【連載】Newsのツボ

【難病対策】ALS患者が抱える問題と看護について

解説 小倉朗子

東京都医学総合研究所 運動・感覚システム研究分野難病ケア看護研究室 主任研究員 看護師 保健師

今回は、難病患者さん、特に筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者さんが抱える問題と看護について解説します。


難病対策の現状と対策の見直し

わが国の難病対策は、1972年の難病対策要綱で定められた難病の定義*1をもとに進められています。

5つの柱*2を中心に、さまざまな事業が行われていますが、近年では、医療の進歩、患者さんや家族のニーズの多様化、社会状況の変化などに伴って、見直しが求められるようになっていました。

厚生労働省では、これを受け、2011年から難病対策委員会を設置、検討を進めています。

同委員会が12年の8月にまとめた「今後の難病対策の在り方(中間報告)」では、「『難病』の定義、範囲の在り方」「医療費助成の在り方」など11項目についての報告がなされています。 その中の「福祉サービスの在り方」では、障害者総合支援法における障害者の定義拡大によって、障害福祉サービスの給付対象の拡大が図られることを謳っています。 このことからも、今回の措置が難病対策の一端を担う位置づけであることがわかると思います。

用語解説

*1「 原因不明、治療方法未確立であり、かつ、後遺症を残すおそれが少なくない疾病」「経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず介護等に著しく人手を要するために家族の負担が重く、また精神的にも負担の大きい疾病」
*2

  1. 調査研究の推進
  2. 医療機関の整備
  3. 医療費の自己負担の軽減
  4. 地域保健医療の推進
  5. QOLの向上を目指した福祉施策の推進

ALS患者さんの現状と地域が抱える課題

難病の中でも特に重症度の高い疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)を例にみてみると、74年の段階で257人だった患者数が、91年には2829人、09年には8492人に増加。

人工呼吸療法など治療法の発達や社会支援体制の整備などを背景に、予後は延長し、療養生活は長期化しています。 さらに、療養型病床の削減などの影響もあり、ALS患者さんの療養の場は「自宅」に負うところが大きくなっているのが現状で、そこにさまざまな課題も生じています。

課題1

難病患者さんの在宅療養は、「医療保険」「介護保険」「障害者総合支援法(旧障害者自立支援法)」「難病対策事業」の4つで支えられることになります。

しかし、ALS患者さんのように24時間継続した支援が必要となる方の場合、安全・安心な生活を送るためには決して十分とはいえず、足りない部分は自己負担によって賄われることになるのです。

まず、この穴をどのように埋めていくかが、1つめの課題です。

課題2

そして2つめの課題が地域の支援体制の整備です。

医療処置の多い難病患者さんは、単に医療サービス、介護サービスが受けられればよいというものではありません。

安全・安心な生活を営むためには、地域社会がいかにパワーを持っているかが重要なカギとなります。

十分なサービスの量と質、有効性の高い連携を備えた地域社会を構築する必要があります。

課題3

3つめは、継続して専門医療が受けられる体制・環境作りが挙げられます。

難病と診断されたときから、外来受診、入院治療、在宅療養、再入院・・・と、患者さんは医療とかかわり続けて生きることになります。

残念ながら、継続、進行するのが難病の特徴です。最期のときまで専門医療が受けられることは、介護者である家族の安心と満足にもつながります。

Nurse’s Comments

●難病患者さんが在宅で療養するためには、社会資源を上手に使うことが必要だと思う。(三重県 たむたむ)

●補助金の対象を拡大するのはいいけど、財源は大丈夫なのでしょうか。保険料を納める人は減少傾向なのに。(神奈川県 ポプラ並木)

●現在在宅で療養している難病患者さんは必要なケアが自費のことも多く大変だと思うので、この決定は喜ばしいことだ。在宅療養は、受け皿となる家庭のケア態勢が不十分だと受け入れは非常に困難。ケアの提供やケア用品のレンタルなど、サービスの充実を図る必要があると思う。(京都府 美音子)

●若年で発症された難病患者さんの中には、すでに自治体独自の制度でホームヘルプサービスを利用されている方がいます。障害者総合支援法によるサービスと、どの程度自己負担額が異なるのかが気になります。(愛知県 まあち)

●関節リウマチの患者さんは本当につらいです。リウマチ性脊椎炎から脊髄にも影響が出ていましたが、当時は研究段階でした。このようなサービスが受けられると、患者さんにとって、さまざまな支援が受けられ、生活しやすくなると思います。(東京都 ナース)

●難病は病態に個人差がある分野なので短期対応は難しいと思う。さらに知識の面でも、疾患のみならず、環境作り、投薬、食事とさまざまなことに個性があるので、ヘルパーの介入は荷が重いのではないかという気もする。(長野県 けい)

●行政サービスを受けることで、難病患者さんが自宅でも生活援助が受けられるようになると、より一層その人らしい生活を送ることができるのではないかと思います。(東京都 チャッキー)

●この法律が現在の難病支援体制とどう異なるのか気になります。(京都府 まい)

●デイサービスや在宅サービスなどを利用できると、本人や家族の精神的、身体的負担を軽減できるのではないかと思う。(岐阜県 よっしー)

●介助が必要な人がサービスを受けられるようになるのはよいことだと思う。しかし、サービスを提供する側の準備(人員確保や知識)が整わないと難しいと思う。(石川県 みん)

●施設で発症した直後の人が、勤め先の病院に入院してきたことがあります。でも自宅療養中の方も多いと聞きます。家族の負担が減るよう、支援が可能になることはすばらしいと思います。(埼玉県 ぷーさん)

●ケアに携わるさまざまな職種の人に、難病患者さんについての理解がより一層必要になると思います。(宮城県 フミマ)

●難病患者さんにとって、とても必要な福祉サービスが、今まで十分に受けられていなかったことのほうが不思議でならない。(熊本県 まいとも)

●支援者の育成が大きな課題。支援者が育たなければ、十分なケアは受けられない。(東京都 とも)

●難病患者さんだけでなく、高齢者、障害者も含め、家族やその近親者だけで抱えることは、途方もなく大きな負担になります。行政サービスは、おおいに利用すべきだと思います。(神奈川県 maru)

(『ナース専科マガジン』2013年2月号より転載)

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