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【連載】急変対応マニュアル

救急カートに入れる薬は?整理・点検のポイント

解説 石井 恵利佳

獨協医科大学越谷病院 救命救急センター 看護主任 救急看護認定看護師

解説 浅香 えみ子

獨協医科大学越谷病院 救命救急センター 看護副部長 救急看護認定看護師

急変対応時に欠かせない救急カートですが、日頃どのように準備・管理していますか。ここでは、備えておきたい物品やくすり、点検のコツなど、救急カートにまつわる基本知識を紹介します。


【目次】


▼急変対応について、まとめて読むならコチラ
急変時の対応


院内統一仕様が基本!

 急変時には必要物品をすぐに使えることがとても重要です。緊急時に備え、救急カートは日頃から整備・点検し、常時使用可能な状態にしておきます。「いつ、誰が使用することになってもわかる」ように、院内で統一した物品を整理した院内基準を遵守しておくことが基本です。

 また、救急カートの本来の目的は心肺蘇生にかかわる救命処置です。例えば、ナースステーションで希釈が必要な輸液セットを装備しても、あまり意味はありません。

救急カート実物写真

点検ですぐに使える状態をキープ!

 点検は、使用した時点で行う場合と、定期的に行う場合があります。当院では1日2回、朝と夜に実施しています。こうした点検は物品と確認項目をまとめたチェックリストを用いて行うと、点検漏れを防ぐことができます。

POINT(1) 使用期限を確認する!

 薬剤については、使用期限やパッケージの破損の有無などを確認します。滅菌処理された物品に関しては、滅菌の期限が切れていないか確認します。

POINT(2) 電池やバッテリの状態を見る!

 喉頭鏡は必ずハンドルとブレードを組み合わせて、電球がつくか、十分な明るさはあるかなどを確認します。ペンライトも同様です。また、AEDではインジケーターの表示でバッテリの残量を確認します。

喉頭鏡やペンライトは電池切れしていないかを点検
喉頭鏡やペンライトは電池切れしていないかを点検

POINT(3) 必要量が備わっているか確認する!

 チューブ類などに関しては数量を確認して、不足していれば補充します。酸素ボンベの残量にも注意が必要です。使用時に空になっていないように、十分に残量を確保しておきます。

点検の担当者は特定しない!

 点検には、救急カートの中身を知るという側面もあります。実際に見ることで、何がどこにあるのか、最小限どんな物品が必要になるのかがわかります。担当者を特定せず、あまり急変にかかわったことがない人などが点検に加わることも大切です。

急変の可能性がある患者さんの近くに救急カートを用意する

 救急カートは通常、定位置に設置しますが、急変する可能性が考えられる患者さんのベッドサイド、もしくはその近くに用意することもあります。

救急カートに入れる薬剤選びのポイント

 救急カートに入れる薬剤は、基本的に救急蘇生のガイドライン内で用いられる薬剤の中から選択します。当院では、誰が用いても戸惑うことがないように、ガイドライン内の最大公約数の薬剤を配置しています。

 また、救急カートは出向いた先で使用するものなので、その場ですぐに使わないものは入れておく必要がありません。例えば、薬剤投与時に輸液ポンプが必要となる薬剤は、必要物品とともに準備を行えばよいので、救急カートには入れません。

救命処置に必要な薬剤(ファーストライン)
救命処置に必要な薬剤(ファーストライン)

救急カートに搭載される代表的な薬剤

1.アドレナリン(エピネフリン):血管収縮薬。心停止やアナフィラキシーショックなどに適応で、心静止では第一選択薬で、1mgを3~5分毎投与。アナフィラキシーショックでは皮下・筋注で投与
2.リドカイン:抗不整脈薬。アドレナリンによっても、心室細動、無脈性心室頻拍に対して除細動されない場合などに適応。初回1~1.5mg/kg、総量3mg/kgまで静注
3.アトロピン:抗コリン薬。徐脈性PEA(徐脈性無脈性電気活動)などに適応。1mgを3~5分ごとに静注。0.5mg以下の少量投与だと心拍数の減少、2mg以上では尿貯留や精神症状への注意が必要
4.ジアゼパム:抗痙攣薬。てんかん様重積状態における痙攣に適応。初回10mgを暖徐に静注。抗痙攣薬では第一選択薬
5.炭酸水素ナトリウム:代謝性アシドーシスに適応だが、呼吸性アシドーシスは適応外。1mEq/kgを静注

 これら薬剤のうち、アドレナリンやリドカインについては、状態改善がみられない場合に3~5分毎の反復投与をします。ガイドラインに沿って確実にかつ効果的に薬剤を使用するために、投与時間と投与量を正確に管理します。そこで、ストップウォッチを使い、確実な時間を測定します。

 投与後は、薬剤を迅速に中心静脈へと到達させることを目的に、20mLの輸液フラッシュをし、静注した上肢を20秒間ほど挙上させます。

迅速な対応には薬剤の場所の把握も必要!

 薬剤の管理については、薬剤部が行うところが多くなってきており、看護師がチェックしている医療機関でも、救急カートに紙封印し、使用しない限りは中の物品に不備はないとみなして、毎日のチェックを行わないところがあるようです。

 ただ、急変時にカートを使用することを考えれば、何がどこにあるかを知らないことで、迅速な対応に支障がでる恐れがあります。急変時のファーストエイドを行う状況にあるのでしたら、内容を理解するために、チェックシートなどを利用して薬剤の配置や期限などを把握しておくとよいでしょう。


(『ナース専科マガジン』2012年6月号より転載)

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