【連載】ケアを阻む高齢者の「困った」

第5回 服薬指導困難が想定される患者さんへの対応

解説 佐藤 典子

順天堂大学医学部附属 順天堂東京江東高齢者医療センター 老人看護専門看護師 認知症看護認定看護師

事例を用いて、服薬指導の困難が予想される患者さんへの対応方法を解説します。


事例

  1. Fさん
  2. アルツハイマー病
  3. Fさんは、糖尿病で内服薬による血糖コントロールをしていました。認知症を発症後、インスリン導入を検討することになりました。

Fさんは妻と同居しており、糖尿病・認知症などの病気、家庭内のことをすべて本人自身が管理していました。

そのため、インスリン注射の管理をどうするかが問題となりました。

Fさんは物事を自分で決めたいという気持ちが強く、長年糖尿病を患っていたので病識もあり、いつかは導入することになるとインスリン注射に関心は持っていたといいます。

そこで、まずは本人の意思を確認することにしました。

「インスリン注射が必要になりましたが、ご自身で管理されますか」と確認したところ、自分で行うとのこと。

Fさんは、大腸がんでストーマを造設していて、パウチも自分で洗浄していました。

そのため、Fさんはインスリンも自己管理をする自信があるので、自分でインスリン注射をすると話していました。

イメージイラスト

続いては、対応方法について解説します。

本人の意思を尊重する

実際に注射を打ってもらったところ、正確に行えたので、自己管理してもらうことにしました。

ただし、打つべきインスリンの単位を覚えていることはできず、ダイヤルの目盛りを間違えてしまいます。

そこで妻に介入してもらい、一緒に管理してもらうことにしました。

このとき、Fさんに目盛りを間違えてしまうことを告げると自尊心を傷つけてしまうので、「ダイヤルの目盛りは2人で見るのが規則です」と伝え、妻の介入を了解してもらいました。

Fさんは、インスリンを自己管理にしたことで、疾患への自覚がさらに高くなり、内服時よりも血糖コントロールが良好になりました。

認知症だから、薬の管理はできないと、最初から決めつけることなく、できることを確認し、本人の意思を尊重することがやはり重要です。

それによって疾患の理解や、患者さんの自信につながることがあるからです。

また、患者さんのこれまでの生活習慣や正確、どのように生きてきたのかを知っていることも判断材料となります。

Fさんのようになんでも自分で決めてきた人は、自分のことを他人に決められることが納得できない可能性があります。

こうしたことから、治療を拒否されてしまうといったことも考えられます。

(『ナース専科マガジン』2014年12月号から改変利用)

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