心で役割を果たせなくなったケース

解説 高野春美

北里大学病院 8B病棟 係長

解説 青柳明子

北里大学病院 科長

解説 児玉美由紀

北里大学病院 がん看護専門看護師

Doctorw think1112111

日々の看護のなかに意外に多く潜んでいる倫理的問題。それらの解決のためには、まず、倫理的な違和感に気づくセンスが大切です。
今回は、患者さんの個人情報の保護と共有に関するケースをもとに、センスを磨く練習をしてみましょう。


今回の患者さん

  1. 太田和夫さん(仮名)
  2. 50歳代
  3. 男性
  4. 下腿開放骨折

怒鳴ることがあり、恐怖感をもつ者も・・・

太田さんは自宅で転落して骨折し、骨接合術と同種骨移植術を受けました。
しかし術後感染を起こしてデブリードマンが行われ、下腿外側が開放創になりました。
その後、一時的に炎症は改善しましたが、再度悪化したため、下腿内側も開放創となりました。
入院中の太田さんは、強い痛みや熱による疲労、長期の入院によるストレスがたまっています。

そこで看護師たちは、太田さんからケアに要望があった際には情報を共有し、統一したケアを心がけていました。
また痛みに対しては、症状と薬効を確認し、効果的な痛みのコントロールに努めていました。

一方、太田さんは普段は穏やかですが、輸液の針が上手く刺入できないとき、「もうあんな医者よこすな!」と怒鳴ったり、新人看護師がテープを貼り替えようとしたとき、「お前一人で大丈夫か?やるなよ!」と急に怒鳴り出すこともあり、看護師の中には恐怖感をもつ者もいました。

言いなりになってしまう・・・

入院2カ月後のある日、準夜勤の看護師が、「太田さんが頓用の痛み止めを希望している」と申し送りを受け、症状の確認に行きました。
すると太田さんから、「さっきから痛いって言っているのに、何で早く痛み止めを持ってきてくれないんだ!いつもそうだよ、お前じゃ話にならない、主任を連れて来い!」と怒鳴られました。
この看護師は恐怖心や恥ずかしさなどから泣いてしまい、結局、他の看護師が間に入ってその場を収めました。

怒鳴られた看護師は、このままでは関係が悪くなると考え、あらためて太田さんのベッドサイドに行きました。

すると太田さんは、「人によって痛み止めの使い方が違うんだよね。いつもギリギリまで我慢しているのに、まるで人が痛くないのに使っているみたいだった」と穏やかに話してくれ、看護師も症状を確認したかった理由を説明して謝りました。

しかしその後、この看護師は、再び太田さんを怒らせないように、様子を伺いながら会話したり、言われるままに対応するようになってしまいました。
そこでこれでよいのかと悩んでいます。

次ページでは、「この事例でどんなジレンマが起きているのか」をみていきます。