【連載】看護に役立つ生理学

第12回 糸球体と尿細管の役割、濾過とは?

執筆 梵天ゆとり(ぼんてん・ゆとり)

医師、日本医学放射線学会会員

今回から、糸球体や尿細管といった、腎機能の主役となる構造にも目を向け、より詳しく腎機能に迫ります。

さらに、腎機能を見るときに欠かせない検査値はBUNとクレアチニンですが、なぜ、1つではなく2つの検査値を合わせて見るのかについても解説していきます。


糸球体と尿細管の役割を分けて考える

腎の機能のうち「老廃物の処理能力」に的を絞って、BUNやクレアチニンについて解説してきました。
しかし、これは腎機能の一面に過ぎません。ここでは、もう少し視野を広げて、より一般的な腎の働きを復習しましょう。

腎動脈から流れ込んだ血液を処理するために腎に備わった装置のうち、特に重要なものは(1)糸球体と(2)尿細管です。
腎機能を考える際には、この両者に対応して、処理過程を2段階に分けると理解しやすくなります。

糸球体と尿細管の役割説明イラスト

糸球体の役割

一つ目、糸球体の役割は「濾過」、つまりフィルターです。

血液中の血球成分やタンパク質はこの糸球体を通過することができず、水と電解質などの小さな粒子だけがすり抜けて、次の尿細管に運ばれます。

尿素やクレアチニンといった老廃物も、この糸球体を通過します。ここで注意すべきことは、糸球体で濾過されるのは、腎に流れ込む血漿の一部に過ぎない、ということです。

通常の腎血流は約1000mL/分(約半分は血球なので、血漿としては500mL/分)ですが、そのうち濾過を受けるのは約100mL/分、すなわち2割程度です。
ここを通過しなかった血液(血球全体と、血漿の残り8割)は、尿細管をとりまく毛細血管の中を流れます。

尿細管の役割

さて、糸球体を通って尿細管に到達した血漿を「原尿」と呼びますが、仮にこれが全て尿として排泄されたら、体に3L程度しかない血漿は30分で枯渇してしまいます。

もちろんそんなはずはなく、実際には原尿の1%だけ尿となり、99%は尿細管から再び体内に回収されます。

このとき、先ほどの「糸球体を通過しなかった血液」と原尿との間で、尿細管の壁を挟んで、水だけでなくさまざまな物質のやりとりが行われます。

例えばナトリウムは水を伴って大半が血液のほうに回収されますが、酸やカリウム尿のほうに排泄される、といった具合です。

私たちの体液の恒常性が保たれているのは、この尿細管における調節のおかげといってよく、ここが障害されれば、酸塩基異常(特にアシドーシス)や電解質異常など、しばしば生命にかかわる重大な体液異常が引き起こされます。

糸球体の濾過はなぜ必要か?

ここでよく考えてみると、糸球体での濾過という過程は本当に必要なのか? という疑問が生じます。

100mLも濾過しておいて1mLしか排泄しないのは無駄のように思えますし、いずれ尿細管の壁を通って物質が移動できるのなら、そこで必要なだけ排泄を行なえば済むような気もします。

このような生命設計は不可能ではないかもしれませんが、実際にはそうはなっていません。
体液の恒常性を保つには、ある程度のゆとりがあるほうが有利であり、多くの物質は水に溶けることで移動しやすくなります。

このため私達の体は、とりあえず血液を「原尿」「それ以外」とにざっくりと分けて、その後、調整を加えてゆく、という方法を採用しています。
すなわち、尿細管での調節がうまく機能するためには、その大前提として、糸球体における濾過が充分に行われている必要があります。

BUNやクレアチニンなどの検査値は、直接的には「老廃物の蓄積度合い」を表していますが、それは言い換えれば「糸球体濾過量」を間接的に反映しているのであり、だからこそ腎機能の簡便な指標として重宝されるわけです。

(「ナース専科」マガジン2010年10月号から転載)

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