【連載】輸液ケアを極める!

輸液ポンプ・シリンジポンプのトラブル回避術(フリーフローなど)

執筆 野口裕幸

CE野口企画 代表 臨床工学技士

設定した予定量や流量を自動的に投与する輸液ポンプ・シリンジポンプは、非常に便利な医療機器。

しかし、使い方を誤ると正しく機能しないケースが多々あります。
ここでは扱い方のコツ、よくあるトラブルの回避術を紹介します。


【目次】


トラブル(1)アラームに関するトラブル

  1. アラームが鳴りっぱなしになる!
  2. 閉塞アラームが頻回に鳴るorまったく鳴らない!
  3. 注意しているのに気泡アラームか鳴る!

考えられる原因を<<セルフチェック>>

  • ポンプやセンサーに薬液が付着していませんか?
  • チューブやクレンメの設定位置に問題はありませんか?
  • 閉塞時に正しい手順で原因の除去と再開操作をしていますか?
  • 小児で使っていた圧の感度のまま成人に使用していませんか?
  • 点滴筒の液面が低くなっていませんか?
  • 点滴ラインとポンプを併用していませんか?
  • 輸液を常温に戻して使用していますか?

ここを押さえる!アラームのトラブル回避術

作業後や開放直後のアラームに注意

実際に閉塞が起こって閉塞アラームが鳴る原因としては、

  1. 体位変換をした際にチューブが折れ曲がるケース
  2. 輸液開始時やチューブ交換時、アラーム対応後に、クレンメ・三方活栓・チューブロックなどの確認をし忘れてポンプのドアを閉じたケース

などが考えられます。

意外と多い!汚れが原因のアラーム

ラインを確認して問題がないのに閉塞アラームが鳴る、というトラブルで考えられるのは、圧力の上昇や閉塞を感知する部分が薬液で汚れていることです。

このケースでの一番の対策は、ポンプの外部だけでなく、内部も常日頃からきれいにしておくこと。

同様に、気泡を抜いたのに気泡アラームが鳴るケースも、検出部の汚れなどが原因の可能性があります。

閉塞感度は確認していますか?

小児科病棟では、皮下の薬剤漏れを早めに検知する目的で閉塞感度を上げて使用することが多く、成人でそのまま使用すると、閉塞アラームが頻回に鳴りやすくなります。

小児科病棟だけ限定にするか、多くの病棟に貸し出しする場合には臨床工学技士など特定の担当者が一括してチェックすることをお勧めします。

薬液は常温ですか?

直前まで冷所保存していた薬液をそのまま装着すると、温度の変化によって気泡が発生しやすくなります。

これが気泡アラームの原因の一つとなっています。薬液は常温に戻してから装着しましょう。

また、点滴筒の液面が低くなりすぎていると、移動時など液面が斜めになった際に気泡が入りやすくなるので、注意が必要です。

長時間チューブをしごくことでも気泡は発生します。

故障の可能性が大!

閉塞を起こしているのにアラームが鳴らない場合は、故障の可能性が大です。

ただし、輸液ポンプの上流側にクレンメがセットされていると、アラームが鳴らないことがあります。

このケースでクレンメを開放せずにスタートボタンを押すと、薬剤が滴下されないか、あるいはチューブ内が陰圧になったまま薬剤が送られますが、下流側では閉塞を感知できないからです。

滴下検出器(ドロップセンサー)を装着することで確認はできますが、「クレンメは下流側にセットする」という原則をしっかり守ることが大切です。

アラーム対応するときは、慌てずに対処すること!

アラーム後の操作で、特に注意を要するのがフリーフローの問題です。

例えば、気泡アラームが鳴った場合、気泡を抜こうとして下流側のクレンメを閉じないまま不用意に輸液ポンプのドアを開けたり、ドアの下にあるチューブクランプを外してしまうと、不適切な再開操作によって大量に輸液されるフリーフローが起こります。

現在はアンチフロー対策がとられた製品も発売されていますが、今使っているものがそうとは限りません。

アラーム対応するときは、慌てずに対処することを心掛けましょう。

トラブル(2)バッテリーに関するトラブル

  1. バッテリーがすぐなくなる!
  2. バッテリーが充電されているかわからない!
  3. バッテリーが途中で切れた!

考えられる原因を<<セルフチェック>>

  • バッテリーを定期交換していますか?
  • 正しい方法で充電していますか?

ここを押さえる!バッテリーのトラブル回避術

使用する前に確実に充電しておく

突発的な移動にも対応できるように、充電は使用する前に確実に済ませておきましょう。

使い始めは必ずフル充電しているものを用います。

完全に放電してからフル充電がコツ

集中治療室や救急救命センター、頻繁に輸液ポンプ・シリンジポンプを使用する施設などでは、常時充電しておく方法がバッテリー切れを防ぐ一番の安全策です。

頻繁に使用しない施設では、1カ月に1回は完全に放電し、それからフル充電するようにします。

これは、充放電を少しずつ繰り返すうちに効率が低下するメモリー効果が起きないようにするためです。

フル充電していない状態での移動は避ける!

点滴中の患者さんが院内の売店や食堂、庭などを歩いている最中にバッテリー(ニッケルカドミウム電池)がなくなってしまい、輸液ポンプが停止してしまうような事態は避けたいものです。

患者さんにはフル充電したもので出歩くように指導しましょう。

バッテリーの交換は定期的に!

バッテリーの寿命によっては残量が表示されなくなるケースもあります。
定期的な容量確認とバッテリー交換が必要です。

トラブル(3)流量に関するトラブル

  1. 設定より早く/遅く滴下される
  2. 注入量が予定より多い/少ない

考えられる原因を<<セルフチェック>>

  • 流量、予定量、投与単位の入力に誤りはありませんか?
  • 専用回路を用いていますか?
  • 点滴筒や滴下検出器が斜めになっていませんか?
  • 輸液ルート等のセッティングは正しくされていますか?
  • 定期的にチューブ交換をしていますか?
  • ノンフローやフリーフローになっていませんか?
  • 極端な陰圧が発生するラインに接続していませんか?
  • 界面活性剤などが含まれる薬剤を投与していませんか?

ここを押さえる!流量のトラブル回避術

投与単位の間違えは多量注入の危険大

入力ミスには、流量(単位時間あたりの注入量)に間違って予定量(投与総量)を設定してしまい、数倍の速度で注入されたというケースのほか、シリンジポンプでの微量点滴の際、ガンマ注入設定時に投与単位を間違えて入力するケースなどが報告されています。

例えば、「μg/kg/min」を「mg/kg/h」に設定した場合、その流量は約17倍になります。

流量はチューブの種類で激変する

輸液ポンプの滴下規格は1mLあたり20滴と60滴に統一されましたが、チューブも専用のものを用いる必要があります。

60滴用の輸液ポンプに20滴用のチューブでは、注入量は変わってきます。

また、同じ回路を用いても、チューブの弾性や剛性によって注入量に違いが出ます。

シリンジもメーカーによって内筒、外筒の断面積が異なりますので、できれば施設内では同一のセットに統一することをお勧めします。

流量はチューブの種類で激変する

薬液とチューブとの相互作用も考えられます。

例えば、同じような性質の薬剤でも、界面活性剤が含まれる薬液では粘性の低下によって一滴の粒が小さくなり、注入量が少なくなります。

抗がん剤など、粘稠度の高い薬剤も誤差が生じやすい薬剤の一つです。

輸液ポンプの精度を重視する場合には、滴下数をカウントして流量をコントロールする滴下制御方式よりも、流量制御方式(ならびに専用回路)を使用するほうが望ましいでしょう。

ちなみに、滴下制御方式は点滴筒が斜めになっていたり、液面が高く跳ね返りがあると、正しくカウントできないことがあります。

滴下検出器のしくみ

滴下検出器のしくみ
医薬品医療機器総合機構 PMDA 医療安全情報、No.21、2011-1.を参考に作成

輸液ルートは定期交換が必要

長時間同じチューブを使用したり、同じ個所に力が加わっていると、チューブが変形して流量の制御ができずに、注入量が変わることがあります。

これには、24時間ごとのチューブ交換、あるいはポンプに装着する位置を定期的に替える対策が有効です。

また、弛みなくしっかり装着しようとチューブを引っ張りすぎると、径が細くなり、注入量が減少する原因になりますので要注意です。

交換時はセッティングミスに注意してください。

セッティングの位置によって生じる物理的現象に注意

シリンジポンプに関するトラブルでは、サイフォニング現象に気を付けましょう。

これは、患者さんよりも高い位置にシリンジポンプがある場合、正しくシリンジをセットしないままスタートさせたり、何らかの力が外部から加わったりすると、それを

きっかけに落差と圧力によって中の薬剤が自然に注入される物理的現象です。

サイフォニング現象を防止するシリンジポンプも開発されていますが、点滴開始後も何時間かおきに流量を確認する対策が必要です。

複数のラインの混在は減圧になる可能性が

輸液ポンプによるラインとフリー滴下のラインを混在させていると、異なる圧力が原因で注入量が変わったり、三方活栓などから逆流したりする危険性があります。

フリー滴下ラインだけにするなど、両者の混在はできるだけ避けましょう。

“つもり”作業はミスのもと

ポンプにかかわるヒヤリハットで一番多いのは、実は、流量や予定量などの「確認ミス」です。

点滴開始時に気づけば問題は回避できますが、確認したつもりのままスタートボタンを押したり、別の患者さんのルートをセットしに行ったりすることで、トラブルを招いた報告例が絶えません。

現場では、類似した名前の薬剤は使わない、理解しやすい指示書を利用する、などシステム上の対策はもちろん大事ですが、点滴開始前に確実にダブルチェックを行うという基本姿勢が、トラブルを回避する上で最も重要かつ効果的なのです。

(『ナース専科マガジン』2012年4月号より転載)

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