【連載】山内先生の公開カンファランス

第8回 腹部膨満を訴える患者さんのアセスメント(排ガスの有無など)

解説 山内 豊明

名古屋大学大学院医学系研究科 教授 医学博士/看護学博士/医師/看護師/保健師/米国・登録看護師、診療看護師

今回からは下記の事例のアセスメントについて解説していきます。


今回の事例
腹部膨満を訴える患者さんのアセスメント
[匿名さんからの提供された事例]
大腸がんの術後、腹膜播種があり腹水も多く腹部膨満感がある患者さん。ADLも低下し、ほとんど床上で過ごしています。
腹部膨満感を強く訴えていたので、普段は側臥位で過ごしてもらっていましたが、苦しそうにしていました。このような状態でも食欲はありましたが、身体を起こすと腹部膨満感が強く、起こせません。また、骨盤へのがんの骨転移もあり、座位になったり体動によって、疼痛が発生してしまう状況でした。
寝たままの食事は、誤嚥してしまう可能性が高く、怖くて行えませんが患者さんは食べたいと訴えています。医師に腹水を抜いてもらえないかと伝えましたが、難色を示しており、実施してもらえませんでした。

→あなたならどうアセスメントする?


まずは、会員のみなさんに腹部膨満を訴える患者さんがいたら、どこをアセスメントするかを聞きました。

回答者数は103人でした。

【山内先生の解説を先に読むならこちら】
山内先生の解説

みんなの回答

腹部膨満をアセスメントするときにどこを見る?

●腹部膨満は腹水だけなのか、排便、排尿は出ているかをアセスメントします。(りんさん)

●実際に腹部を触って、張っているのか、かたさはどうか、確認します。腹水なのか、がんなのか。また、大腸がんならば、詰まっているのか、腸蠕動音を確認します。(KYKさん)

●最終排便日、腸蠕動音、排ガス貯留なのか腹壁の触診→腸の蠕動運動低下による便秘の可能性があるから
OPE歴、最終排便日、排ガスの有無、腹壁の状態、腹痛→麻痺性イレウスの可能性があるから
熱発の有無、腹部の圧迫痛、筋性防御→腹膜炎の可能性があるから
黄疸の有無、採血データ、既往歴、腹壁の状態→肝がんによる腹水貯留(Mさん)

●排便の有無や回数、圧痛、腹痛、腹鳴。排便がなくて、腹部膨満になることも考慮します。(りんごさん)

●一般的なバイタルサインを含めたフィジカルアセスメント(例えば腹囲測定)を行い、血液検査を含むデータを把握します。そして患者様の訴えも再度確認します。(設定さんさん)

●排便の回数と性状、排ガスの有無、嘔気の有無。大腸がんの術後でもあり、機能しているかを確認する必要があると思うから。(リーフレタスさん)

●自覚症状(腹部膨満感)、腹囲、触診したときの感触、打診。自覚症状があれば、何かしらあるとして原因を考えることが大切だと思います。また、客観的に数値でわかりやすい腹囲は1つの指標となると思います。打診すれば、空気がたまっているのかどうかもわかりますし、触ることで変化に気付きやすいです。(さはさん)

●採血データで栄養状態、腫瘍マーカー、呼吸状態や腹部の緊張度、腹囲測定などします。腹部膨満感が強いと横隔膜が挙上し、呼吸状態に影響を及ぼすこともあります。腹部の緊張度は腹水の量の判定にもなると考えます。定期的な腹囲測定や体重測定をすることにより 利尿剤の効果判定にもなると考えます。(ひゆさん)

●腹部を視診、触診、聴診をする。バイタルを測定する。問診し、自覚症状を聞く。(ちいさん)

●嘔気、嘔吐の有無。排便のコントロールができているか。呼吸状態がどうか。(あさん)

●術後何日目か→手術の侵襲
腸蠕動運動はあるか・腹部単純撮影→イレウスの有無
鎮痛剤の投与の有無→麻薬の副作用(ラベンダーさん)

●腹水によるものなのか、腫瘍によるものなのかを見極める。また、予後を考慮しての腹水穿刺やCARTを医師と考える。穿刺が難しく、物理的な容量が減らないのであれば筋緊張を取るようなセルシンやアナペイン使用を検討してもらう。(ちーこさん)

●聴診、触診、打診を行う。打診で濁音や鼓音を聞き分け、ガス貯留なのか腹水貯留なのかをアセスメントする。(うさたんさん)

どのような状態であれば、腹水が貯留していると判断する?

●腹部に触れて、カチカチに硬くないこと、張って音があれば、腹水がある可能性があるのではと思います。(KYK)

●触診でやわらかく、打診で波動があるとき。(あいこさん)

●一番はおなかのサイズ。そのほか排便状況や体のむくみなども見る。(tinkさん)

●腹部が膨満し、おへそが浅くなり、尿量が減り、腹部以外にもどこかに浮腫みがある。体重が増える。食事量が減る、便秘になりやすい。血圧やSpO2がさがり、息苦しさがでてきたり、脈が速くなったり、不整脈がでたりバイタルサインも変化がでてくる。本人の腹部不快等の訴えなどがあった場合、腹水が、貯留してきたかと思う。(エヌさん)

●低アルブミン、低タンパクで、検査で腹水貯留と判断されたとき。(まさきさん)

●腹部を触診し波動の有無を見たり、毎日腹囲測定をしたりして判断する。尿量も参考にする。何より患者さんの訴えから、判断する。(赤の局さん)

●腹囲径と体重が増えたとき。腹部を触ったときに緊満がある時(パンパンになっているというか、張っている)。(さはさん)

●レントゲンやCTの画像をみて、腹水の貯留が疑われる画像があれば考える。その前の、病態から想像はするが。エコーで確認すればなおよい。しかし、いずれも医師の指示による検査が必要なので、看護師のみでの判断はできない。(あきらさん)

●腹部の膨満と触診、尿量(IN-OUT状況)。(ハニハニさん)

腹水を抜いてもらいたいと思うのはどんな場合?

●ADLの低下が問題になるとき。(りんさん)

●特に抜いてもらいたいと思わない。感染の危険や、どうせすぐにまた溜まる。(ゆいさん)

●腹水によって呼吸障害か出たりADLが低下するとき。(あいこさん)

●呼吸苦があり、体位変換できずに排便困難で腹部膨満のとき。(ままさん)

●食欲がなくなり、腹部膨満による嘔気、嘔吐の出現時。また、腹痛の出現時。腹部膨満による呼吸苦の出現時。腹部膨満による著明な下痢の出現時。(Mさん)

●ADL低下や苦痛を強く訴えているとき。(ぽんさん)

●腹水を抜くメリットデメリットをしっかり理解されている上で、腹水があることによって日常生活を困難とされている方。もしくは困難なために除水を望まれてる方。(MKさん)

●腹部膨満感が強い 腹水を抜くことで苦痛が減りADLが上昇する。(noripuuさん)

●腹部緊満が強く、日常生活が困難なとき医師に相談する。ただ抜いてもすぐに溜まってしまい、さらに全身状態の悪化をきたすこともあるので、その点を患者さんが理解した上で、患者さんが希望するなら腹水を抜いてもらいたい。(赤の局さん)

●バイタル安定、腹水が著明であるとき。(まっちゃんさん)

●たとえ、腹水穿刺が対症療法的なものであっても、一時的なものでしかなくとも、患者様の希望がある程度優先されるほうが良い状態だと思うので、医師に再度交渉する。(あきらさん)

●明らかに、腹水により、食事摂取不可能と判断できる場合。腹水により、嘔吐があり食事摂取を妨げる状態。(匿名さん)

できるだけ誤嚥をしないよう環境を整える

●食事制限されていなければ、その人の好きな食べ物でのど越しのよいもの、ペースト状にして誤嚥を少しでもしない方法を考えます。(KYKさん)

●少しのベッドアップで食べられるおにぎりなどの食事に変更する。(あいこさん)

●ベッドUPはできたら30度は行いたいが無理なら側臥位で食事介助、柔らかごはんで副食も食べやすいように形態変更。(ままさん)

●できるところまでベッドアップ。仰向けで顔だけ横に向けていただく。あとは誤嚥しないよう食事形態の工夫。(Kさん)

●患者様の年齢や、嚥下機能、呼吸状態の情報がないため、難しいですが、ADLが低下していることから、若干の筋力低下が出現していると考え、苦しくならない程度にベッドを上げる(フラットの方が呼吸が苦しいはずなので少しは上げられると思う。血圧の問題がなければだが)。
 それから、枕をやや高く誤嚥のリスクを減らし、左側臥位にする(気管支の形が右のほうが入りやすいから)。一口大でむせるようなら、ペースト状にしてもらうなど形態を工夫する。また、のど越しのよいゼリーなどを勧める(栄養状態が悪いため、カロリーの高いゼリーを食べてもらう。腹水がたまっているため、水分は少なめにする)。腹部膨満により、1回の食事量が少ないため、回数を増やして対応する。(Mさん)

●ベッドアップを無理のない範囲で行い、誤嚥のリスクを最小限にします。少量ずつ口腔内に食事を運び、嚥下の評価をしながら行います。(あんびゅさん)

●お楽しみ程度に許可が出ないか医師に尋ねる。(tinkさん)

●疼痛緩和をすることで、多少はベッドアップできるかもしれないと考えます。腹部膨満はできるだけ衣服等で圧迫しないようにして、ファーラー位までできそうなら、それで食事を進めてみます。(フレッシュナースマン)

●患者様の嗜好も含めてご家族様に差し入れしていただく、栄養士と相談して形態も含めて食べやすい食事の提供ができるか? 少しでも食べやすい体位はあるのか? を探します。基本的なケアを行うのみです。(設定さんさん)

●腹部膨満による苦痛や疼痛コントロールをした上で、苦痛のない範囲でベッドアップし、患者さんが食べたいものを食べてもらう。(赤の局さん)

●横向きで軽度ベッドアップし、医師の指示内で食べたいものを家族に用意してもらって、1口ずつゆっくり少量食べていただく。(さはさん)

●ベッドアップでも座位を保てるように、オピオイドを使って疼痛コントロールをしっかりする。(ちいさん)

●栄養士と相談して食事形態を模索し、座位が無理なら一番安楽な姿勢で(もちろん、嚥下がスムーズに出来るように)。(ともみさん)

●やや側臥位で痛みの最小限までベッドアップし、トロミなどをつけて工夫した食事をナースが介助。(Fujiko♪さん)

●できるだけ寄り添い1口でもいいので、好きなものを家族に差し入れしていただけるようにお願いをする。また家族の協力を得る。(よしさん)

●疼痛コントロールをして、座れるようにする。座れなければ嚥下食のような誤嚥を予防する食事形態の検討や飴の摂取。(ちーこさん)

●今無理に食べて誤嚥性肺炎を起こしても怖いのでやめましょう。(木立さん)

●誤嚥の危険性をお伝えし、なんとか納得していただく。(世羅さん)

次ページは、山内先生の事例の解説を紹介します。

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